第2話

 店へとやってきた少女……リスタの事情は半ば僕の想像通りのものであった。

 僕が個人特許庁を構えるレコンスタ王国の王都、ガイアの一角に建てられている全国の王侯貴族並び優秀な庶民から生徒を募り、教育を施している王立魔法学園の生徒である彼女。


 庶民であるがために金がなく、強力な魔法を使えないせいで学園の落ちこぼれ。

 いつも周りから虐められ、進級さえも危ないような状況ではあるが、それでも故郷のみんなの期待を背負って学園に来てしまった以上辞めて故郷に帰ることも出来ないリスタが何とか学園に残ろうとこの国で唯一個人特許庁を運営している僕に泣きついてきたというのが彼女の事情である。


「奴隷ではなく愛人に、か」


「は、はいぃ……その、奴隷発言はちょっと勢いで……」

 

「まぁ、その間違いは理解してあげられちゃうかな」

 

 愛人制度。

 一応名目としては愛人と言っているものの、この制度の実態は金持ちのための性奴隷制度と言える。


 社会としては奴隷がいないと回らないような社会構造ではなくなったが、それでも屈折した性癖の持ち主である貴族や金持ちが自分の性癖を満たすために女を愛人という名目で囲っている現状があり、国もそれを認め、制度として後押ししてしまっている。

 愛人にはほとんど人権が無いような状態なので、実態はちゃんと奴隷だ。


「……うーん。別に愛人なんて要らんしなぁ。女なら普通に娼婦で良いし……」


 金ならいくらでもあるのでこの国の高級娼婦と毎晩遊べる。

 わざわざ愛人を作る必要が……別に僕は法に触れるような特殊性癖はないし。


「……ッ!お、お願いですぅ!わ、私を愛人にッ!」


 僕の言葉を聞いたリスタが慌てて僕に頼み込んでくる。


「所持金は?」


「……せ、生活するのにいっぱいいっぱいでお金は……ど、どんなことでも受け入れて見せますッ!だから!だからどうか!私を愛人にぃ!」


「むむむ」

 

 必死に頼み込んでくるリスタを前に僕は頭を悩ませる……正直に言うと前世からの良識を若干引きずっているところがあるので僕はこんなボロボロでいじめまで受けている可哀想な彼女を助けてあげたい気持ちがある。

 だけど……この世界で培ってきた僕の価値観が簡単に助けようとする僕を邪魔してくる。

 所詮この世は弱肉強食。

 甘いところを一回でも見せたらズルズルと行きかねない。


「わ、私は黄金の魔力の持ち主なので実験体にも使えると思いますぅ」


「今なんて?」

 

 僕はリスタの口から飛び出してきたとんでもない発言に食いついた。

 

 

 

 

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