第32話 スホの部屋に侵入していたのは?





 山々や街路樹が赤や黄色に染まり、少しずつ葉を落とし始めて*⋆✰*🍁・*⋆✰葉っぱの絨毯が路面に敷き詰められたように、鮮やかな.:*:・'°☆


 そんな2000年の11月。

 当時、岸田詩織さん43歳、長女岸田すみれさん15歳、次女岸田百合さん13歳の殺害犯人はスホの父雄介ではないのかとの見解だったのだが……?


 全くのデマだという事が分かって来て、ミレ自動車社長チュェ氏も、あれだけ2人の交際に難色を示していたにも拘らず、最近は2人の交際を応援も已む無しとまで思うようになって来ている。


 実はスホは岸田コ-ポレーションの御曹司なのだが、社長の雄介氏には子供は無く、養子縁組で親子関係となったのだという事だけはジアンに伝えてあった。


 父のチュェ氏も、それはジアンから聞かされていたのだが、それでも大切な1人娘、用心には用心をに越した事はない。


 ミレ自動車社長令嬢が、どこの馬の骨とも分からない男と結婚する訳には行かない。そこで探偵にスホとその家族を徹底的に調べさせた。


 その結果スホの秘密が暴かれてしまった。


 スホはロアの事を愛するジアンには「キム・ロアはマネージャー兼母親代わりで、夜は俺1人で住んでいる」と噓を付いていた。


 実は……やり手の謎の女社長キム・ロアは、スホのマネージャー兼母親代わりと目されていたが、実際にはスホは女社長のパトロンで、スホの俳優研修期間や大学の月謝など全てををバックアップして、金に物言わせてスホを名実共に支配している女狐である事が分かって来た。


 そして…何と、10年近くも夫婦同然の生活をしていた事も分かって来た。更には……スホは北朝鮮に拉致されて今尚、時の人、北朝鮮の裏の女帝と呼ばれる久美子と、大蔵省のエリ-ト加藤雅之の子供ではないかとのもっぱらの噂なのだ。



 ミレ自動車社長チュェ氏とジアンに全て知られたスホは、窮地に立たされている。その為、スホは必死にジアンに、こんな事になった事情を詳しく説明している。


「本当に黙っていてゴメン!悪かった!こんなどうしようもない男の事なんか絶対に許してくれないと思うけど……どうしようもなかったんだ。父親の岸田雄介から芸能界入りを猛反対されて……まだ駆け出しの頃はお金が無くて本当に苦労したものだ。YMエンターテインメント・キングの養成所時代には、演技指導を徹底的に叩き込まれるが、その演技指導費用も相当なもので……月々30万円ほど掛かるんだ。だが宝の原石と目を付けられていた俺の場合は、事務所も金銭面では多少のバックアップはしてくれたんだが……それでも……異国の地にやって来て北朝鮮訛りを治す事や、生活習慣など学ぶことばかりで、お金は湯水のごとく出て行ったんだ。父親雄介は頑としてお金を融通してくれないし……そこにファンを装い近づいて来たのが母親以上も年の離れたロアなんだよ。俺だって嫌だったさ!だけど有名になる為には……やはり人脈やお金はどんな事をしても必要なんだ。もうここまで来たら後戻りは出来ないし?俺……ロアとどんな事をしても別れるから……頼むからチャンスをくれ!」

 それでも最大の大仕事が待っている。


(ジアンとまた寄りを戻す為には、何としてもロアと別れなければ……)


 そして…ロアの携帯番号も削除して、行先も伝えずに住んでいたマンションを出払った。


(やっと……あんなおばあちゃんと離れる事が出来た。あああ……!やっと……自由になれた!愛する夢にまで見た母との再会も出来て……あの鬱陶しいロアともやっと別れる事が出来て、後はジアンに自分の誠意を分かって貰う事だけだ……)


 そんな悠々自適なスホだが、最近いつも誰かに監視されているような?付け狙われているような?何か不気味な気配を感じているのだ。


(一体誰が?まさかロアがスト-カ-となって付きまとっているのか……でもマネージャ―にロアとの連絡は一切取るなと、口うるさく言ってある。事務所だって守秘義務厳守の口うるさいスタッフ達ばかり、易々スケジュールを教える筈がない……まさかジアンに頼まれた探偵が俺の行動を嗅ぎ回っているのか?でも……ジアンと連絡を取らなくなってからもう5ヶ月も経つのに……最近なんだよな……北朝鮮公演の後ぐらいからなんだよな~?そうだ!ロアのマンションを出た頃から感じるんだよな……アッ!北朝鮮から帰って来た時期と、ロアの家を出た時期が重なるから……だけど…もし北朝鮮側が俺の動向を探っているとしたら……一体今更俺に何の理由が有って付きまとっていると言うのか?まぁ!でも…まだはっきりした事は分からないから様子を見よう……)


 そんなある日、撮影が天候不順で中止になったので、いつもと打って変わって、早々にマンションに帰ると、誰かの影が一瞬ス――ッ!と見えた。


 そして……ベランダ伝いに一瞬で逃走した。


(確かに、ここは2階で横に倉庫があるから、そこに飛び降りれば大の男なら容易く逃げる事が出来る。でも何故家に侵入出来たのか?防犯性の高いオートロック式で侵入出来ない筈。部屋の中は荒らされている様子も無いし、金目なものにも一切手付かずの状態。犯人の狙いは何なのか?非常に気味が悪い)スホは早速警察に通報した。


 警察の調べでは、オートロックの暗証番号が完全に知られていて、極身近な人物の犯行に違いないとの見解なのだ。


 そこで耳にしたのが、スホが北朝鮮で幼き頃に、母と無理矢理引き裂かれ森に捨てられ拾われた家に居た子供が、スホの身近に潜んでいるのではないか?との事なのだ。


(アアアア?確かに良く遊び相手をしてくれた同い年の、ソジュンという男の子がいたな~?じゃ~?何の為に俺の周りを嗅ぎまわっているのだろうか?父の雄介も定期的にソジュンの家にも送金を、更には…献金も北朝鮮の他の家族にも送金は欠かさず送っている事は、俺もよく知っている。一体何故?)それからロアの動向も実に怪しい。


 ロアは最近、あの女を自由自在に操るジゴロ(岩田忠士)ドハと、四六時中一緒にいる事から、また寄りを戻して夫婦同然の関係になっているのだと噂になっている。


 また……日本での功績を認められて、北朝鮮に戻り大出世を果していたドハを、現在は会社の幹部に取り立てていると言う事なのだ。


 それでも……輸入雑貨の仕事を以前やっていたので、日本にも多くの顧客を抱えていたから、顔が利くのは事実なのだが、それにしても……輸入雑貨の仕事から手を引いて、随分経つ只の一初老の男を、今更何の根拠が有って幹部に据えているのか?


 実は…そこには驚愕の秘密が隠されている。


 更にはもっと、とんでもない話が飛び込んで来た。


 ドハとは、仕事やプライベートでは頻繫に一緒の所を目撃されているのだが、同居してはいない様なのだ。


 高級マンションで一緒に生活している男は、スホと同年代の男で、20代後半~30代前半のKポップスタ-のような華やかな男だと言う話だ。


 全く変わり身の早い、あれだけスホに入れ揚げ「捨てないで!」と懇願していたのに、居なくなってしまえば、あっさり乗り換えて(その舌の根の乾かぬうちに新しい男かい?)いい加減にして欲しいものだ。


 でも……それは全くの的外れで実は………。


 ロアには違う思惑があるらしい。



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