第5話 窓際男子の怖いもの

ところで、窓際男子にとって1番怖いものはなんだろうか?

陽キャ男子?―違う。

陽キャ女子?―確かに怖いが違う。いや待て、なんで陽キャばっか?ほかに無いの?


その答えは授業中にお供を連れてやってくる厄介者。そう、陽の光だ。


陽の光、もう1つ?あ〜、〇殺隊ね、お前〇舞辻無惨かよではない。

陽の光は眠気という最悪のお供を連れてやってくるのだ。


これに加え、ウチの授業はさすが進学校。レベルが高い。

少しでも問題で躓くと眠気が手招きしてくる。

午前中ならまだ耐えられる。しかし、昼休みを挟むと食後の眠気が協力してきやがるのだ。4つが組み合わさったことで起きる現象はただ1つ。

午後の授業は寝て終わるのだ。


今となっては初日からオレが話しかけたのをガン無視して寝続けた、前の席の家入真斗の気持ちも分かる。

彼の場合、10分休憩と昼休みを除き全て爆睡だ。まだオレの方が優等生だ、とは思うが午後でちゃんと全て起きていた授業があったか自信はない。


5時間目の数学終了まであと9分…今回は耐えきっ、


「い―、ここ分かるかぁ?」

前の人が指されてる気がする。数学の鷲塚は授業終わりが近くても不意打ちで指名してくる。可哀想に。


「い―り、寝てるのか?」

あ、家入か。ほら呼ばれてるぞ。


「碇!問4の2番!」

「はいいっ!」

ガタガタッ、ゴトン、カラカラ…。焦って立ち上がった時に椅子が激しく倒れ、シャーペンが机から落ちた。


「プッ、あっははははは!」

クラス中から笑いが起こる。広い教室の全体から角のオレの席に視線がそそがれた。


「碇ぃ、ちょっと前から寝そうだったから目つけてたんだぞぉ?油断したなぁ」


―――不覚…オレだったのかよ。


「それで、2番はこれどうやって解くんだ?」


鷲塚が指さす黒板に目を向けると、問1までの何十行にも渡る計算式たちが書き連ねてあった。

そして、問2の前提式が書かれて下には空白。


「いや、あの…分かんないっす」

「そうだろぉ?寝てると分かんなくなるからちゃんと起きてないと。うちの授業は国公立受かるために…」


なんだか、その後も少し鷲塚は話してた気がするが覚えていない。

岸本も笑っていたのは覚えている。可愛かったし。


こんな形でクラスの人たちから存在を知られるとは………

先週も自己紹介の時間なんてものがあったが、特に面白いことを言った訳でもない。オレの印象を持たれるのは今日が恐らく初めてだ。


最初の話を撤回。窓際男子の怖いものは鷲塚だ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る