第15話 リベンジの中間テスト

―――304人中293位


この屈辱的な順位から早くも1ヶ月半。リベンジの中間テストがやってきた。


朝7時半頃から、オレを含め何人かの生徒は最後の足掻き中。前の席の岸本と家入がまだ来ていないため、田川と笹倉が前に座り、オレの机を囲む。


「いやぁ、オレちょっと今日勉強してきてないからなぁ」

化学基礎の教科書をめくりながら、お決まりのセリフで田川と笹倉に先制パンチ。


「オレも全然やってないわ。4時起きで詰め込んだけどヤバイなぁ」

「フィーリングで何とかなるだろ、てか化学基礎今日?」


いやぁ、同士。こうして情けない同士を得られると安心なんだよなぁ。そしてテストの日にち分かってないアホもいる。素晴らしいことだな、勝ったわ。


「なぁ、清彦。イオン化エネルギーの大きさとか原子半径の図だっけ?あと、電子配置とか覚えた?」

唐突に笹倉が田川に聞く。


「あぁ〜その2つは出るって言ってたもんな。それだけは覚えてあるわ。あとは知らん」

「ナニソレ?」

「え?碇聞いてなかった?言ってたじゃんよJaneが黒板にこれは出すって、黄色チョークでグルグル丸書いて」


知らないんですけど。


「そうか、君たちはそうやってすぐに人を裏切るんだね」


ただ自分が話を聞いていないだけなのに裏切られた気分になり、悲壮感漂う視線を2人に送る。


しかし、2人は全く聞かずにブツブツ喋りながら教科書や問題集と対峙していた。


―――こーゆう時だけ進学校の生徒ですよ感出すのやめてくれ。


結局、化学基礎試験の本番は大失敗だった。



テストは全部で9科目。あっという間にテスト期間の3日間は過ぎて8科目が終わり、残すは昼休みを挟んで4限の世界史。


ここまでは1勝6敗1引き分けといった感じだろうか。現文は恐らく平均くらい。現代社会は多分満点だろう。社会科目だけは楽しくてガチったし。


「よっ、いーかり。ス〇ブラやらん?オレもう世界史諦めたから昼休み有効活用しようぜ」


もう〇〇は諦めた。田川のこのセリフは既に古文漢文、数学、コミュ英の計3回も聞いている。そのくせどこが絶対に出るかは知っていて、全てオレを裏切っている。


「お前、んなこと言って毎回話が違うよな?まぁでもいいわ。オレも【世界史こそ】やってないわ、とりあえずSawitch持ってこいよ」


最後くらいは反撃してやるからな。


そう思いながら、ゼロ○ーツサムスを選択し、田川と40分小さな画面で戦った。



―――5月21日、テストの結果が返された。


・現代文 57点 平均 56点

・古漢文 21点 平均 53点

・表現英語 30点 平均 61点

・コミュ英 18点 平均 47点

・数学I 6点 平均 40点

・化学基礎 24点 平均 66点

・物理基礎 30点 平均 74点

・世界史A 100点 平均 68点

・現代社会 100点 平均 57点


304人中243位


「碇っ、前回から50位ランクアップしたな!」

そう言ってオレの肩を叩きながら、笹倉は彼の108位のテスト結果を見せてくる。


「おい碇、世界史裏切ったな……」

田川の場合、現代社会50点と世界史30点以外は全て平均を悠々と超えていた。順位は73位。


「なぁ、オレお前らと友達やめていい?」


自分から勉強してませんイベントを発生させたがことごとく裏切られ、進学校の難しさを改めて教えられる結果だった。50位も順位上がったけど。


―――期末試験ではきちんと備えて毎日予習復習しないとな。


そう、こんなことを必ずテスト結果が悪ければ思うのだが未来は明白。

前日までやらず、当日になって勉強してませんイベントが次の試験でも始まるのだった。

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