パンは返せないけれど

「トーストくわえた女子と出会い頭にぶつかったりするか?」


「ないない。そもそもパンを咥えたまま走ってる女とか見た事無いわ」


「だよな。大体食いながら走る女ってどんなだよ」


「普通じゃないな。それにぶつかったとしても、相手がひと目惚れするほど可愛い確率なんて天文学的数字だよな。試して見てーけど」


 クラスの男共が「トーストくわえて遅刻遅刻娘」についての議論を繰り広げている。

 まあ、普通は彼らの言う通りなのだが……俺は違う。

 今日で五回目、いや六回目か。




「痛っ、もうっ!」


「っだよ。階段から降ってくんなよ」


「降ってない。急いでたから飛び降りただけ! あー」


「何だよ」


「パン落とした。返せ」


「俺の責任じゃねーだろ。お前が降って来たんだぞ」


「降ってない。飛んだだけ。あんたが急に現れるのが悪い」


「何でだよ。俺は悪くない」


「パンが落ちたのはあんたのせい」


「どうやったら、そういう結論に達するんだよ」


「あんたがぶつかって来るのが悪い」


「アパートの階段から降って来る方が悪いだろう」


「悪くない。パン返せ」


「ったく」


「ねえ」


「ん」


「今回は惚れた?」


「はぁ?」


「ねえ、どうなの」


「煩いなぁー」


 一回目から惚れてるつーの!



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(「試」を入れて500文字以内)


ちょっと可愛らしいラブコメ風に描いてみました。

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