第14話 エリア9

 「日本のものではない。


  君はなぜ助ける、日本人を」


 目の前を走る戦車は、カーゲーベーが以前所持していたものとは違う、どちらかと言うと、センチュリオン、いや。


「これはその」


「日本の戦車は世界一、ってか。


 残念ながら、魚雷は世界一だが、日本の戦車は」


「勝ってたよ。


 死者数、戦病人、その他含めれば、

 犠牲者は枢軸国側のほうが少なかった。


 アメリカが、自分が勝った、と言わないと納得しない国民性だったから」


 新宿駅地下道。


 病院関係者も、警察も、自衛隊も出動しない異常事態に、公安が動き出したのだと、彼は打ち明けてくれた。


「公安ですよ。


 見た目が日本人らしくないから、怪しまれるかもしれませんが」


「どこからどう見ても日本人じゃないし、

 公安が信用できるか」


 というと。


「失礼な。

 わたしは、新潟出身です」


 新潟と聞いて、ふと思い出す。


「ユダヤ人は、日本に来た後、アメリカへ逃れた、と聞きますが」


「本当にごくごくわずかですが、

 アメリカを嫌って、日本へ住んだものの子孫なんです。


 日系ユダヤ人。


 その存在はごく限られたものです。

 わかりますか」

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