12.SRランク冒険者とは?

「これはまずいことになりましたよ……」


 ユリはコスモの家で椅子に座り、頭を抱えている。


「SRランク冒険者ってそんなに凄いの? ……っていや、Sランクの更にその先だから凄いってのはなんとなく分かるんだけどさ、とりあえずどう凄いのかが、いまいち分からないんだよね」


 コスモは冒険者関係の知識が、ほぼ0と言っても過言ではない程にとぼしい。

 ゆえに、SRランク冒険者が具体的にどう凄いのか、分からなかった。


「SRランク冒険者ははっきり言って、化物です」

「化物……? 見た目が怖いの?」

「いやいや! 見た目は怖くないですよ! 多分」

「会ったことがあるの?」

「会ったことはないです。そもそも、この街にSRランクの冒険者は滅多に来ませんからね。何度会ってみたいと思ったか分かりません。私の憧れでもあるんです!」

「なるほど。詳しく聞かせてくれる?」


 SRランク冒険者とは、この国に4人しか存在しないと言われ、勇者に近い存在の1つと言われているようだ。

 SRランク冒険者の依頼成功率は100パーセント。

 どんな難しい依頼も攻略してしまうらしい。

 それも、ソロでだ。


「そこまでやばい人達なんだね」


 【剣聖】で、どこまで通用するのだろうか?

 実際に対決したことがないので分からない。

 だが、【剣聖】のレベルを見定めるのも悪くない。

 最悪、降参をすれば、命までは奪われないだろう。


「で、今回私に挑戦状を送って来たっていうのは」

「剣士、クロスさんですね」

「クロスさん……剣士なんだ」


 ライバル意識を燃やし、コスモに挑戦しようと考えたのだろうか?


「ユリはどう思ってるの?」

「え?」

「私が負けると思ってるの?」


 コスモは【剣聖】スキルを持っているのだ。

 相手が化物でも、コスモが負けるとは言い切れない。

 ユリはどう思っているのだろうか?


「あ、その……必ず負けるとは思っていませんけど……やっぱり危ないと思いますし……」

「心配してくれるんだ」

「当たり前じゃないですか! 何かの間違いでコスモさんが死んだりしたら……」


 ユリは下を向いた。

 表情は暗い。


「大丈夫だよ」


 コスモがユリにそう言うと、ユリは顔を上げる。

 不安そうな表情を浮かべるユリに、コスモは言う。


「心配しなくても大丈夫だよ。私には【剣聖】があるし、ヨシムラさんから貰ったこの防具もあるんだから!」

「そ、それはそうですけど……」

「それに、いつかは魔王を倒しに行かなくちゃいけないのに、こんな所で怖がっても仕方がないと思うよ?」


 そうは言うが、コスモだって、本当は怖い。

 【剣聖】がどこまで通じるのかも、内心不安だ。


「確かに……コスモさんの言う通りかもしれません」

「でしょ? むしろ楽しみにしておいてよ! 私とクロスさんのレベルの高い戦いを、ね? 見たかったんでしょ? SRランク冒険者の戦いを」


 ユリは、少々涙目で頷いた。


「だったら、楽しみにしてるといいよ! 私も負ける気はないから!」


 コスモは立ち上がり、魔剣をブンブンと振り回した。


「分かりました……。私、コスモさんを信じます! 絶対に勝つって信じてみます!」

「それでいい!」


 コスモはニヤリと笑った。

 実際どうなるかは分からないが、精神的な余裕も必要だ。


「それで、対戦は……2日後みたいだけど」


 ここから王都まではかなりの距離がある。

 間に合うのだろうか?


「転移クリスタルで来るんじゃないでしょうか?」

「でもあれって高価なアイテムじゃなかった? 私は詳しくないけど」

「どうでしょう? 王都ではそれなりに安価に手に入るかもしれませんし……もしかしたら転移系のスキルを持った人に連れてきてもらうのかもしれませんね」

「だったら安心だね。でも、転移クリスタルって何で量産しないんだろうね? 量産すれば色んな所生き放題じゃん」

「そうはいかないんですよね。そもそもあれってほぼ天然の素材なんですよ。だから希少高価になってしまうんです。量産なんて、夢のまた夢です」


 それを考えると、ヨシムラはかなり金持ちなのだろう。


「それはそうと、明日はどうするんですか?」

「どうって?」

「クエスト受けたり、修行したりする予定はありますか?」

「強敵と戦う前日だし、クエストはいいや。修行も【剣聖】のおかげでしなくても大丈夫だし」

「分かりました。それならば、明日は……!」


 ユリが腕を大きく広げる。


「デートしましょう!」

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