第30話 ジウと木村の思惑






(ハユン妃一派の仕業で母久美子が殺害されただと————?クッソ————ッ!と言っても、影武者の1人で一時は日本にいた工作員で、母久美子によく似た体系の女に整形を施し、瓜二つの人物に改造した久美子2号に過ぎないのだが、あの優秀な母の命を狙おうと躍起になっている輩が多すぎだ。以前にも命を落としかけた事が有ったが……父星日が亡くなり幾ばくも経たない時期に狙われ……ましても、このような事件が起きるとは……全く許せぬ。その為影武者を何人も用意はしてあるが……それでも…相手は本当の母上と思って実行に移した訳だから、もしこれが……まかり間違って本当の母上だったらどうなる……?この俺をいつも、陰に日向に守って一番的を得た正しい方向に導いてくれる、一番大切な愛する母上を殺害しようなどとは許せぬ!許せぬ!許せぬ!嗚呼嗚呼……!そして何と愛する妻で、この国の次期王になるであろう正優の生母であるジウが、母上殺害に加担していたなど到底許されぬ事。ウウウウ———ッ!ジウめ————!あの女絶対許せぬ。更には木村が母久美子殺害の実行犯だったとは……アアアア嗚呼嗚呼!なんてことだ!なんてことだ!何故木村が母上を殺害しようなどと思ったのか?俺から見ても嫉妬したくなるほど……母上に一途だったのに、あの2人は絶対に許せぬ!早速厳罰に処さねば……)


 満生はたとえ……妻であっても、厳罰処分も致し方なしの覚悟で、ジウを厳しく取り調べている。


(伯父ジウンが粛清された事による復讐心から起きた事件で、野獣狩りに出掛けた先であれだけ優しく親切に介抱してくれたのも、全てが仕組まれた罠で……俺を手懐け、誘惑してこの本丸御殿に何とか侵入して母久美子殺害の時期を狙っていた。クウウウウ(´;ω;`)ウゥゥ…😭何という卑劣な女!イヤ、それだけでは飽き足らず……隙あらば誘惑してジウ無しでは生きて行けない程に心と身体を奪い尽くし操って……夢中にさせて、とうとう子供まで宿してしまったのだ。アアアア~!恐ろしい女!本来ならば側室が妥当な所なのだが……?たとえ一般家庭と言えども出自も問題無しで、これだけの知性と美貌を兼ね備えた女性など滅多においそれとは現れない。アアアア——!本当にバカだった!ジウに溺れ切っていた俺は、正室にはこの女しか考えられない。完全に俺の心を奪って正妻の座に就き、母上殺害のチャンスを狙っていたのだな……?嗚呼……それでも正優から母を奪う事など俺には出来ない!それよりなにより俺自体がジウ無しでは絶対に生きては行けぬ!ウゥゥ( ノД`)ウゥゥ……😭どうしたら良いものか……)


 そして……人里離れた山奥に、極々数人の御付きの者を付けて、この本丸から追い出した。それでも本物の母久美子が黙っちゃいない。絶対ジウ殺害に動くことは明白だ。


 こんな裏切り者のジウでも惚れた弱みで、殺す事は出来なかった。愛する母上との溝が出来る事は明白なのに……。



 一方の木村も、また何故?久美子殺害の片棒を担ぐ事になったのか……?

 


 そこには想像も付かない裏事情が有る。誰もかれも……隙あらば(この国の権力と財力を我が物に!)そんな事を企てる意外な人物の存在が……。


 そこには…星日の忘れ形見の存在が有った。


 そのジフ王子には、全くと言って良いほど光が当たらなかったが?実は…非常に成績優秀な逸材。その王子ジフを王様にと目論んでいる者がいる。


 それこそ……満生よりも遥かに優秀な逸材を、埋もれさせる訳にはいかない。

 その人物とは……。

 


