4月4日

つい寝過ごしてしまい、チェックアウトギリギリの時間に起きる。


慌てて支度をし、道中拾ったタクシーで羊ヶ丘展望台へ。着くなりクラーク博士の像が目に飛びこんできた。当然、右腕を伸ばしたあのポーズで写真を撮った。祖父と孫の二人組がいたので写真を撮ってあげる。孫の方は、なぜか不機嫌そうだった。


さっぽろ雪まつりの過去の記録展示を見学する。やはり雪ミクがいた。オタクっぽい若者グループも来ていた。一人だけいるあの女子は、サークルの姫なのだろうか。次に羊をぼんやりと眺め、オーストリア館へ。ここでの目的はジンギスカンだ。かわいい羊を見た後なので少々かわいそうだが、やはり話は別というもの。まずは白い恋人ソフトで朝食分の腹を満たし、ジンギスカンを提供してくれるレストランに入った。メニューの表紙では羊のイラストが「めぇーにゅー」と鳴いているが、君はそんな悠長にしていていいのか。それから鉄板で焼いたジンギスカンは香ばして旨く、くせは感じられなかった。野菜によく合うと思った。ジンギスカンを食べた後は、二階の売店で木彫り羊の爪楊枝立てを買った。


旅立ちの鐘を惜しみなく鳴らした後、バスで駅へ、駅からは地下鉄で移動。ここで、作家友達の佑佳さんと初めて会う。改札を出たところで待っていると、遠くから走ってくる人がいた。その人、すなわち佑佳さんはジャンプをする形で飛びついてきたので、驚くばかりだった。抱きつき返せばよかったのだが、クールに装ってしまったことを今も後悔している。それから近場のカフェで、創作についての話をする。佑佳さんもそのうち本領発揮をし始め、やはり佑佳さんの生み出したキャラクター、いや、キャストの話になった。それから佑佳さんに、ケツァールとペンギンの絵を描いてもらうことになった。


佑佳さんは集中の海に潜った。凛とした横顔が美しい。幅広く、深い才能をうかがわせる横顔だ。そしてまた、長い苦労と努力を重ねてきたのであろうその横顔は、なによりも美しかった。自分も、こんな人に生まれることができたら良かったのにと感じた。


駅前でお別れをする。もう一度周りの風景を眺めた。これまでSNSで、佑佳さんとたくさん話をしてきた。佑佳さんの作品を読んできた。そしてその佑佳さんはこの町に、たしかに生きているのだと思った。


それから地下鉄で大通へ進み、さっぽろテレビ塔に上る。展望台から夕陽を臨む。太陽は、片手で握りつぶしたボールのような形をしていた。霞んでいた。あぶり出された札幌の建物がそれぞれ、影をこしらえている。展望台では30分ほど待機し、それから札幌の夜景を眺めた。大通りを彩る光は、滑走路のようであった。テレビ塔を降り、ゲームセンターでペンギンのぬいぐるみをゲットする。外からの七色のライトアップを楽しみ、狸小路へ向かった。


「はちきょう」というお店に入る。一階を見下ろすことができる二階席へ案内される。昭和っぽい感じが好きだ。ここで、迷うことなく「つっこ飯」を注文した。つっこ飯とは、ストップというまでイクラをかけてくれるシステムの丼飯だ。店員が来た。店内に怒声にも似た大声が鳴り響く。だがストップ、など伝えるはずもない。結局限界までイクラの乗った丼飯を楽しんだ。


この日の夜は、大浴場つきのホテルに泊まった。漫画コーナーで「五等分の花嫁」を初めて読んだ。

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