第22話 勇者ね(中編)

 The Inner Darkness  //L/nc/l/t// Heimdall


I have read a book on justice.

Justice? I have to laugh.

I wonder if you can talk about justice.

It is so hard. It is too hard.

No, you can not.

Because I am the only one who knows justice.

Do you want to hear my story?

It is okay, well...

I say "Justice is Justice!"

Yes, justice is our way.

It is about us helping someone and saving someone else.

And not fight, not kill.

If he were wrong, he would lose himself with desire.

Now, let us save him from his desire.

That is what justice is all about.

What is it all for you?




「……へぇ……あいつ、こういう物を……哲学者だな」


「何やってんだい、ジェロム君! 着いたよ、ニーベルンゲンに」


 港の向こうには町へのびているのか、道がつづいている。


「馬車でもあればすぐなのに……」


「文句いうな!」


 フェイに続いてトール、フレイア、ジナイダ、ジェロムの順に降り、道をたどって行く。


 だが、しばらく歩いてみればそこは森の中。気にせず進んでみたが、辺りは木が生えているだけ。


 少し相談してもう少し歩く。やがて道はとぎれて……見るとホビットの男が一人、立っている。


「あれ、あんた達、町に行かなかったのか?」


「町なんてどこにも見当たりませんでしたよ」


「へっ……やっぱり分からなかったか。町はもう通り過ぎちまったよ」


「どこだよ!」


「あんた達のすぐ後ろさ。幻覚の結界を張ってあってね。誰にも見えないよ」


「ふざけやがって……からかってんのか!? 見えねえのにどうやって宿見付けりゃ……」


「ちょっと落ち着いて下さいよ。結界は魔物に襲われないように張ってるんですから……町に入るにはね……もう一度後ろを向いて下さい」


「後ろ……あ? いつの間に町が……」


「ここで振り向けば見えるようになってるのさ、昼間はね」


「すると夜は……そうか、魔物が来るんで結界は破れないと」


「そういうこった。それより、この国に人間のあんた達が何しに来たんだい? 商売じゃなさそうだけど……」


「フッ……俺は悪と戦う勇者ジェロム。ちょっと装備を整えに来たのさ」


「勇者ジェロムね……立派な鎧持ってるくせに。さてはこの国の魔法の品が目当てかい?」


「まあね。アタシも一応、海賊なんでね。そういう物には興味あったりするわけ」


「……ゾクですか。ま、いいか。おっと、忘れてたがオレはグラント。あんた達、この町に来るの、もちろん初めてだろ? 案内してやろうか?」


「いいですよね?」


「姫様がいいって言うんなら……よし、頼むよ」


「頼む……って言ったよな? 案内料! キャンセルはなしだよ」


 グラントと名乗るこのホビット、粘りに粘って最終的には320ポードを要求した。


「わかったよ、払う。でも本当に宿代、割引してくれるんだろうな?」


「当たり前よ。『黄昏館』の主人とは昔からのダチだからよ」

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