第42話 詩織の謎




 2016年冬の星や月は、冷えて冴えきった冬の凛とした冬の夜空には、美しく静かに輝いて見える寒月の2月初旬


 ミレ自動車社長チュェ氏は、あんなに2人の交際に難色を示していたのだが、最近はすっかり緩和ムードで、2人の交際に陰ながら応援する程にまで、なってきている。

 それはあの女ロアと何が何でも手を切る、その決意の強さを感じ取る事が出来たからなのだ。

 ロアのマンションを出て、新たな生活を始めたスホの誠意に感銘を受けたのと同時に、ジアンに対する愛の深さ、真剣さに(2人今後を温かく見守ろう)そうまで思うようになって来ている。



 ◆▽◆

 スホは現在33歳。


 色々な難題にも臆する事無く、果敢に取り組み乗り越えて来た結果、俳優として一皮も二皮もむけた厚みのある演技派俳優へと変貌して行った。


 だが……今尚家族同然で生活して来た、育ての母親詩織と妹達すみれと百合の死は、受け入れがたい悲しみとなって押し寄せて来るのだった。


(何故あんな無残な最期を辿らなければならなかったんだ?あんなに優しい母であり女でもあった母。更には妹達も極々普通の明るくて朗らかなお転婆な妹達だった。到底恨まれる要素は見つからない。だが……母詩織にはふっと疑問を感じる事が有った?たまに知らない男の人から電話があり「この電話の事はお父さんには内緒ね!」と強く口止めされていた。ある日学校の帰りに、いつもと違う方角から家路を急いでいると……目付きの鋭い到底堅気とは思えない男の車に乗り込む母の姿を目撃した事が有った。それから……家を時々留守にして外泊する事があった。「旅行に行くから!」と言って出掛けるのだが……お土産らしい物も滅多と見た事がない。でも……一度レシートを見た事がある。それは、東京駅の土産屋のあれはなんて書いてあったっけな~?九州旅行に行くと言っておきながら……俺はあの時ふと思った。母は旅行になど行っていないのでは……?)


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る