第6話 いざ、ジャングルへ

目の前にはジャングルが広がっている




 熱帯雨林が密集していて、中から湿度を含んだじめじめとした空気が漂ってくる。


 銀髪でウェーブのかかったボブヘア。両耳に青いイヤリングを付けた整った顔立ちで右手にブレスレットを填め、ポーチを装着した迷彩柄のローブを着た女性が森に入ろうとする。


「あれ、ソフィじゃないか」


 野太い声に呼び止められ、振り返ると20代後半で動きやすい薄い銀色の鎧を装着し、振りやすい両刃の剣を背負った金髪の剣士が居た。


「えっと」


 咄嗟のことで戸惑っているとクリスの横に居る。20代後半の青を基調とした賢者服に身を包んだ眼鏡を掛けた青い瞳で金髪の男に話が前に出てきた。


「ソフィさん材料の調達ですか?」


 戸惑ったが、賢者のレイスを思い出した。


「はい」


「ご苦労様です。クリスさん、いきなり呼び止められて、戸惑っているようですよ」


 クリスはしまったという顔をする。ソフィは苦笑いをした。


「私はレイスといいます、先日はお世話になりました」


「おっと、悪いな、俺はクリスだ。ドラゴンの件では助かったぜ、おかげで報奨金も貰えて、生活は暫くは安泰だ」


 二人の間に黒と黄が混ざり合ったドレスを着た女性が立っていた。その近くに重装の重そうな剣を持った細身で金髪の男と赤いローブを身に纏い、色白で金髪に琥珀の髪留めをして、毛にカールを巻いた気の強そうな顔の女性と、薄い鎧を身に纏い、くすんだ金髪を真ん中分けにしていてでサングラスをかけ短剣を脇に携えた男性が立っている。


 レイスはアラネに顔を向ける。


「アラネさんって言うんだ、アラネさん挨拶お願いします」


「アラネといいます」


黄色と黒のドレスを着た綺麗な顔立ちをした黒髪を後ろで束ねた女性はオズオズと自己紹介した。


「俺、キースっていうの宜しくね」


明らかに重装備に体格が合っていないと思われる剣士はヘラヘラ笑いながら答える。


「私はシャーロットよ」 


赤いローブの女性がソフィを見ながら挨拶をする。


 ソフィは金髪の女性の髪留めを見た後、アラネを一瞥する。


 「お二方、その女性はこの森を歩くには少々厳しいんじゃないでしょうか?」


 キースはヘラヘラ笑う。


「指摘されてやんの」


 クリスは笑いながら


「指摘ありがとうな、この女性は大丈夫さ、なあ、レイス」


「ええ、私の予知でも見ました。指摘されたことですが、その女性は大丈夫ですよ。私達は目的を実行することができます。それに今じゃないと駄目なんです」「・・・そう、今じゃないとな」


 ソフィは考えながら


「先を見る目を持つ賢者、、、ましてや天才と言われた貴方が言うのでしたら、私は言うことはありません」


 レイスは苦笑いを浮かべた。キースはフーンと言いながらレイスを見る


「ねえ、俺も見てくれる?まさか、賢者が差別するなんて言わないよね?」


 キースはそう言うとレイスの肩に手を回す。レイスはキースの顔をまじまじと眺める。


「いいんですか?」


「へ?」


 間の抜けた声でキースが答える。


「優秀な仲間を持つ貴方が私の占いを信じるなんて、」レイスはそういうと二人に目を向ける。


 シャーロットはムッとしている。「貴方、私の腕を信じて大金をはたいたんじゃないの?」


 キースは薄ら笑いを浮かべる。


「どの程度の占いなのか気になっただけさ、シャーロットちゃんはなんとかいう魔法学校の卒業生なんでしょ」


 シャーロットは顔を顰める。


「キア国立魔法学校」「キア国立魔法学校」


シャーロットとソフィの声が被さった。更にソフィが続ける


「その琥珀の髪留めは主席の証ですね」


 ソフィが被せる。シャーロットは驚いた顔をする。「その琥珀の髪留めは主席の証ですね」


「よく知ってますわね」


「有名ですからね」


 シャーロットは自信満々な顔をする。


「そうよ。どう、キア国一の秀才を仲間にいれたのよ、これでこの勝負の勝ちは確定よ。占う必要もないってわけです」


「貴方、実戦の経験は?」


 シャーロットはソフィを伺うように見つめる。


「学校では模擬実戦はたくさんしましたわ」


 シャーロットがそう言うとソフィは即座に右手の杖を構える。シャーロットも右手で杖を構えた。


 クリスは手を組みながら、レイスは呆れたように軽く首を左右に振り、キースは物珍しそうにサングラスの男は無表情でそれぞれ眺めていた。


 ソフィが右手を回しながら杖を握り握り、魔力を入れると杖が黄色に光りだした。ソフィは思う。試験では貴方は物凄い才能を見せたそれに貴方は若い、戻ってやり直すべきです。


