第3話 スライムはJKの胸が大好き

 背後から悲鳴が聞こえた。

 俺はスマホを放り出して、リビングへ走った。


「どうした? 何があった?」


 俺がリビングに行くと、スライムがひまりの胸に飛びついていた。

 ひまりの豊かな膨らみに、スライムが吸いつくように貼りついている。


「あん……。はあはあ。ケイお兄ちゃん! 早く助けて!」


 胸のほうもだいぶ成長したなあ……おいおい、そんな場合じゃないだろう。

 俺はひまりに駆け寄って、スライムをひまりの胸から引き剥がした。


「いったい何なの? なんでスライムがここにいるの?」


 ひまりは両手で胸を抑えながら、俺を恨めしそうな目で見ている。


「本当にごめん。実は――」


 俺は昨日、スライムを拾った話をした。


「へえ……これがスライムなんだ」


 俺の背中に隠れながら、ひまりはスライムを見つめた。


「頭を触ってみなよ。ぷにぷにして気持ちいいから」

「え? 無理だよ。さっき襲われたし」


 ひまりはぶるんぶるんと激しく首を横に振った。


「怖くないからさ。ひまりちゃん、生き物好きだろ?」


 ひまりは生き物が好きだった。


 動物園に行けば、いつも閉園まで粘っていたし、ペットショップに行けば大喜びしていた。


「ほら、触ってみて。優しく触れば、スライムもきっと優しくしてくれるから」

「うん……」


 ひまりは恐る恐る俺の背中から出てきて、スライムに手を伸ばした。


「きゅるるる」

「きゃあ!」 


 スライムが鳴くと、さっとひまりは手を引っ込めた。


「大丈夫だよ。怖くない」

「……ケイお兄ちゃんも一緒に触って」

「俺も?」

「あたしだけじゃ……怖いから」


 ひまりは泣きそうな顔で俺を見ていた。


「わかった」


 俺はひまりの右手に触れた。白くて細い。

 ひまりは目をぎゅっと閉じた。


「行くぞ」


 俺はひまりの右手を、そっとスライムに当てた。


「あ……すっごく柔らかい。ぷにぷにしている。気持ちいい」

「きゅるるる!」


 スライムはひまりに頭を撫でられて、とても喜んでいた。


「こいつ、喜んでるよ」

「本当に?」

「本当だよ。顔が喜んでいるから」

「ケイお兄ちゃん、スライムの表情わかるの?」


 ひまりがクスリと笑った。


「やっと笑ったね」

「スライム、かわいいな」


 ひまりはスライムを抱きしめた。


「きゅるるるるるう」


 スライムはひまりの胸にすりつく。

 こいつ、ひまりの胸が大好きのようだ。

 絶対、性別はオスだな……


「すっかりひまりちゃんに懐いたみたいだね」

「うん!」


 ひまりが笑顔で俺に応えると、


 ――ピンポーン!

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