最終話 みんなで就寝

 寝室には俺のベッドしかない。

 そうなると、女子は固まって寝てもらうわけで。


「必然的に俺は寝室。おまえらはリビングで雑魚寝になるがいいのか?」


「勿論。いいに決まってるっしょ」

あゆみはシーツを持って来ましたよ」

「私もブランケット持って来た」


 よし。


「んじゃ、俺は寝室で寝させてもらう」


「でもさ。モッチンは寂しくないのか?」


 はい?


「どういう意味だ?」


あたしらは楽しく3人で寝るのにさ。モッチンは1人じゃん」


「いや。そもそも。俺は男だしな」


「そういうの時代遅れだって。今はグローバルなんだからさ」


「いや。意味違うだろ」


「ここのリビングなら4人で寝れるって」


「いや。勘弁してくれ」


「えーー。先輩はあゆみたちと寝たくないんですかぁ?」


「あのなぁ。 恋都莉ことり。なんとか言ってやってくれ」


「私も。みんなと寝た方が楽しいと思う」


 おまえもかよ。


「ナハハ。3対1じゃん。モッチンはリビングで寝るの決定だな」


 そうなるのか?


 みんなで布団の用意をする。 

 リビングにある机やソファーを寝室へと移動させて広くする。

 寝室のベッドにあった俺の布団はリビングに移動させた。


 8畳の部屋とはいえテレビの分があるからな。

 実質6畳くらいの場所に4人が川の字で寝ることになる。


「流石に狭いだろ?」


「いやギリいけるっしょ」


 なんの根拠があるんだよ。


「では公平をきすために寝る場所はクジで決めたいと思います」


 あゆみは広告の切れ端でクジを作った。


「たは! あたしは3番だな」


「私は1番」


あゆみは4番でした」


 俺は2番か。

 つまり、 恋都莉ことり 艿夜にやの間。


 やれやれ。

 どうしてこうなったのやら。


「じゃあ寝ようか」


「おいおいモッチン。こんな夜は恋バナか怪談をするのが定番じゃんか」


「いや。定番と言われてもだな。恋バナなんてないぞ」


「あ、あゆみもありません」


「私もない」


じぃーーーー。


「あ、あたしだってないっての!!」


 なんだよ。

 4人ともないのかよ。


「じゃあ怖い話だな。みんなはあるのか?」


「あ、あ、あゆみはありません。ブルブル」

「わ、わ、私もない」

「あ、あたしだってないっての」


 と、3人は震えながら抱き合っていた。


 やれやれ。

 じゃあ必然的に俺しか持ってないのかよ。


「そうだな……。このマンションの近くに神社があるだろ? そこの話なんだけどな」


 3人はガチガチに震え上がっていた。


「おまえら、よくそれで怪談をしたいと提案したな?」


「そ、そ、それで? その神社がなんなんだよ?」


 いやいや。

 ビビりすぎだろ。

 まぁいいか。


「そこに1人の女がお参りに来るようになったんだよ。夜の7時ごろかな? 必ずその時間にね」


「うわぁあ! その人が幽霊ですね! 怖いです!」


「いや早いだろ」


「だって、暗くなってお参りなんておかしいです!」


「不思議に思った住職が女に声をかけたんだよ。そしたら、女の人は仕事帰りでね。娘の大学受験の祈願成就に来ていたんだ」


「なぁんだ。幽霊じゃなかったんですね」


「住職は女の人に娘さんの写真を見せてもらったからね。子供想いの優しい母親だよ」


「ああ、それなら安心です」


「お母さんのお参りは1ヶ月ほど続いたんだ。そして、ある日ぱったりと来なくなった」


「娘さんの受験が終わったのかもしれませんね」


「うん。住職もそう思っていたんだ。そしたら、ある日。写真で見せてもらった女の子が神社に来たんだよ」


「ああ、娘さんだ」


「うん。大学に受かったことを神社の神様に報告に来たというんだ」


「ほっこりするお話ですね」


「住職はその子の母親が1ヶ月もここに通っていたことを伝えた。すると娘は首を傾げる」


「どういうことですか?」


「母親は半月まえに病気で亡くなっていたんだよ」


「え?」


「住職は1ヶ月間も母親の姿を見ていたんだけどね。どう考えてもお参りに来ていた日数が合わないんだ」


「えええええええええ!?」


「もしかしたら、死んでも娘のことが心配で、霊体になってもお祈りを続けていたのかもしれない。って話」


「ぎゃああああああああああああッ!!」


 ははは。

 怖がりすぎ。


「だ、だから、初めに幽霊って言ったじゃないですかぁあああああ!!」


「いや。初めのは生きていたかもしれないぞ? 途中で幽霊になっていたかもだけどさ」


「ひぃいいいいいいいいいいいいいッ!!」


「あーーでもさ。それって結構いい話かもな」

「うん。私もそれ思った。お母さんが娘のことを愛していた証拠」


「で、でもでもぉ。幽霊になって神社に通うってどういうことですかぁああ!?」


 いや、だから娘を愛してだな……。


「この部屋にそのお母さんが来たらどうするんですかぁああ!?」


 ここに来る理由がわからん。


「おいあゆみ。おまえの後ろ」


「ぎゃあああああああ!!」


「あははは! なんにもないっての!」


「んもう 艿夜にやさんったらぁあ!!」


「娘はおらんかぁ? 私の娘はいねがぁ〜〜?」


「ひぃいいいいいい!!」


 なまはげみたいになっとるがな。


 消灯してもあゆみの震えは止まらなかった。


「に、 艿夜にやさん。起きてますかぁあ?」


「ちょ、押すなってあゆみぃ」


「だってぇえ」


  艿夜にやが押されると必然的に俺ん所に来るんだよな。


「ちょ、ちょっとぉ!」


ぷにぃいい。


「お、おい 艿夜にや!」


「だってあゆみが押してくんだもん」


 俺が押されたら 恋都莉ことりの方にも密着するだろうが。


「うう。苦しい」


「ほらぁ!  恋都莉ことりに皺寄せが行ってるだろうが」


あゆみに言ってくれよな」


「ううう。 艿夜にやさーーん」


艿夜にやが怖がらせたからだぞ。責任取れよな」


「ったく。もう。ほらよ。抱きしめてやるから来いよ」


「あううう……」


「ちょ。あ、あゆみ。おっぱい揉むなって!」


艿夜にやさーーん」


「あ、ちょ、バカ!」


 いい加減にしてくれ。

 今後、あゆみには怪談は禁止だな。




 なんだかんだと楽しい時間を過ごす4人でした。

 この後、 恋都莉ことり 真言まことに告白をするのですが、それはまた次の機会に語るとしましょう。



おしまい。


────


最後までお読みいただきありがとうございました。

少し実験的に書いたラブコメでした。

もう少しスローライフを勉強して次に生かしたいと思います。

次の作品でお会いしましょう。

感想、評価いただけるととても嬉しいです。


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俺ん家が駆け込み寺〜訳あり美少女がなぜか俺の家へと集まってきます〜 神伊 咲児 @hukudahappy

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