04,「|Elliana《エリアナ》」

「さぁて、何の用でしょう。」

にやにやと愉しそうな表情で問いかけてくる。それはまるで、絶対に解けない謎々を友達に出題したクソガキの様だ。

「分からんねぇ。教えてくれ。」

解るはずも無い問いに紫帆は、無駄だ、と言わんばかりに匙を投げる。

「あらあら、つれないわねぇ」

何だろう、先程から一々言動がうざったい。

「まぁ、いいわ。教えてあげる。」

「簡潔に頼むぞ。」

「400字詰め原稿用紙10枚文のストーリーを用意しているのだけど…」

「無駄になげぇな、おい…」

「暇だったのよ」

「は?」

「忙しいのに凄く暇だったの」

「はぁ?」

「だ~か~ら~!忙しい割にすごく暇だったのよ。」

「何だその疲れたリーマンみたいな理由は…」

「それでね、私は街行く人々の中で面白そうな人を探していたのよ。」

「それで?俺はそのお眼鏡に適ったって事か?」

「いいえ全然。」

無表情で首を左右に振っている。憎たらしい。

「可哀そうだから声をかけただけよ。」

「俺、幼女に同情されてんのかよ…」

「『人を測るに、外見をもってなすは愚行である』私が好きな言葉…誰が幼女よ!!」

色々とネタが入り混じっている。

「観たまんま幼女ロリじゃん。」

ズバッと言った。

ビシッ、前から聞こえた気がした。

「ま、まぁ、いいわ。ずっと同じ場所に居てもつまらないでしょう?少し歩きましょ?」

そう言って彼女は足早に歩き出した。

「えっ、ちょ、まっ…って、歩くの速ッ!!!」


 ◇ ◇ ◇



幼女と話、歩き、偶に食べ、小一時間が経った頃、

「そろそろ、かしらね?…ん」

そう言って幼女は左手を差し出した。どうやら別れの握手の要求らしい。

紫帆は渋々手を差し出し、軽くはたくように握手を終わらせる。


ここから早く離れた方が良いわよ。具体的には6キロ程かしらね? そう言った彼女はいつの間にかどこかへ消えていた。

逃げ足(?)が早いようだ。


若干困惑気味の紫帆だが、そんな紫帆に思い出されるのは握手の時に 差し出された左手。

差し出された左手首・・・には銀色があり、黒色の線が一本走っていた。


「なんだよ。そういう事かよ。」

先程握手(?)した左手をニギニギしながら、呆れた紫帆は一人ごちる。



「チクショ、趣味がわっるいなぁ」

そう言って紫帆は、今はもう見えない複製人形オートマタの少女に悪態をつく。


 ◇ ◇ ◇



気品に満ちたオーラと幼女な見た目がちぐはぐな彼女は世にも珍しいオートマタ―複製人形だ。

複製人形とは、生物の人格、見た目を複製コピーし、記憶と感覚を共有した機械、贋物がんぶつだ。

文字通り複製自動人形―自ら動く複製ニセモノ人形依り代という事だ。


高い製作コストと製作の難しさ、メリットを上回るデメリットの所為、何より使いどころの無さであまり世の中に出回っていない。


そんな珍しい複製人形がここにいる。つまり何かしらの事情があるのは明白。

彼女は特殊な複製人形だった。


主人の記憶や人格と共に主人の異能をも共有している。つまりは、異能持ちの複製人形だ。


そんな彼女の仕事は、忙しい本体に変わり、その異能で面白い―素質のある、将来性のある異能持ちを探し出し、スカウトすること。


その異能で紫帆の可能性を覗き視た。

紫帆と小一時間ほど行動してやっと視得た可能性・・・(紫帆の可能性を視るのにあれだけの時間が掛かったのは誤算だったみたいだ。)。それはたった数時間先までの可能性。

辛うじて異形に噛まれるところまでは視得た。しかし、その先が視得なかったのだ。それはつまり、紫帆の人生がそこで途切れることを意味する。もしくは彼女の異能でさえも予測できない何かなのかもしれない。


複製人形の彼女の持論は、『運命は少しの事で変わる。良い事も悪い事も』だ。

だから、今日の数時間一緒にいただけの少年紫帆の為に、少しの事で変わる運命が、どうか良い方へ転がるよう、複製人形は祈るように異能を行使した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

設定

~識別腕輪~

 右手の場合

 ・銀一色・・・異能持ち

 ・銀色に赤一本・・・適合者

 ・銀色に青一本・・・過適合者

 ・銀色に黒一本・・・特異体質の異能持ち


 左手

 ・銀一色・・・ホムンクルス

 ・銀に赤一本・・・オートマタ

 ・銀に青一本・・・異能持ちホムンクルス

 ・銀に黒一本・・・異能持ちオートマタ


例えば、特異体質且つかつ異能適合者だった場合、銀赤の腕輪と、黒単体の細めの腕輪をもう一本着ける。


特異体質且つ異能持ちの場合は、銀黒腕輪一本


異能持ちではない特異体質者は、装着義務はない。


~自動人形【オートマタ】~

 【複製人形】

 ・複製自動人形

 ・コピー元オリジナルが必要。

 ・人格はオリジナルのコピー。

 ・オリジナルと感覚共有、記憶共有がされている。

 ・オートマタに傷を負った痛みはオリジナルが受ける。物理的な傷は出来ない。あく    まで痛覚のみ。

 ・オートマタが致命傷を負った時、オリジナルにも同じ痛覚が走る。殆どはその痛     みによるショック死をしてしまう。

 ・人間以外でも複製できる。a〇boの高性能版をイメージしてくれれば

 【自律人形】

 ・自律自動人形

 ・オリジナルの見た目(生体情報)とオリジナルの人格を持つ。



上記の二つを合わせてオートマタと呼ぶ。

どちらも、作成費用、維持費用が滅茶苦茶かかる為、所有する人はあまりいない。


次回の設定解説は、ホムンクルスについてです。


後書き

ヤバいです。何がヤバいって、ストックです。十話ぽっちで見切り発車は無理があったようです。

でも自分は締め切りとかが無いといつまでもやらないタイプなので、ギリギリ更新の今ぐらいが丁度いいのかもしれないです。(一話書いてから半年たってやっと十話分のストックだし)

てなわけで遅刻あっても許してください。


今回も短めです。数時間前編改め、蛇足篇本筋とあまり関係ないから書くこと無いです。

それと説明ばっかの会話文無しばっかの文ですみません。読みづらいですよね。御免なさい。でも次回も地の文ばっかです。


でも次回から本筋に戻るので蛇足篇よりは多少分がまとまってるかもです。

てなわけでまた来週ここで会えたらうれしいです。


いこま

5/28更新分

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