星にえらばれた救国の聖女。
二年間の巡礼を終えた聖女は例外なく感情を喪失してしまいます。
そのおおきな代償に対して与えられるのは、継承権二位以下の王族、あるいはその縁者に嫁ぐという栄誉でした。
しかし、今代の聖女リネッタがえらんだのは、その瞳の色から、野蛮で穢れた血が流れているといわれる黒騎士で……?
物語は、黒騎士のクウィルが王家から婚約の打診をされるところからはじまります。
クウィルは不誠実極まりない理由でこれを引き受けるのですが、リネッタへの態度はわりと誠実。
初対面時には出迎えもせず、自宅には寄りつかないし、手紙の返事は三行、贈り物のひとつもしないけど、うん。大事なところではね、ちゃんと誠実です。ほんとうです。信じて!
聖女はなぜ感情を失うのか。
とても痛くて重いテーマですが、この作者さんならではの言葉えらびのセンスとリズミカルな筆致がどんどん読ませてくれます。
リネッタとクウィルをとりまくサブキャラたちもとても魅力的。彼らの平和なわちゃわちゃをずっと見ていたいです。
恋愛もちゃんとあるのですが、それだけではない。心の深いところにしみてくる物語です。ぜひおためしあれ。
実はiらんどに掲載されていた時期からこのお話が大好きで、今回カクヨムに掲載されているのを知り、小躍りしました。
感情の無い聖女、リネッタ。
伯爵家の「次男」ではあるものの、養子で実はある一族出身のクウィル。
この二人が織りなす恋愛ものなのですが、甘い描写というより、深くて泣ける描写が多いです。iらんどでは仕様上ほとんど一気読みして脳みそが空っぽになり、ずうっと涙を流していました。
今回は一ページ一ページめくり、ずっと涙を流していたので、読むのが遅くなっちゃったと思います。
クウィルがリネッタに感情を思い出されるために、「快と思えば誓約錠のある左手を。不快と思えば右手を」あげてください、と不思議なことをお願いするのですが、ページをめくるごとにその効果が明らかになってきて、彼の不器用な優しさに涙しました。
リネッタの感情が消えていく過程がある手帳に綴られているのですが、そのシーンは涙なしには読めませんでした。
クウィルとリネッタが少しずつ近づいていく様は嬉しくて感動で泣きました。
リネッタに感情がない理由が明かされた時、そしてクウィルの過去が明かされた時、今でもある壮絶な理不尽を思い起こし、悔し泣きをしました。
今こうしてレビューを書いている時も泣いています。
こんなに優しくて泣ける話があっていいものか……。ずっとうちふるえています。