第46話 事件の全容!





 いよいよ全て白日の下に???


 2000年11月、あんなに幸せだった一家をどん底に突き落とした犯人は、誰だったのか?


 ヤクザがらみの平成の大事件と言えば、1995年に起きた北朝鮮の工作船追跡事件が挙げられる。


 日本の排他的経済水域で北朝鮮の工作船が発見され、海上保安庁の巡視船と銃撃戦までした挙げ句、自爆して沈没した事件。


 沈没した北朝鮮工作船を、サルベージ(沈没、座礁した船の引き上げなどの作業)して、工作員の携帯電話を回収し、データを復元して通話記録を調べたら、暴力団とつながりの深い在日韓国人との間で数十回も通話をしていたことがわかり、近藤会(北九州の指定暴力団)の幹部カク・ヨヌが捜査線上に浮かびあがった。


 北朝鮮との間で、覚せい剤の取引きをしていたのではないかと疑われた。工作船は逃走中に海に何かを投棄していて、それが覚せい剤だったのではないかと推測された。


 外交官も関与していたらしいのだが、頑として口を割らなかった。こうして外交特権(酒気帯び運転をして人を引き殺しても逮捕されない。このようにどのような場合でも不逮捕特権が、認められている)で、第三者には開封できないクーリエと呼ばれる外交行嚢(こうのう)(外交使節団同士の連絡手段として利用される、使者が運ぶ封書)を利用し、怪しい物品を日本に持ち出そうとしていた疑いがある。(過去には葉巻や薬物なども確認されている)


 夫婦を装って、当時男と運び屋のスパイ活動をさせられていたのが、田中紀美子と言う女性で、この女性こそ詩織であり幸子なのだ。 


 北朝鮮は覚せい剤を製造して商売にしていた。「瀬取り」といって、海上で覚せい剤の受け渡しをする。


 船と船がくっついていると怪しまれるから、覚せい剤を完全防水に梱包して、ブイとGPSセンサーをつけて海に流し、それをあとから日本の漁船が取りに行くという受け渡し方法だった。


 何と、外交官や情報機関員人物が関与していた麻薬取引や紙幣偽造事件は、思いも寄らない展開を見せる。徹底的にしらを切り通し、外交官の特権、不逮捕特権で無罪放免となり悪事の限りで、懐の潤っている外交官田代。


「私はこんな仕事は、もうしたくありません。私だって幸せになりたい!あの岸田さんと結婚したいのです。どうかお願いです!」


「お前のような河原乞食分際が『キシマル』の社長夫人に納まろう等とんでもない話だ。お前は地べたを這いずり回っているのが一番お似合いだ。この阿婆擦れ女が!」


「グウウウウッ~ウワァ~~~ン😭お願いです。もう絶対にこんな仕事したくありません。秘密は絶対口外しませんから!」


 実は幸子はAV女優をしていた時に共演した、カク・ヨヌとは公私共に、付き合いが続いていた。何でも腹を割って話せる兄のような存在。


 幸子は働き口が無いからと言って働かない道楽者の父に、度々法外な金の無心をされていた。


 そして、お金を渡さないと母を追い詰めている。


「水商売でも何でもして金を稼いで来い!」と母に凄い暴力を振るうので、母が余りにも可哀想過ぎて、幸子は見境なく金欲しさに泥沼にはまって行く事になる。


 幸子にすれば、愛する母が殺されそうになるのをみすみす見ていられない。こんな事誰に相談が出来ようか?


 その辛さをヨヌに打ち明けていた。そこでお金になる仕事を紹介された。そのうち段々とヨヌは、親切を装い幸子を利用出来るだけ利用して行った。


 それは何故かって?


 それは出世したいのはもちろんだが、ヤクザの幹部から「あの女を利用しろ!」と言われて断ったら半殺しの目に合うからだ。


 最初は可哀想だとは思ったのだが、幸子をかばって逃がしたら自分が半殺しの目に合う。


 一方のリ・ドハもやはり幹部の命令で、最初は利用目的で近づいたのだが、幸子の事情が余りにも悲惨極まりないので何とか逃がしたかった。


 そこで「金」こと、キム・ミノを使ってリンリンの専務という肩書を幸子に与えて『キシマル』社長との間を取り持った。まぁ三店方式を有利に運びたいのが一番の理由なのだが……。


 この時名前を『幸子から詩織』に変更した。

 その理由は岸田社長に過去を知られたくない為と、AV時代の事がバレるのを恐れての事。本名の田淵幸子でAV活動をしていたので詩織に変更した。


 AV時代は厚化粧のせいもあり、名前を変更したせいもあり、岸田社長に気付かれなかった。



 

 ◆▽◆


 最も重要な事、幸子がしつこく結婚をせがむので北朝鮮に向かう工作船から、鬱陶しいから生きたまま捨てさせたのはやはりドハだったのか?


 それにはドハは全く関与していない。


 余りにも幸子のバックに見え隠れする闇組織が大きすぎるので、折角拉致するのにこれ程のいわくつきでは困る。日本の巨大暴力団も見え隠れする幸子。危険性を感じ工作船から北の工作員によって捨てられた。


 それでも2000年11月までドハは「幸子」詩織と関係があったのでは?


