第3話――後悔


 朦朧もうろうとした意識の中、遠い所から声が聞こえる。


殿下でんか。緊急事態発生。すぐに来てくれ」


(……殿下……?)


 頭が重く、起き上がることもできずにいると、足音が聞こえ、誰かが部屋に入ってきたのがわかった。


 床に這いつくばったままの八郎が震えながら顔を上げると、男性がこちらを見下ろしていた。


 黒髪を下ろしたあのリーダーの若者だ。

 さっきの物腰が柔らかい雰囲気とは別人のごとく、感情が抜き切ったような無表情だ。

 彼は八郎と目を合わせたまま言い放った。


「いますぐ全員一階のホールに集めろ。派遣はけんも含めて全員だ」


 彼は、そう言って最後に付け加えた。



 床に張り付いた八郎は、その言葉を聞いて、あらためて痛感した。

 

(……やっぱり、早く逃げておけばよかった……)

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