 シャーロットは思った。私を試そうっていうのですね。いいですわ。それは雷魔法ね。だったら、こいつで。杖が茶色に光りだす。


  ソフィ呟く「Los(行け)」シャーロットの顔に小さい雷が走る。


 シャーロットが囁く「Verhindern(防げ)」シャーロットの前に土が現れる。


 土に雷が吸収される。


「どう?テストは済みましたか・」シャーロットは不敵な顔で尋ねる。


「甘いですね」


 ソフィが言い終えるとシャーロットの顔に水滴がついた。ソフィは左手で水魔法を放っていた。


「野生動物に正々堂々な戦いは通用しませんよ。キースさんもギルドでメンバーを募集したほうがいいんじゃないですか?」


 シャーロットは一瞬、何を言われたかわからない顔をしたが、自分が実力不足を指摘されたことを悟り、怒った顔をした。クリスはやれやれと言わんばかりに首を左右に振る。


「何よ、まぐれで攻撃が当たったからって、」


 キースは肩に手を回す。


「シャーロットちゃん落ち着きなよ。彼女を選んだのは俺だけの意見じゃないんだよ。なあ、ヘクター」


「ああ、彼女じゃなきゃダメだ」


「そういう訳なのよ。シャーロットちゃんも俺達と行動すれば色々、成長できるんじゃないかな?」


 シャーロットは振り返り、急足で森の中を歩く。


「貴方も精々、死なないようにしてください」


「待ってください。貴方は若いし、才能が有ります。誰かの弟子になって、実力をつけるべきです」


 ソフィは精一杯の呼びかけをした。


 二人がシャーロットの跡をついていくヘクターの顔には歪んだ笑みがついて、主席を示すブローチを見つめ、唇を舌で舐めずっていた。


「ソフィさんの言う通りです。誰か優秀な師を見つけ、学ぶべきです」


レイスも訴えかけた。


「二人ともご忠告ありがとうございます。でも、私にはこれしかないんですよ」 


 シャーロットはそういうと森の中に消えていった。


「二人とも、同じ主席の後輩に説得は出来なかったみたいだな」


 腕を組んでいたクリスがそう言う。


「ええ」とソフィが呟く。 


「才能があるのに勿体ない」とレイスは落胆した声で言った。


「そういえば、ソフィちゃんはブローチは?」


ソフィはイヤリングを指さして「私は加工して、イヤリングにしました、魔力を貯めることができるんです。そしたらこういう色になるんですよ、レイスさんは?」


レイスは目を指さし「私はコンタクトレンズにしました。未来予知に使う水晶の代わりですね。これで未来予知がはかどるんです」


クリスは目線を森の方に動かすと大声で言った。


「この季節は繁殖期になってるからジャングルは危険だぞ」


ジャングルの中からガサゴソという音が聞こえた。


「3人か、密猟者かな?」


 クリスが呟くとふたりは「そうですね」と相槌を打った。


アラネが二人をきょろきょろと見ている。それに気づいたクリスが樹から離れた。


「そろそろ行くか、ソフィちゃんは用事があるんだろ?」


 ソフィが頷く「はい、材料を調達しに行かないといけないので」


 レイスは優しく微笑みかけた


「では、お気を付けください。」


ソフィはアラネを見つめる。その視線にレイスが気付いた


「アラネさんを連れて行くのはゲームなんですよ」


 クリスがソフィを見る。


「ああ、あのキースが俺の嫁にちょっかい出したのは皆知ってるだろ?お互いに冒険者だ。3人パーティを組んで俺のパーティより討伐数が多かったら嫁をやるというのにしたのさ、この子も冒険を体験したいって言ったし、奴と俺では実力が違いすぎるだろ?ハンディさ、じゃあそろそろ行くぜ、気をつけてな」


3人は森の中に消えていった。




アラネは思っていた。密猟者は一時間持てばいい方ね。




クリスとレイスの顔は歪んでいた。

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