エリンギと間違えて1UPキノコを食べちゃった女

リオル

1UP第1話

思い返せば、一口目の味噌汁を飲んだ瞬間から違和感はあった。

でも仕方なかったんだ、今日はいつも以上に残業が長くて、帰りの電車からおなかはペコペコ、夕飯は大好きなエリンギの味噌汁にしようと決めていた。

なんとか作った味噌汁を、自分でもはしたないと思いながらがっついてしまった。

食べ終わってから思う、きっと私は1UPキノコを食べてしまった。

そう、あのゲームに出てくる1UPキノコを。

食べた瞬間、「ピロリロリロン」ってあの音がなったし、なんとなく視界の端に2って残機数が見えるし。

何より、ほかならぬ私が感覚で理解している、今の私には残機が2ある。

おそらく、この前スーパーで買ったエリンギに1UPキノコが紛れ込んでいたみたいだ(何故かは知らない)。


ただいわば事故とはいえ、残機が増えたというのは嬉しい話だ。

一回死んでもやりなおしがきくんだから。

でも日常生活で残機ってどう使えばいいんだろう。

シンプルに病気とかになって死んじゃったときにもやり直せるなら、それは魅力的だよね。

でも、1UPキノコって病死にも効果はあるのかな。

ゲームではクリボーにぶつかった李、奈落に落ちたりした場合に残機が減ってるので、外的要因でしか検証ができてない。

つまり、病死とか老衰にも1UPが適用されるのかは未検証。

これは困った、ぬくぬくと人生をまっとうして、そのまま死んじゃったら1UPし損じゃん。


じゃあどうしよう、もし運よく(いや運悪くなんだけど)交通事故なんかに会ったりしたらやりなおせるかもしれないけど、その可能性もなかなか低いと思う。

そもそも本当に私は1UPしてるの?

なんやかんや言って、私の思い過ごしじゃないだろうか。

じゃあ試してみようか、家の窓から飛び降りればすぐに実験はできる。

いやいや待って、その場合実験が成功したら単純に残機を1消費して普通の人生になるだけ、

一方、失敗した場合、ただ死ぬだけになってしまう。

ダメだー、どう転んでも徳がない。


あー、もう面倒くさくなってきた、

そうだ、ちょうど今日急な残業を押し付けてきた上司にムカついてたし、同じ電車で帰った先輩のおじさん社員はしつこく「二人でお疲れ様会をしよう」とか誘ってきて気持ち悪かったし、

あいつらぶっ殺して死刑になってみればいいか。

最悪、残機0になってもそれなら納得、

よし、メイクなおして包丁と井出出かけようっと!

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エリンギと間違えて1UPキノコを食べちゃった女 リオル @SMitsukawa

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