第5話

時は、6月30日の夕方6時50分頃であった。


場所は、房江ふさえの家族たちが暮らしている家の広間にて…


広間のテーブルには、白いお皿などがたくさん並んでいた。


ダイニングにいる房代ふさよは、ゆでたブタ肉のサラダを作っていた。


房江ふさえは、電話の応対をしていた。


電話は、半田市堀崎町はんだほりさきちょうで暮らしている房江ふさえの兄・涌井吉兵衛華代夫婦わくいきちべえはなよふうふからかかっていた。


吉兵衛きちべえ華代はなよは、起史たつし房代ふさよ伯父おじ伯母おばにあたる人である。


房江ふさえは、華代はなよから『明日(7月1日)の予定がどーのこーの…』と言われたので、ものすごく困っていた。


吉兵衛きちべえのオイゴ・森野勝もりのまさる(31歳)がウキウキしている…


まさるがウキウキしているから、明日(7月1日)に一席もうけてくれ…


華代はなよからそのように言われた房江ふさえは、ものすごくうんざりとした表情で『またか…』とつぶやいた。


まさるの両親は、仕事の関係で超多忙で休みが全くない…


休みが全くないから、家族と過ごす時間が全くない…


その関係で、まさる房江ふさえの家でごはんを食べさせてもらうなどのお世話になっていた…


まさるが小学校3年生の時、両親は海外へテンニンした…


両親は、今も海外のどこかにいる…


帰国のメドは、今も立っていない…


まさるは、愛知県内けんないの大学を卒業するまで房江ふさえの家族たちが暮らしている家にゲシュクしていた。


卒業後は、東京に本社がある社内恋愛推進会社の旅行代理店に就職したので家から離れた。


新人研修を終えたあと、初任地の名古屋へ再び戻った…


その後は、房江ふさえの家族たちが暮らす家の近くにあるマンスリーアパートに移り住んだ。


房江ふさえ吉兵衛きちべえたちは、まさるに対してそろそろ身をかためてほしいと思っていた。


いつになったら、嫁さんをもらうのだ…


いつになったら自立するのだ…


いつになったら…


お礼を言いに来るのだ…


…………


…と思っていた。


そう思っていた時に、まさるがウキウキしていると言う知らせを聞いた。


房江ふさえは、まさるがウキウキしているから一席もうけたいと思ってはいたが、予定が合わないのでものすごく困っていた。


房江ふさえは、ものすごく困った声で華代はなよに言うた。


ねえさん!!7月1日はうちの都合が悪いと言うてるのに、なんで分かってくれないのよ!!一席もうけてくれと言うのであれば、レストランや料亭に電話してください!!…予約の電話ができない…なんでしないのよ!?」


受話器ごしにいる華代はなよは、ものすごく困った声で言うた。


房江ふさえさんに無理なお願いをして悪かったと思ってるわよ…」


房江ふさえは、ものすごく怒った声で華代はなよに言うた。


「そう思うのであれば、レストランに予約入れてよ!!」


華代はなよは、ものすごく困った声で言うた。


「できたらそうしたいわよ…だけど、費用を多く使いたくないから房江ふさえさんに頼んでいるのよ…」


房江ふさえは、ものすごく怒った声で華代はなよに言うた。


ねえさん!!まさるのことを心配するよりも、基次もとつぐ(42歳)と基晴もとはる(40歳)はどーするのよ!!…ふたりとも、いつになったら嫁さんをもらうのよ!?」


房江ふさえから怒鳴られた華代はなよは、ものすごく困った声で『またその話…』と言うた。


房江ふさえは、ものすごく怒った声で華代はなよに言うた。


ねえさん!!40代の独身男性は結婚の条件が悪くなると繰り返して言うてるのよ!!まだそれが分からないのね!!」


受話器ごしにいる華代はなよは、ものすごく困った声で『分かってるわよ〜』と言うたあとものすごく見苦しいいいわけを言うた。


「分かってるわよ〜…だけど、いま基次もとつぐ厄年やくなのよ…」

厄年やくどしだから…といいわけ言わないでよ!!」

「いいわけ言うてないわよ…」

「いつになったら動くのよ!!」

「だから、厄年やくが明けたら動くわよ…」

「もういいわよ!!基次もとつぐ基晴もとはるに嫁さんは必要ないと言うた以上は責任もちなさいよ!!…うちも起史たつしの結婚問題と房代ふさよの結婚問題で頭をものすごく痛めているのよ!!うちらの気持ちが分からないのに、わかるよなんて言わないでよ!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた房江ふさえは、電話をガチャーンと切ったあと両手で髪の毛をぐしゃぐしゃとかきむしった。


