第13話 ユーナの本気。

コーラルは訓練の全てに感謝をする。

やはり世代を経るごとに甘く弱くなっていく。

これがオブシダンやグラスでも同じように喜び、プレナイト達も同じであったと思う。


平和な世の中では厳しい方だが、それでもここにイブが居れば「まったく、ダメダメですねぇ」と言い、ライブは「アンタ達、弱すぎ。何甘ったれてるの?」と苦言を呈し、アクィは「サルバンに行くわよ。鍛えてあげるわ」と言っただろう。


今もヒーヒー言っているヘマタイト達だったが、ヴァンが「ミチトさん、先にセレナを助けてよ」と言うと、ミチトは「そうだね」と言ってから「在庫減ってて悲しいから少し分けてね」と言ってコーラル達の集めた魔水晶から「二級品だけだから安心してね」と言って一掴みずつ貰うとホクホク顔になる。


そのホクホク顔を見て、シャヘルが「…メロの手記にあった通りだな」と呟く。


シャヘルの言葉が聞こえていたミチトが「メロ?メロがどうしたの?」と聞くと、シャヘルが「パパは鉱石が減ると落ち着かないでソワソワし始めて、こそっとファットマウンテンまで行ってしまう。ちょっと病気みたいに見える。最近は歩けなくなってきたけどどうするんだろう?とあった」と説明する。正直ツッコむ話なのだが、ミチトは目尻を下げて「本当にメロは自慢の娘だなぁ」と喜ぶ。


ミチトは「話がそれたから本題に戻るか」と言って収納術から無限記録盤を取り出すと、ユーナ達に「無限記録盤と魔水晶を使ってもいいけど、セレナさんはアクィと同じ、無限魔水晶から無限記録盤を作って貰う」と言った。



「ミチト!?模真式にするつもり!?」と言って驚くアクィに、「そうだよ。ユーナは甘ったれだから覚悟を持たせる。普通の模式にしたら間違いなくこの場なら…ペリドットかな、1番優しい…、ライブによく似たペリドットに支配権の強奪を頼み出る。だから俺はセレナさんにはユーナと居てもらう為に模真式を生み出させる」と答えると、ミチトは「見る?」と言ってアクィに心眼術を見せる。


アクィは「成る程、心は通じている…と言うか、セレナさんにユーナを受け入れる土壌が出来ているのね」と言った。



ユーナとセレナの心は通じていた。

偏屈と評されるユーナの性格も「個性」と受け入れるセレナの心。

そして幼馴染だからこそ見知った関係は、ミチトとアクィには遠く及ばないがそれでもキチンと通じていて、魔水晶を組み合わせて作る無限魔水晶の無限記録盤も受け入れられる事がわかった。


「さあ、無限記録盤の作り方を覚えてもらうよ」と言って手始めに魔水晶で無限記録盤を作れるようにするとコーラルは時間がかかってしまうが、ヴァンに「んー…?コーラルさぁ、ミチトさんに格好いいところなんて思わないで、わざと失敗してみようよ」と言われて格好つけた事を恥じるとすぐに作れるようになった。


「よし、それは普通の術人間を作る時にも使えるから持ってるか、嫌だったらヨシさん達に上げちゃって。…コーラル、ちょうどいい、君とヴァン君の仲も悪くない。折角だからユーナに教えるついでだ、ヴァン君専用の無限記録盤を作ってみろ。別に術人間にしろなんて言ってない。する必要もない。だが折角の仲だから作り方を覚えておいて後世に残すんだ」

「はい!」


「ヘマタイト達は見て手順を覚えるんだ」

「わかりました」

「そうさせてもらう」

「まあ使わないのが1番だがな」


「ユーナ、セレナさんと手を繋いで、コーラルはヴァン君とだ」

「手を繋いだら術を流せ、身体の隅々まで理解をしろ、その身体に無理無く入る無限記録盤をイメージしろ」


コーラルはヴァンを見てヴァンの身体に無限記録盤が入る事を意識してみると、確かに先程の記録盤ではヴァンに無理を強いる気がした。


「コーラルは出来ているな。ユーナ!なんで慮れない?セレナさんに無理をさせるな!」

こうして出来た無限記録盤に次は限界まで魔水晶を合わせて無限魔水晶を作る事になる。


「相手を見て、相手を壊さない事を意識して一つずつ慎重に足すんだ。例えるならコップと水だ。コップは素体。水は魔水晶、水が溢れたら失敗する。だがコップの淵まで水を入れてやらなければ才能が台無しになる」


この説明にコーラルはヴァンを見て「ヴァン…あなた…」と驚きを口にする。

コーラルにはコップと呼ぶのもおこがましい巨大な桶に見えてしまった。


セレナは5つの魔水晶を組み合わせて無限記録盤を作ったが、ヴァンの方はコーラルの在庫分ギリギリまで組み合わせる事になった。


こうして出来上がった無限記録盤を見てミチトは満足そうに「2人ともよくやった。見事だ」と声をかけるとそのまま施術にはいる。


「コーラル、この先はサポートだよ」

「はい」


「ヘマタイト達も仮にユーナが術切れなんかを起こしかけたら失敗しないようにユーナに術を送るんだ。ユーナ、一つ言う。俺が指導したんだ。本気で力を振るってもセレナさんは壊れない。本気だ、遠慮はいらない」


ミチトの言葉に「っ!?」と言って慌てるユーナを見て、ヴァンが「ユーナ?」と声をかけた後で「もしかして、失敗したら怖いって、力を使ってセレナを傷つける事を怖がってたの?」と聞く。


ユーナはバツが悪そうに「ああ、親父から俺のヒールはよく効くが身体が爆発しそうだと言われたから怖かった。セレナは軽すぎる。吹き飛んだら困る」と言うと、嬉しそうに「私軽くないって、ユーナの腕が凄いだけだよ?それに今までもどんなに助走をつけて飛びついてもいつも軽々と捕まえてくれてたよ?」と居ってセレナが笑う。


「あれは力加減が出来るしセレナが軽いからだ」

「なら力加減してよ。でも今は平気だよ。伝説のミチト様が助けてくれる。力の限りを奮って私を本気で受け止めてよ」


「…本気」そう呟いたユーナはミチトを見ると、ミチトは優しく微笑んで「余裕だよ。ユーナの本気って言ってもタシアの本気に比べたらまだまだだしね」と言い、アクィも「パテラ兄様くらいで変なこと言うわね。驕りすぎだわ」と笑った。

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