第5話 花見イベント2

◎[おぉおーっ]

❤〚なにこれ、綺麗〛

▽[すげー]


広がる山並みが徐々に桜色に染まっていく。

幻想的な風景でいつまでも見ていたくなる。

しかし、そういうわけにもいかないようで、桜色はじんわりとにじみでるようにあふれてきているのが見えた。


「動いてるね。やっぱり、あれ全部が魔物モンスターかな」


▽[たぶんそうだね。只の花見イベントのはずがないとは思ってたよ]

◆[どんな魔物モンスターかわかる?]


「いろんなサイズの桜の木が歩いてる、名前は……『???』ってなっててわからないわん」

開拓者セットに入っていた望遠鏡で山の麓辺りを眺めながら答える。


◆[おお、やっぱり新種の魔物モンスターか、なんとしても倒さないと]

◎[新種の魔物モンスターを倒すと何かあるん?]

◯[倒してからのお楽しみだな]


山から溢れてきている魔物モンスターはゆっくりとこちらに向かってくる。

幸い、小さな個体から順番に近づいてくるようだ。

「初イベントだし、弱いボーナスモンスターであることを祈って倒しにいってみるよ!」

望遠鏡と同じ開拓者セットに入っていた手斧を取り出して駆け出した。


❤〚わん太きゅん、ふぁいとー〛

▽[何気に初戦闘じゃね]

◯[木の魔物モンスターに斧は効きそう]



小さな個体とはいえ、ボクの倍以上の大きさはある。

「そいやー!」

丘を駆け下りたそのままの勢いで飛びかかって手斧を叩きつけた。

しっかりとダメージを与えた手応えの後、魔物モンスターは光の粒となって霧散した。


――未討伐の魔物モンスターの初討伐を確認しました。

  鑑定結果を設定可能です。


「ふぁっ、これはなんの入力?」

システムメッセージとともに、なにやら入力画面が現れた。


◆[ローグライクなこのゲームはアイテムも魔物モンスターも固有名の初期値は示されてないんだ。で、プレイヤーが勝手に名前なんかを設定できる]

◆[通常、設定にはMPがかかるけど、初取得や初討伐の場合は無条件に設定可能]

▽[もっとも、その名前が使用されるかはプレイヤー次第]

△〚なんだか、面白そうな仕様〛


「おーけー、だったら名前を付けるよ。桜の木のモンスターだから……」


名称:サクラッキー

説明:桜の木が変化した魔物モンスター。偶にフォーチュンクッキーを落とす。


「でーきた。これでどうかな」


◯[なかなかそれっぽくていいね]

❤〚さくらっきー、可愛い〛

▽[サクラッキーで良いのか?]

◆[この後のイベントで皆がサクラッキーと呼ぶかと思うと……]


さて、このサクラッキーならまだレベル1のボクでも倒せることが分かった。

確かにこれはプレイヤー応援イベントだ、あの、見るからに高レベルな恐竜や狼を倒さなくてもレベ上げができるチャンスだろう。


「さーて、サクラッキー狩りの開始といくわん!」

そう気合を入れて、ボクは山から湧き出てくるサクラッキーに向けて突撃した。

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