おわり ねじりおにの顛末

 事件は、時と共に次第に落ち着いていった。

 ねじりおに──誰がはじめにそう呼んだか、女を捻り殺す呪いをかけた鬼はそう名付けられた。

 名がある鬼は強くなる。

 ねじりおにはじわりじわりと狙っていた分下家の姫の喉元に手をかけたが、それを止めたのが何処ぞから現れた2人の法師である。

 面妖な法師ではあるが、彼らを喜んで迎え入れ、彼らはその厚意に応えて鬼を捕えて退治した……と、とある下人が得意そうに語ったらしい。


 鬼のまことの姿は姫への愛を捻じ曲げた哀しき老婆────しかし、都の外へと追放されたその老婆のその後を見たものはいなかった。どこへ送られたのか、誰も知らない。

 ただ、それから数夜後に、捻りに捻られた生き物の残骸を、鳥が啄んでいたのを見た人がいた。原型がわからぬまでになってしまったソレはねじりおにの犯行に違いないとされた。

 都を追われたゆえの怒り、しかし分下家に戻れもせずに手当たり次第に襲ったのか、はたまた別の何かなのか──これが最後のねじりおにの凶行として記憶されている。





(了)

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かきちらし 仮題陰陽怪奇録 井田いづ @Idacksoy

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