13.初デートその1!

「いただきまーす! うおぉ! おいしそー!」


 次の日の朝のことである。

 コスモの目の前にあるのは、朝食である。

 美味しそうな、パンと目玉焼きのセットだ。

 目玉焼きの皿には焼いたベーコンも乗っている。

 この朝食は、そう、ユリが作ったものだ。

 そして、飲み物は、温かいコーヒー。

 なんて理想的な朝食なのだろうか。

 コスモは笑顔で食す。


「美味である!」

「ありがとうございます!」


 昨日は朝食も外で済ませた。

 今日はユリが朝食を作ってくれると言うので、コスモはそれに甘えたのだ。


「料理上手なんだね」

「そ、そうですか? 家ではあまり褒められてなかったので、嬉しいです!」

「そうなの?」

「はい。ですが、家事はずっとやってきたので、少なくとも平均はあるって自信はあります!」

「平均以上だと思うよ!」

「えへへ」


 しかし、ユリには苦労をかけてしまった。

 コスモはそう感じていた。

 なんせ、【発火はっかクリスタル】すらも、コスモ家には無かったからだ。

 発火クリスタルとは、その辺に安価で売っている火を発生させるクリスタルだ。

 魔力がチャージされている分だけ、使用できる、使い捨てのものだ。

 人間には魔力が備わっていない為、使い捨てるしかない。

 エルフだったら、魔力をチャージして、繰り返し使用することが可能だ。


「料理道具もなかったので、昨日のうちから計画できて良かったです」

「本当にそうだね。ごめんね」

「お買い物も楽しかったから大丈夫ですよ。それにしても、コスモさんは普段何食べてるんですか?」

「店売りのものとか、生肉とか……かな?」

「えー!? お腹壊さなかったんですか?

「私、そういうの強い方だから平気だった」

「そうなんですね! 私は生肉はちょっと苦手ですかね……」


 駄目な人は本当に駄目だが、コスモは大丈夫なのであった。


「ごちそうさまでした」


 その後、コスモとユリは、朝食を完食した。


「今日は忙しいですよー!」

「そうだね。一緒に楽しもう!」


 そう、今日は仕事は休みにして、1日を2人で楽しもうと決めた。

 幸い金も沢山ある。

 これは楽しそうだ。


「今までは贅沢できなかったからね」

「ふふ、私もです」


 ユリはご機嫌そうだ。

 贅沢できるのが嬉しいのだろうか。


 コスモはそうだ。

 今まで我慢していたものが、沢山ある。

 主に食べ物だが。


「じゃあ、早速レッツゴー!」


 最初に来たのは、アクセサリー屋だ。

 このアクセサリー屋は、アクセサリーと言っても戦闘に使うものではなく、オシャレの為のものを売っている。


「お金は沢山あるから、好きなの選んだらいいと思うよ」

「コスモさんは買わないんですか?」

「私は、いいかな」


 コスモはアクセサリーには、あまり興味がない。

 何か効果のあるものならば、欲しいが、外見の為だけのアクセサリーは特に欲したことがない。

 好きな人がいる子なんかは、こういうのに興味があるのかもしれないが、あいにくコスモは恋愛というものが分からない。

 勿論、恋愛経験がなくとも、アクセサリーが好きな子は多いと思うので、そこは人それぞれなのかもしれない。


「コスモさん、これ買いませんか!?」


 ユリが手に持っているのは、黄色のリボンであった。


「コスモさん、似合うと思うんです!」


 店員に許可を取ったコスモは、ユリに言われた通り、ポニーテールの結び目に巻き付ける。


「やっぱりいいですよ! かわいいです!」

「なんか、子供っぽくない?」

「とても似合ってますよ!」


 初めて親以外にプレゼントを貰い、それを褒めてもらえた瞬間であった。

 コスモは表情を明るくする。


「じゃあ、買おっかな!」


 少し照れくさい。

 ちなみに、ただのリボンなので、非常に安かった。


「お返しに、ユリのアクセサリーを選んであげるとしようかな」


 ちなみに、報酬金の10万円はまだ分けていなく、共有で使っている。

 なので、買ってあげよう! とはいかない。


「本当ですか!? 嬉しいです!!」


 喜んでいるのでヨシとした。


「ん? これはかっこいい」


 コスモは、会計場所のすぐ近くに置いてある、ペンダントに目が行った。

 虹色の剣のペンダントだ。

 綺麗だ、そしてかっこいい。


「これいいんじゃないの?」


 コスモはユリに見せる。


「うわぁ、綺麗ですね! でも、値段が書いてませんね」

「確かにそうだね」


 コスモは店員に訊ねる。

 すると、店員はニカッと笑い、こう言った。


「タダでいいよ!」

「「タダ!? ラッキー!!」」


 2人してハモってしまった。

 その後、2人は続けてハイタッチをかわす。


「なーに、ラッキーなのはこっちだよ、いやー助かったー!」

「え?」

「アクセサリーっていうのは、誰かの手に渡ってこそだと思ってね! 飾りじゃあかわいそうだ!」

「確かにそうですね!」


 確かに、飾るのもいいが、アクセサリーとは、本来誰かが身に着けるものだ。

 コスモは、うんうんと店員の言葉に対し、うなずいた。


「ありがとうございます!」


 ユリは、コスモから受け取ったアクセサリーを首にかけた。


「似合ってるよ」

「大切にします!」

「私もリボン、大切にするね」


 2人は店を出ると、昼まで街をブラブラと歩いた。

 そして、昼が近くなると、近くの高そうな店へと、足を踏み入れる。


「ステーキ」


 コスモとユリは、ステーキを注文した。


「美味しい!! 普段生肉ばかりだけど、やっぱり焼いた方がお肉は美味しいね!」

「ははは……焼いた方がいいと思います」


 高級ステーキを食べた2人。

 その後は、本日お目当ての店へと向かう。

 お目当ての店とは……?


「ここが噂の特大フルーツパフェ専門店だね」

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