第3話 召喚成功?

 日曜日の朝。毎週楽しみにしている。

 子供のころから欠かさず見ている。


 大人になっても、同じ時間帯で放送し続けることの偉大さを感じて、私は毎週日曜日の朝だけのために生きているようなものだ。


 魔法少女になることを否定されても、ずっと好きでいる。

 心の中にずっと閉まっている、大切な夢。



「――えーっと、昨日は土曜日だっけ……」


 飲み過ぎたからか頭がフラフラだな。

 なんでそんなに飲んだっけな……。

 あんまり覚えていない……。


 月森さんが子供のころの夢を熱く語り出したから、ついつい私まで乗ってしまって。

 いつもは隠している魔法少女談議をしていたら、このありさまか。

 ……ふがいない。


 深酒しすぎて、家に帰ってきた記憶もあまりないし。


 そうだ。

 今日は日曜日のはず。

 今、何時だろう。起きてテレビをつけなきゃ。

 魔法少女が私の生きがい……。



 ……あれ、眼鏡はどこだ?

 視界がぼやけてて、何も見えない。


 目覚まし時計もない……?


 あれ?

 なんか家具の配置変わった? 何か部屋が広い。


 眼鏡を付けていなくてもわかる。壁までがとてつもなく遠い。

 寝室は6畳間なのに、ここは……?



「――召喚成功です」


 聞き覚えのない声が聞こえた。

 私は寝ぼけた頭で、とっさに答えてしまった。


「……え、誰ですか? ここ、どこ?」



 聞き覚えのない声が答えてくれる。

「初めまして。伝説の勇者様」

「……えっと、何それ? あなたはどなたでしょうか? 何も見えないのですが。私の眼鏡、知りませんか?」


「貴方が召喚された時に一緒に飛ばされたアイテムの事でしょうか? ステラ運んであげて」


 ふわふわ、小さい塊が空を飛んでいるように見える。

 えーっと。幻覚かしら? 眼鏡をかけないと何も見えないんですよね。


 丸いふわふわした何かが、私の手の中に眼鏡を置いてくれた。

「ありがとう……ございます……?」


 早速眼鏡をかけてみると、そこにはおぼろげに見えていた通り丸い塊が飛んでいた。

 薄水色な毛が、ふわふわと生えていて。

 掌に乗るぐらいの、ぬいぐるみの様だった。

 私の部屋にも同じようなぬいぐるみがいっぱいあったけど……。

 こんなぬいぐるみ持っていたかな……?

 しかも飛んでるなんて……。


「なんだろう……。私は夢を見ているのでしょうか……」

「夢などではありません。召喚の儀によってこちらの世界へと召喚をしたのです」


 先程と同じ声が聞こえてきた。

 声の方を見ると、金髪碧眼の目鼻立ちがはっきりとしている人が立っていた。

 涅色くりいろの、フード付きのローブを着てこちらを眺めていた。


「誰!? それよりもここはどこ!?」



 眼鏡をかけるとはっきりと見えてきた。

 とても大きい広間で、そして天井がとても高い。


「ここは、王宮。私が貴方様を召喚させて頂いたです」

「はい?」


「現在、この国は大変な状況にございます。異世界から来て下さった勇者様、どうか助けて頂きたい」


「私が勇者?……女なのに?」

 何も理解が追い付かない。全ての説明にクエッションマークが浮かび、聞いた内容もオウム返しのようになってしまう。


「強い思いを持つ貴方様は、勇者様です。魔王討伐の願いを込めて召喚させて頂きました」

「え? 強い思いって……?」


「この世界では、精神の力が魔力と直結しております。なので、異世界より心の力が強い者を選んで召喚させて頂いています」

「……私に、そんな力があるの?」


「強く念じれば魔法が使えるはずです」


 受け答えをするだけで、頭が痛い。

 優しい語り口だが、飲みすぎたのか頭に響く。

 これが、飲み過ぎたとき特有の夢なのかしら……。

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