  ……確かに連絡は取り合っていた。


 ドハは何だかんだと言って幸子を愛し始めていた。だから…岸田社長に傾いていると分って素直に祝福できない自分が居た。だから…ついつい困らせ悪態を付いて悪あがきをしていた。


 幸子を良いように利用していたが、心の中ではつくづく気の毒に思い幸せを掴んで欲しいと思う反面、自分から気持ちが離れ遠くなって行くのが辛かった。


 気持ちが揺れ動き、思いがまとまらない。やっと立派な男を掴みあと一歩の幸子を、応援したい気持ち半分、その反面自分の元でスパイとして動いて欲しい気持ち半分。

 そして…最終的には岸田社長の妻となって、幸せを掴んで欲しいととみに願うようになって行った。だから…最近は三店方式の利権確保にだけ動いて貰っている。



◆▽

「隼人」スホとのアバンチュ-ルもあったが、それはいっときの麻疹のようなもの、どんな事も許してくれ、包み込んでくれる雄介を心から愛している幸子(詩織)。


 これでやっと幸せになれると思ったのだが、知り過ぎた幸子はとうとう消される羽目になった。



 ◆▽◆

 あの日2000年の、山々や街路樹が赤や黄色に染まり、少しずつ葉を落とし始めて*⋆✰*🍁・*⋆✰葉っぱの絨毯が路面に敷き詰められたように、鮮やかなそんな霜月の11月。


 あの日””ピンポンピンポン””インタ―ホンが鳴ったので、ドアホンに出た詩織。


「あ~らヨヌじゃないの?こんな家に訪ねて来るなんてダメじゃないの。でも折角来たんだから上がって!上がって!ちょっと待ってね?ドア開けるから……」


 ””カチャカチャ””


「久しぶりね~?上がって!」


「ああああ…………」リビングには雄介もいる。


「いらっしゃいませ。どちら様?」


「ああああ……カクと申します。ああああ……唐突ですみませんが、時間が有りませんので単刀直入に言います。岸田さん詩織とは別れて欲しい!」


「いきなり何ですか?一体あなたは誰ですか?恋愛は自由です。2人の気持ちが1つなら他人が、とやかく言う筋は無いんじゃないですか?私達の気持ちは固まっています」


「詩織が他の男と秘密裏に交際中で、決定的な写真まで持っている。そんな二股も三股もかける女でも良いのかい?とんだ阿婆擦れ女だ。それからこっちだって詩織が仕事上欠かせないので……だから詩織との結婚は許さん!」と怒鳴り散らした。


「エエエエ————ッ!詩織に男がいるだって?詩織それは本当か?もし本当だったら絶対に許さん!言ってみろ……」


「グウウ( ノД`)シクシク…ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 そこで詩織に詰め寄って聞き出そうとしたのだが、雄介は鈍器で殴られ意識を失ってしまった。


「ヨヌなんて事をするの?酷いじゃないの!何故そんな酷い事をするの?」


「お前が裏の世界から身を引きたがっているらしいが、知り過ぎた女は危険だ!死ね———!」


「何を言っているの?今の仕事から足を洗ったら絶対何も言わないから!」


「知り過ぎた女は殺すしかないのだ!もう捜査の目が運び屋夫婦で当時運び屋のスパイ活動をさせられていた田中紀美子と言う女性が、幸子だという事まで警察に知られてしまった。『もう幸子が捕まるのも時間の問題。その前に口封じの為に消せ』大幹部で外交官田代の言い付けだ!」目から涙が洪水のように溢れ出るヨヌ。


「何よ?どうしたのあなたらしくないわよ?」


「俺ではどうにも出来ない……仕方が無いんだ。命令だから許してくれ!」


「キャ-———!ヤヤ ヤメテ———!」逃げ惑う詩織。



「お前が苦しまないように完全に殺しきってやる!」



「ギャアア———!」息絶えるまで何回も刺しまくった。悲鳴を聞いた娘さん達が2階から降りて来た。



血まみれになった母の痛ましい姿に娘たちは泣き叫んだ。



「キャ-ギャア———!ママ!パパ!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 間髪入れずに次から次へと刃物を振り回して、娘2人を次から次へと刺し殺していった。白昼ピストルでは直ぐに気付かれるので刃物を凶器に使った。


「ギャ———ッ!ギャア———!タタ助けて———!」


「死ね———!」その時にインタ―ホンが鳴った。


 雄介に正体を見られたので殺害しようと思ったのだが?


(これは大変!)


 カク・ヨヌは3人を殺害して裏伝いに逃げて、待ち構えていた手先の車に乗り込み逃げた。


 あの眉間に三日月の傷痕の男カク・ヨヌ。指紋の極一部が照合の結果近藤会のカク・ヨヌと判明。


 詩織とすみれに百合殺しの犯人として警察の追求もむなしく、自宅の焼け跡から遺体で見つかった。


 村田組の二次団体、近藤会のカク・ヨヌは証拠隠滅の為、物的証拠が一切残らないように家にあった重要書類なども全焼して、焼け跡から遺体で見付かった。



 

 ◆▽


 事件が起こる数日前の事。

 事件の首謀者で金の亡者、外交官田代が怒鳴り散らしている。


「あの詩織とすみれに百合を殺せ!それにカク・ヨヌも殺せ!証拠隠滅の為には生きていてもらっては困る、分かったな?ヤレ———!」


 近藤会の若頭に強い口調で命令している。


 そして気の毒に……疑われていた名優村田哲は村田武組長の弟で、芸能界の重鎮在日2世の村田哲(カク・ユノ)は、幸子殺害には一切関係が無かった。


 また証拠隠滅の為に整形などしておらず、年齢も同じで、同じ村田組関係者である事と、名前が似ている事から話に尾ひれが付いたのだった。


 まぁ?有名人のスキャンダルは蜜の味というか?あれだけの才能の塊の名優が、実は殺人者だったなんて、それはそれは大スク-プだ。


 芸能記者さん達も当てが外れてがっかり!


 そしていよいよ次回最終話。





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