◆▽

 実は星日の姉の旦那さんで北朝鮮高官のトップである、この国の人脈、実力№1と目されている人物なのだが、生前の満生の父最高指導者星日には無くてはならない重要な右腕だった。


 星日も、このパク・ドユンを信頼しきって重要課題は、真っ先にドユンの意見を取り入れていた。パク・ドユンは才のある男で、星日亡き後の事も念頭に置いて着々と準備をしていた。


(あんな星日如きにこき使われて、俺が発案した意見も全て自分の手柄にして、美味しい所を全部持って行くあんな無能な男に、こき使われて終わるなんて真っ平御免だ!その為にもこの国の全てを今の内に把握しておかないと……)そしてチャンスは意外と早く訪れた。


 世襲制のこの国の為、どんなにあがいても王様にはなれない。だが…裏で自由自在に操る事は可能だ。


(この国の権力と財力を我が物に!)そしてシンボルとしての逸材が、予想以上に早く見つかった。


 その王子は、ごくごく一般家庭出身の北朝鮮美女軍団の一人で、数ある側室の中においても、さして目立つ存在では無かったリアと言う女性と星日の間に誕生した王子。


 まだ満正より5つも若い、そのジフ王子には光が当たらなかったが?非常に成績優秀な逸材。その王子ジフを王様にと目論んでいる。


 じゃ~?そのドユンが、今回の久美子2号殺しに、どんな関りが有るのかという事だ。


 実は英雄色を好むとはよく言ったものでこのドユン、星日がまだ存命中からこの久美子2号と愛人関係にあった。


 あれだけハーフでスタイル抜群な美人の久美子の、久美子2号に白羽の矢が立つぐらいだから相当な美人。


 勿論、顔は久美子には到底及ばないが、それでも綺麗な女性なのだ。まさか……ドユンまでが、反旗を翻して居るなど想像もつかなかった久美子。


 あれだけ忠実な男ドユンを星日と満正は親子共々信頼しきっている。それは……母久美子にしてもそうだ。


 ドユンは久美子2号とは妻の目を盗んで、今尚愛人関係が続いている。久美子の影武者候補として真っ先に愛人を押したのだった。


 そして…当然の事ながら……スタイル抜群な愛人は即、満場一致で久美子2号に選出させられた。



 ドユンが久美子2号に押した理由は、一にも二にも裏の女帝久美子一派の弱体化を狙ったスパイ活動だった。そして…久美子2号を満生と久美子に差し出した。


 元々運動神経の良かった久美子2号は、秘密裏に相手を襲う訓練や武器の命中率などの訓練を受けて送り込まれた。



 一方の木村は何故愛する久美子殺害に加担したのか?そこには驚愕の真実が隠されていた。


 実は…木村は以前ドユンの下で働いていた経緯が有る。勿論久美子2号がドユンの愛人である事も知っていた。


 そんな時に木村は、ハユン妃と満生の妻ジウが久美子殺害計画を実行に移す話をあちこちに散らばっている久美子一派のスパイから聞いた。そして…それは白頭山旅行の日の明け方に決行される事も分った。


 その為、丁度あの晩、秘密兵器製造工場に性能や完成度の視察の為に、木村も当然向かう予定だったが、久美子に危険が及んではと久美子に懇願して久美子邸に留まっていた。


 それでは何故あの夜久美子2号が久美子邸にいたのか?

 それは…当然ドユンの部下だった木村の事を、何の疑いもしない久美子2号影武者を呼び出す事は容易い。

「仕事が入ったので来てくれ」こう指示を出して呼び出した。


 そして…本物の久美子を非難させた。


 すり替えられたとは梅雨知らず…満生の妻ジウが後ろから一気に、久美子2号を殺害した。


 真夜中という事も有り、また…木村が見破られてはと思い注意には注意を、細心の注意を払い、ワザと部屋の電球を薄暗くしておいた事も有り、ジウは全く久美子すり替えには気付かなかった。

 

  こうして…久美子殺害の一報が知れ渡った。





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