第6話 ダンジョンに突入!

 ダンジョンの中は薄暗かった。

 中にマナと呼ばれるエネルギーが満ちているらしく、懐中電灯なしでも歩くことができた。

 湿った匂いと、かすかに何かが呻く声が聞こえる……


「よし。ここで離すか」

「スライムちゃん……お別れだね」


 階段を降りてすぐ、ひまりはボストンバックからスライムを取り出した。


「ぎゅるるる……」


 スライムは悲しげな声をあげた。


「スライムちゃん……元気でね」


 ひまりはスライムをぎゅうっと抱きしめた。

 スライムは名残惜しそうに、ひまりの胸に頬ずりする。

 本当にひまりの胸が好きだな、こいつは……


「じゃあね!」


 ひまりはスライムをそっと床に置いた。


「ぎゅるるるる!」


 スライムはまったく動かない。

 俺たちをじっと見つめている。


「スライムちゃん、私たちはお別れしないといけないの。寂しいけど仕方ないの」

「……ぎゅるるるるるるるるる!」


 スライムは大きな声で鳴くと、ロープみたいに身体を細長く伸ばした。


「きゃあ!」

「うわ!」


 スライムは俺たちの腕をつかんだ。


「ぎゅるるるるる!」


 スライムはぴょんぴょん飛び跳ねて、どんどんダンジョンの奥へ俺たちを引っ張っていく。

 すごい力だ。とてもFランクモンスターとは思えない。

 俺たちは為す術なくスライムに連れて行かれる。


「離せ!」


 俺はなんとかスライムを振りほどこうとするが、びくともしない。


「きゃあ! やめて!」


 ひまりは完全にパニック状態だ。

 クソ……俺の考えが甘かった。スライムはモンスターなんだ。人間はモンスターの敵だ。ダンジョンに戻れば当然、人間を襲う。なんでそんな簡単なことに気付かなかったんだ……


「ぎゅるるる!」


 スライムはダンジョンの壁に突っ込んで行った。


「うわああああ!」

「きゃああああ!」

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