第12話 生還!魔法少女!

爆炎が熱い……。

相当強力なアイテムだったみたい……。炎の時間が長い。

コカトリスは倒せても、私がダメだ……。


気が付くと、仰向けで倒れていたらしく、夕焼け空が見えた。

茜さんが立っているのが見えた。


「大丈夫か、葵?」

「……あれ、私、生きてるみたい……」


ゆっくりと起き上がらせてくれた。

周りを見渡すと、私の周りだけ木々も無い更地になっていた。

コカトリスの死体も見当たらない。それだけ強力なアイテムだったことがわかる。


強力なアイテムをお願いしたけど、こんなに強くなくて良かったのにな……。

お願い事をするときは、正確に意図がわかるように伝えないといけないね。反省……。



「あ、そうだ! あの女の子。アイリスちゃんはどうなったの?」

一面見渡せるが、どこにも少女の姿はない。

コカトリスと一緒に消滅してしまったのだろうか……。

そうだとしたら、私はなんてことを……。



「あの子か、気を失ってるけど、ちゃんと生きているよ。この辺りの木がなくなっちまったから、そっちの方の木陰に寝かせてる。傷もそんなにないみたいだったよ。どうやったんだ?」


「生きてる……。良かった……」

せっかく起き上がらせてもらったのに、また地べたに倒れ込んでしまった。

無事で、本当に良かった。



「これで、一件落着ですね。茜さんも無事でよかったです」

「コカトリスって力強いんだな。すごい吹っ飛ばされたよ。急いで戻ろうと思ったら、すごい火柱が立ってて……。こんなことになってて、良く生きてられたな」



「ふふふ。私もアイリスちゃんも、魔法少女への思いが強かったってことです」

「魔法少女への思い? とりあえず日も暮れちゃうし、街へ帰ろうぜ!」



街へ戻ると、すっかり夜になっていた。

夜も遅い時間だというのに、王宮にはたくさんの人で溢れていた。

兵士とともに、大勢の人たちが私たちを迎えてくれた。


「二人とも上手くいきましたか! お二人なら上手くいくって信じてました!」


代表で迎えてくれた人。

恰好が変わっていてわからなかったが、声は私を召喚してくれた人だ。


「はい。おかげ様でコカトリスを殲滅して、アイリスちゃんを救出できました」

「ばっちりだったぜ!」


途中で起きたアイリスが、私たちの前に出ていて無事な様子を見せた。

「お姉ちゃんたちが、助けてくれたの! とっても強かったの!」



アイリスが前へ姿を見せると、アイリスのお母さんらしき人が走って前に出てきた。

「アイリス!」

「ママ!」


「怪我はない? 大丈夫? 心配したんだから……」


うん。母と子が抱き合う姿は、いつ見ても良いものです。

そんな姿を見ている私を遮って、召喚士の方が話しかけてくる。


「貴方たちは、やはり『思いの力』が強い方達です。どうか、我々の願いを聞き入れてくれないでしょうか」

「ああ……。魔王を倒すって言ってたやつよね……」


どうしよう。ただのコカトリスなんかにあんなに苦戦していたのに……。

私に力があれば即答なんだけど……。

どう答えるべきかと茜の方を見ると、茜も何か考え込んでいるようだった。



「……うーん」


私じゃなくて茜が戦うんだから、そっちの意見を尊重しよう。

そう思って、少し待ってみるが、答えは出てこないようであった。



「……うーん」


おそらくこの様子を見ると、多分何の話だったか分かっていない……。

考えるのをあきらめたのか、茜は私の方を向いて笑顔を返してきた。


「やっぱりわからない! 葵に、任せる!」


わかってなかったんだね、やっぱり……。

人の話を聞かない人なんでしょうね。きっと。

聞いても聞き流すというか。

しょうがないので私が答える。


「魔王を倒さないと、元の世界に帰れないんですよね。それであれば、早々に倒して、家で魔法少女アニメを見たいと思います!」


茜はうんうんと頷いている。



「けれども、私は魔法少女にはなれないので、主に茜さんがやってくれます!」


茜はうんうんと頷いている。

私の話くらいは聞いて欲しいのだが……。


「私は何もできないですけれど、茜さんの補佐としてついてきます。後ろから魔法アイテム使って補助なんていうのも必要でしょ? 貴方は作戦なく突っ込んでしまうし」

「うん、やっぱり葵は必要だよ! 一緒に行こう!」


純粋な瞳をこちらに向けてくる。

子供と同じくキラキラとした瞳。

私も、このくらい純粋になれればいいのにな……。

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