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四年前、たまたま見つけたあの素晴らしい本は、その後すぐ行方不明になった。 きっと父さんが捨てたのだ。僕は疑い、父さんを憎んだ。滝がしぶきを上げる美しい流れが、緑を照らす朝日が、黄金に輝く世界が欲しくてたまらなかった。 写真で見るだけじゃなく、全身で感じてみたい。外に出られるなら死んでもいいとまで思った。

「出すわけないさ。あの子は、ずっとここに居るんだ」

 父さんはきっぱりと言いきってしまった。僕の淡い期待を、断ち切った。

目の前が暗くなって、扉が、何枚も閉ざされていく。意識が曖昧になり始めた。また、怒りが抑えられないこの感じ。 僕は立ち上がっていた。二人は驚いて僕に目を向けた。父さんの瞳は、挑戦的だった。それがさらに癪に障った。

「なんで?」

 父さんは僕を騙したんだ。

「父さん・・・約束したじゃないか。大人になりさえすれば、外に出てもいいって・・・どうして僕を騙したんだよ?」

 父さんの肩を掴んだ。プナキアは気の毒なほどおろおろして僕らを見上げた。でも止められない、どうしても怒りが収まらなかった。

「僕のこと、笑っていたんだ。バカにしていたんだ。いつか外に出られるって、信じてた僕を!」

 視界の端でナイフが光った。

 初めての気持ちになった。何もかもを無理やり捻じ曲げて、僕の好きにできるような気がした。反射的にナイフを掴むと、父さんの瞳が軽く揺れた。殺すつもりで振り上げた。しかし、それが振り下されることはなかった。父さんが、泣きそうな顔をしたからだった。それを見たとたん、体の力が抜けた。

「・・・ごめんなさい」

 惨めで、自分がしようとしたことが信じられなくて、涙がにじんできた。これでよくわかった。僕は何をするかわからない人間なんだってことが。

「父さん、僕は・・・僕が怖い」

 誰も、何も言わなかった。


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