番外編 美代は美恵様に恋をしている

私は、佐川 美恵こと現在は村上 美恵様に仕えている、切田美代だ。



これは、美恵様の初陣の横田討伐戦からの一週間の中の日々である。


率直にいう。私は、美恵様が心の底から大好きだ。世間からは良く思われないが、同姓だとしても恋人目線での好きだ。


だから、私は美恵様と過ごす日々を忘れないように毎日『美恵様日記』というものを本人には秘密で書いている。



横田戦の後、美恵様の考えで元横田の将、栗田 表太郎と兵を手に入れた。


私は正直、美恵様には私だけ居れば良いと暗殺も考えたが美恵様の駒と考えれば良いとなんとか我慢した。


これからも美恵様の駒は増えて欲しい。義清様には悪いが私は、美恵さまこそ戦乱の世を終わらせてくれる大名に成り上がることを願っている。


そのためには、村上軍として武田家に勝つ必要がある。


私は、積極的に忍のような働きもさせて貰っている。



これは、横田討伐戦の三日後の出来事である。


村上の領地に武田の将が攻めてきた。恐らく、横田 高松を殺られたことで危機感を抱いたのだろう。


そして、横田討伐戦の功労者である美恵様の屋敷を攻めてきたというわけだ。兵の一人を義清様に向かわせたので最速で距離的に30分耐えれば援軍が来るだろう。


「美代、ありがとね! 敵襲を遠い段階で気づいてくれて」


「いえ! 美恵様のために働くのが私の幸せですから!」


美恵様の者として動いていると想うだけで私にはご褒美だ···義清様に貰った名刀『狂華』を腰にぶら下げ軽そうな鎧をまとった美恵さま。


お美しい···奴隷にされても良い。


「で、敵の規模は? 一応表太郎は、召集したわ」


準備も早い。もはや、将としての風格が早くもある。


「美代殿、敵の規模は?」


表太郎に話しかけられ我を取り戻した。


「はっ!?」


「美代···大丈夫? この戦を乗りきったら一緒にリフレッシュしよっか」


え?美恵さまとデート?これは、さっさと美恵さまを殺そうと来た将を抹殺しなければ!


「急にやる気になったね?」


「はい! 規模より先に将から···」


「ぁぁ、将は誰がいる?」


表太郎が問う。


「名は分かりません。恐らく、美恵様の実力が分からないため、見極めるための捨て駒でしょう」


「なるほど···そいつは兵を除いて、一人?」


「確認できる限りは兵が二百とその将のみです」


「どこで応戦しましょうか?」


「この町の人達を巻き込まないためにもわざと相手の進軍してくる草原に陣を敷くわ」


「でも、見渡しが良すぎて地形的に不利が···」


「表太郎、私達の命は美恵様の物よ? それに美恵さまが私達をわざわざ犠牲にする案を出すと思う?」


「···すみません」


「良いのよ! それに悪いけど勝ち目は私達だけじゃないからその場でしのぐ。 お父様からの援軍が来てから制圧する」


「ふふっ···ぶっつけ本番ですか、美恵様らしいですね!」


私は、美恵様のこんな姿勢も好きだ。


「私は、大変なお方を主にしたようだ···私も何なりといたしましょうぞ!」



そして、私達は草の生い茂った草原に陣を敷き、私と表太郎と美恵様で座れる木の椅子に座り兵を総力の二百を揃えて待ち構える。


「さぁて、まずは···私と美代で相手の先鋒を挑発して兵を割くわ。 失敗したら、表太郎と兵五十を事前にそこらの生い茂った草に伏兵にして奇襲して一旦戻ってきて貰うわ」


「···」


私と表太郎は美恵さまを心から素晴らしく思っている。美恵様は、私達の犠牲を最小限にしてかつどんな状況も予想して対策をしていくのだ。


「じゃぁ、表太郎と五十は伏兵! 動きは任せたわよ」


「ははっ! 皆の者、息を殺すのだぞ?」


表太郎の軍の士気は上昇した。



五分後、武田の旗が見えてきた。そして、少し離れた真正面に立ち止まり向かい合う。


美恵様は兵を五十人、本陣の前に横一列に並べて剣や槍で威嚇させると向こうも警戒したのか、倍の百で横一列に構えてきた。


「ふふっ···美代は今私にして欲しいことはある?」


突然どうしたんだ?でも叶うなら···


「明日のリフレッシュで存分に甘えさせて欲しいです!」


「分かったわ、挑発を任せる。 もしも、成功して兵百を奇襲成功したら明日は期待して?」


「はい!」


美恵様の眩しい笑顔を見て、やる気が出た。武田···煽ってやるよ!