この時、ダイニングにいた房代ふさよがサラダが入っている大きめの容器を食卓に持って来た。


房代ふさよは、テーブルの真ん中にサラダが入っている大きめの容器を置いた。


その後、房江ふさえはあつかましい声で房代ふさよに言うた。


房代ふさよ!!」

「なによぅ〜」

「あした、まさるがうちに来るから…」

「なんでまさるがうちに来るのよ〜」

まさるがウキウキしているから一席もうけてといよんよ!!」

「イヤ!!拒否するわよ!!」

房代ふさよ!!」


房江ふさえから怒鳴られた房代ふさよは、ひねた声で言うた。


「あした…ノッツェ(結婚相談の店)に行くの…」

「結婚相談の店に行くって…」

「うちは…自分ひとりだけで結婚相手を探すから!!」

「困るわよ〜」

「おかーさん!!うちは子どもじゃないのよ!!なんで分かってくれないのよ!!」

「分かってるわよ〜…だけど、結婚は…」


房江ふさえは、気が狂いそうな声で房代ふさよに言うたので、房代ふさよはものすごく怒った声で言い返した。


「おかーさんこそいいかげんにしてよ!!まさるばかりをえこひいきしたことが原因で御兄おにいとうちが不幸になったことがまだ分からないの!?」

「分かってるわよ〜…まさるのためになにもかもガマンさせたことはもうしわけないと思っているわよ…」

「もうしわけないと思うのであれば、うちの思う通りにさせてよ!!」

「分かってるわよ〜…それよりもおかーさんはお腹がすいているのよ…早くサラダをお皿に入れてよ…」


思い切りブチ切れた房代ふさよは、作ったばかりのサラダをゴミ袋にすてた。


房江ふさえは、ものすごく困った声で房代ふさよに言うた。


房代ふさよ!!なんでサラダをすてるのよ!?ひろいなさい!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた房代ふさよは、かたいものを投げつけた。


かたいものは、広間に置かれている瀬戸焼やきものの花びんに直撃した。


かたいものに当たった花びんは、こなごなにくだけちった。


房江ふさえは、ものすごく困った表情であたりをキョロキョロと見渡した。


日付が変わって、7月1日の深夜1時半頃であった。


またところ変わって、さかえの中心地にある繁華街にて…


起史たつしは、仕事を終えたあとまっすぐ家に帰らずにここでブラブラと過ごしていた。


色とりどりのネオンや看板の灯りや街灯がいとうが灯る通りに、若いカップルさんたちが往来していた。


通りのスピーカーから、島津ゆたかさんの歌で『ホテル』が流れていた。


起史たつしは、ラブラブモードのカップルさんたちを見るのがものすごくイヤなので目をそらしていた。


この時であった。


チャラい格好をしているポン引きのニイチャンが起史たつしに声をかけた。


「ニイチャン、お安くしておくから寄っていかない?」


ポン引きのニイチャンの誘いを受けた起史たつしは、その近くにあるキャバクラガールズバーへ行った。


ところ変わって、キャバクラガールズバーの店内にて…


ボックス席に座っている起史たつしは、和風のアニメコスチューム姿のホステスを相手に酒をのんだ。


ホステスは、さびしげな表情を浮かべている起史たつしをなぐさめた。


その後、起史たつしホステスと一緒にホステスが暮らしているマンションへ行った。


起史たつしは、ホステスが暮らしている部屋で夜明けのコーヒーをのんだあとマンションから直接職場へ出勤した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る