閑話 ミシャ

 



 私は他の人よりも成長が早かった。10になるまでは同じ年の子と同じような背丈だったのに、10歳も半ばになったときには他の子よりも頭1つ分は背が高くなっていました。


 この時のはまだ周りの方たちも少し成長が早い子供くらいに見てくれていたのですが、12の誕生日が迫ってきたころには明らかに周囲とは異なり、大人と同じほどの背丈になった私を大人たちは気味の悪い存在として扱うようになっていました。



 それからしばらく時間が経ったころに、早朝の時間におじい様が私を呼びだされました。普段あまりそのようなことをしない人だったのですが、急いでくるようにと指示を受けたので、寝起きだったためすぐに着られる簡素な服に着替え、おじい様の部屋に向かいました。


「お前は本当にエルフか?」


 部屋に着くや否や、明らかに人を見る目ではない視線でおじい様にそう問われました。どうしてそのようなことを聞かれたのか、どのように答えればいいのかわからず視線をさまよわせている中で、私よりも先に部屋に来ていたお母さまと目が合いました。しかし、お母さまは何も言わず気まずそうに私から視線を外しました。


 その反応がおじい様の質問に対する答えでした。


 人間と交わってできた子供は成長が早い。

 人間との交流が減って久しいエルフの村で、そのような子供ができたのは数代さかのぼってようやく見つかるくらいに少ない存在でした。


 そのような子供は今ではデミエルフと呼ばれる、禁忌に近い存在。

 獣人などの人間以外の他種族とエルフの間に生まれた子のことをハーフと呼ぶ中で、唯一差別語であるデミと呼ばれる存在です。そんな言葉が生まれるくらいにエルフにとって人間と交わることが忌み嫌われていることなのです。


 気づくのが遅れたと嘆きながら、私がその場にいないかのように一切視界に入れようとしないおじい様の様子を見て、すでに私がこの家の者として扱われていないことに気づきました。


 これからどうなるのか。周囲の目が先ほどよりも険しいものになっていることから、まだ経験の浅い私でもあまりいいことにはならないことはすぐに察することは難しくありませんでした。


 そうして私はその日のうちに村から追い出されることになりました。

 あのまま、すぐに追い出されたことで何も持たせてもらうこともなく、服も着ていた物だけ。おじい様どころか、お母さまとも一言も話すことはできませんでした。


 今の時代、身一つで村を追い出されることは絶望以外の何者でもありません。人間のいる場所に行けば何をされるかもわからず、しかし行く当てがあるわけでもない。

 本当に絶望するしかありませんでした。


 そうして、村の近くにいるわけにもいかず、行く当てもなく歩いているところを人間に捕らえられ、あの洞穴の中に連れ込まれたのです。


 そのあとは嫌なこともありましたが、本当に嫌なことをされる前にとある方に助けられ、一緒の家に住むことになりました。


 思いもよらぬ展開ではありますが、意外と悪くない結果とも思うのです。

 あのまま村の中にいられたとしても、どのような扱いを受けることになったかもわかりませんし、あの時の周囲の目を思い出せばもしかしたら奴隷のような扱いを受けていたかもしれません。


 それを思えば、森の中での生活なんてなんてこともありません。

 これからどのような生活になるのか、ちょっと不安ではありますが、でもそれ以上にわくわくしている私がいます。

 

 



 ―――――

 アンジェの閑話は書く内容があまりなかったのでありません



 次話から新章になりますが、まだ書き切れていないため更新速度が落ちます。

 書き溜め分(3~4話)に関してはこのまま更新する予定です。その後は書き終わり次第、更新という形になります。



 

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