ホバークラフト装甲車

「奴を倒せ!」


 レオパルト2部隊の隊長が叫ぶ。

 味方戦車を、新鋭のレオパルト2を撃破したロシア軍の新兵器を破壊しなければならない。

 仇討ちとばかりにフィニストに狙いを定めようとする。


「クソッ! 早すぎる!」


 フィニストの移動速度が速すぎて、レオパルト2の主砲旋回速度では追いつけない。

 その間にも、味方の車両が一両やられた。


「畜生!」


 苛立った一両が発砲するが、避けられて仕舞った。

 しかも射線上にいた味方のキャタピラを破壊する。


「撃つな! 味方に当たる!」


 フィニストはレオパルト2部隊の真ん中に入り込み、進路上の戦車にミサイルを撃ち込んでいく。

 レオパルト2部隊はたった一両のフィニストに大混乱した。

 しかし、混乱も長くは続かなかった。

 フィニストが直ぐに離脱したからだ。

 だが、彼等の背筋は凍り付く。


「しまった! 抜かれた!」


 レオパルト2部隊を貫いて、後方の味方に向かって行ってしまった。

 後方には自分たちを支援してくれる歩兵と砲兵、後方部隊――レオパルト2に必要な物資を大量に保管してくれている上、弱武装、弱装甲。

 燃料弾薬という可燃物を保有しているため簡単に燃え上がる。


「直ぐに警報を出すんだ!」




「来たぞ!」


 レオパルト2部隊からの警報を聞いて直ぐに配置に就いた歩兵部隊の隊長だったが、戸惑っていた。

 味方のレオパルト2が追いつけない、高速移動兵器をロシアが開発したなど信じられなかった。

 しかし、配置について直ぐ地平線から雪煙を上げて接近してくるフィニストを見て驚く。

 だが、それは一瞬でしかなかった。


「馬鹿め! そこは地雷原だ!」


 進撃路の側面に地雷を仕掛ける事はよくある。

 敵の反撃、弱い側面や後方部隊の周囲へ攻撃を仕掛けて来た時、引っかかるようにするためだ。

 ウクライナ軍も原則に従い地雷を埋めており、そこへフィニストが侵入した。

 しかし、爆発しなかった。


「なんでだ! 不発か!」


 地雷にも不発弾はある。

 しかし、全ての地雷が爆発しないのはおかしい。

 理由はフィニストがホバークラフト型だったからだ。

 地上からほんの十数センチしか浮かないが、踏まれて爆発する地雷の上を素通りしてしまう。

 フィニストは足止めされる事無くウクライナ軍の陣地に迫る。


「撃て!」


 フィニストに向かって射撃するが、早すぎて追いつけない。

 たまに命中するが小銃弾ではフィニストを貫けなかった。

 フィニストは簡単にウクライナ軍の陣地に侵入。

 作られた塹壕の上を通り過ぎると内部に侵入した。


「拙い! 味方が!」


 隊長が叫んだ瞬間フィニストがミサイルを放った。

 多数のミサイルはウクライナ軍の後方部隊、燃料弾薬を保管する集積所に命中し火種となって盛大な爆発を生み出した。

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