そして私は、両軍のど真ん中に立ち、武田の先陣の兵に声が届くように大声で言い放った。


「私達は百五十に加えて、義清様の一人の将の軍に過ぎないんだぞ?


なのにそんなに意気地無しなのは笑けるわぁ!」


私は、敵に指を指して大笑いしてやった。そしたら···


「あいつを討ち取れ!」


「百を怒らせたらどうなるか思い知らせてくれる!」


やった!見事に怒って先陣の百が突撃してきた。出来るだけ引き寄せる。


私は、驚異の走る速度で決めた位置で足を止めた。


表太郎の潜む地点の直線上である。


「ついに諦めたかぁ!」


「我ら、津 吉永軍をなめるなぁ!」


津 吉永···それが大将か。聞いたこともないところをみると雇われた浪人だな?


「今だ!」


私が本陣へ逃げるのと同時に表太郎率いる奇襲部隊が横から攻撃を仕掛け百は総崩れ。ほとんどを討ち取り、残党は美恵さまが拳でぼこぼこにしていた。



津軍は、明らかに戦意を失っていた。しかし、状況は変わる。


「だからお父様より私がやった方が良いって言ったじゃんか」


一人、戦乱の真ん中に堂々と立ったのは鎧を纏った美少女だった。


「我、戦乱の世で女を知らしめる野望ありし、津 花姫なり!」


花姫は、長い石槍をこちらに向ける。


「大将! 一騎討ちを申し込む、私が負ければ私を好きにすれば良い!」



こんな奴、美恵様が出るまでもない、私がやろう。


「美代、表太郎。百は総崩れ、残りの百と大将の防戦は任せても良いか? 指揮は美代に任せる」


「はっ!」


美恵様のあの目···花姫との一騎討ちにわくわくしてる。



そして、村上 美恵と津 花姫は向かい合う。


「ふふっ! 骨がありそうな女ねぇ!」


「貴女こそ、男にも勝る闘争心···私の命を賭けても良い戦いになりそう!」


花姫は、嬉しそうに微笑むとかなり速いスピードで拳で腹を狙ってきた美恵の拳を石槍の石で叩きつけそのまま追撃で回し蹴りで蹴り飛ばす。


「拳···貴女、好き···戦闘狂な女を好きになる男なんて居なくてさぁ」


「それは嬉しいわね! 私も貴女が好きになったわ! 貴女の父さんは部下に任せる。


楽しもうじゃない!」


美恵は、石槍で叩かれた右の拳を押さえながら花姫に惚れていた。


「うふふっ!」


花姫も目をハートにして石槍を美恵に不規則に振り回し美恵も集中して腕を痛めながら防いではカウンターで殴ったりして、激戦となっていた。



その頃···


「信綱様!?」


「市川 信綱が兵百で援軍に来たが美恵殿が戦ってる少女以外ほとんど全滅しとるではないか···」


信綱は、流石と美恵を改めて尊敬していた。


「残るは大将首のみですが、私と表太郎は疲労で兵の制圧で動けませぬ···不甲斐ない!」


「いや、よく武田の攻撃を一つの将の軍で優勢に戦ったものよ、大将は私に任せて後退して美恵殿を見守ると良い」


「ありがとうございます!」


「さぁ、殺るか···」


市川信綱は、普段の優しさを殺したように殺気を纏い長い刀を抜く。


「市川信綱か···お前を討てば私は、信玄公の武将になれるかもしれぬ」


「安心しろ···お前の首は私と美恵殿の手柄になるのだからな!」


信綱は、そばに居た美代と表太郎も怯えるほどの殺気で吉永の元へいつの間にか近づき、吉永は、気づけば首をはねられていた。


「···義清様の家臣である私に負ける程度では、お前は信玄公にはふさわしくない。


彼は、敵ながら見事なお方だ。義清様の崇める上杉謙信公のライバルなのだからな」


美代と表太郎は、信綱の強さと義清へのリスペクトに尊敬した。



信綱の、津吉永 瞬殺により花姫以外全ての兵が敗走し、武田の領地へ逃げていった。


「貴女は逃げないの?」


美恵は名刀 狂華を花姫の石槍とぶつけ合いながら話しかける。


「こんな素敵なデートがあるのよ? 私は逃げるくらいなら貴女とのような激しい戦いで散る方が本望よ!」


「···気に入った! 信綱様、美代、表太郎。後は私だけで良い。ここから帰還して!」


美恵様、なんで···


「私は、今楽しいの! 花姫のデートに死ぬまで付き合うわ!」


そんな···私とのデートは?


