第10話 決意



 空の色合いが淡く紫に変わり始める頃、僕たちはテラスのテーブル席に腰を落ち着けながらポップコーンを食べていた。


 「混んでは居たけど色々と乗れたね」


 「うん、メリーゴーランドが僕は好きだったかな」


 「私はお化け屋敷が楽しかったな〜」


 僕の唇と眼を交互に見ながら雨音が思いふけるようにニヤついついる。

 そういえば出会った当初から雨音は唇を見つつ話すことが多い気がする。気のせいだろうか?


 「にやついてるけどどうしたの?」


 「いあ〜あの姿を思い出しすとニヤニヤしちゃう」


 「忘れよう雨音……」


 「ビクビクしながら私の影に隠れて進む颯斗くん」


 「お化けは苦手なの!」


 「可愛いかったな〜」


 お化け屋敷でのみっともない姿は忘れて欲しい。自業自得ではあるけど。    

 僕は雨音の前でカッコつける為にお化け屋敷に入ろうと提案したのだから。


 入る前の雨音は「こ、怖いよ〜」とか言っていたのに、お化け屋敷を出る頃には「全然怖くなかった」なんてケロッとしてるんだもの。頼りになります。



 「そろそろ暗くなりそうだし、あと二つくらいアトラクションに乗って遊園地を出ようか」


 「そしたらお互いに一つずつ乗りたい物をあげよう!私はスプラッシュコースター、颯斗くんは何乗りたい?」


 「内緒」


 「ええ、内緒とかいじわる〜」


 「まあまあ、最後のお楽しみという事で」


 教えて教えてと騒ぐ雨音に有無を言わさず手を引きテラスを後にした。


 僕は最初から決めていたのだ。遊園地の最後に乗りたいアトラクションを。

 


 遡る事前日の夜──


 「みなとみらいのデートスポット特集か」


 僕は雨音とのデートプランを考える為にネットで情報収集をしていた。そんな時にある一つのブログにたどり着く。

 

 「はなはなブログ?二十年前のブログじゃん、どうしてこんな古いブログに」


 探しに探し過ぎて、どうやらだいぶ昔のページにアクセスしていたらしい。『みなとみらいの遊園地』というタイトルのブログ記事を流し見で眺めていると。

 

 彼に告白されて付き合う事になった♡うれぴ〜♡


 という一文と観覧車内から撮ったであろう画素の悪い写真がアップされていた。


 どこかで見たことあるような人物な気がするけど、画素が悪い上に夜景がバックの写真だった為顔ははっきりと分からなかった。


 ただそれよりもある所に視線を奪われた。


 カップルの後ろに広がる景色。


 みなとみらいを一望出来る夜景。


 その景色を見て僕は心に決めた。


 「この場所で告白をしよう」──





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