「美代、悪いけど明日のリフレッシュはパスで···代わりに褒美を用意しとくわ」


違う···私は、私が欲しいのは···


「···楽しそうだ。あんなに、幸せそうな美恵殿の顔はみたことがない。帰還しよう」


私は信綱様に馬に乗せられ、信綱と共に乗り義清様の屋敷へ走り去った。その後ろを表太郎も続き、犠牲が十程だった兵は美恵様の屋敷へ戻り警戒に行った。



違う···私が欲しいのは褒美じゃなくて美恵様なのに。


「その刀、中々良いわね!」


「でしょ! 私も気に入ってるわ、でも拳がやっぱ落ち着くけどね?」


美恵は花姫の石槍を狂華で止めながら腹に蹴りをいれバランスを崩す。


「ふふっ! なら、私も拳を使ってあげる」


花姫は、石槍で美恵の剣を美恵の身体ごと押すと回し蹴りで近くの岩に叩きつけた。


「ガフッ···こんなに楽しい戦いは初めて!」


口から血を吐きながらも美恵は花姫に微笑み剣を腰に戻すと殴りかかる。


「私も初めてよ! 私が負けたら好きにして良いって言ったけど私が勝ったら···」


花姫は、石の部分で美恵の拳を受け止める。


「花姫が勝ったら何?」


「私に貴女をちょうだい? 私の人生に付き合って貰う!」


「···喜んで! でも負けるわけにはいかないわねぇ?」


「どうして?」


「私には、大事な子がいるの。異常な程に私を慕って私のためなら自分の命を考えない子が」


「誰か分かったわ···なら、勝って奪うのはありね?」



花姫と美恵はかれこれ三十分は戦った。


「はぁはぁ···花姫、一つ言ってあげる」


「はぁ···なぁに? やっと降参?」


二人はお互いに距離をとり膝に手をつき過呼吸気味になっていた。


「私···貴女が好きだわ」


美恵は笑いながら告げる。


「それは、嬉しいわ。ライバルが出来たわね!」


「その好きじゃない好きよ」


「へっ!?」


花姫は、顔を真っ赤にして慌てると急いで武田の領地へ走る。


「勝負はお預けよ! 私は真田幸村様に仕える特攻兵の隊長よ!」


「真田···幸村···分かったわ。いつか、私が貴女を倒して私の家臣にしてあげるわ」


「えぇ、いつでも待ってるわ! 後、後、私も貴女と同じ好きだから!」


そして花姫は顔を真っ赤にして去っていった。



その日の晩、美恵は美代に治療して貰っていた。


「美恵様、もう無茶しないでくださいね?」


「ごめんなさい、つい楽しくなって。私強い奴、好きだからさ···」


「そう···ですか。今日はもう寝てください。いつ、戦に出るか分からないんですから」


「いつもありがとうね? おやすみ、美代」


「おやすみなさい」


そして美恵様は、自室に寝に行った。


強い奴が好き···か···これからは毎日修行増加かなぁ···



そして、その二日後···武田家家臣 真田幸村の元に北条が例の横田戦のルーキーを援軍に攻めようとしていることを忍が伝えに来て、真田軍は戦闘態勢を整えていた。


そして、特攻兵隊長の花姫は父親の吉永の家督を継ぎ津家の主としてその話を聞いていた。





「こんなにすぐに会えるなんて···私達は運命の糸で結ばれてるのかな?


愛しの美恵···」




<人物紹介>

·津 吉永···いわゆる雇われた誰にも仕えていない武士。


一応、娘は真田家の特攻兵の隊長として出世している。



·津 花姫···戦闘狂で、戦が趣味。実力は、美恵と互角以上に戦える実力の持ち主で、真田軍の特攻兵隊長でもある。


村上 美恵が恋人としての好きになっている。




·真田 幸村···武田の将、真田昌之の息子。その勇猛さから現代でもゲームで主人公にされるほどの人気を誇る。


花姫の主でもある。




*番外編ですが本編に繋がります。番外編は日常のようなものなのでこちらもお楽しみください

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