第3話

場所は変わらず、‪”‬あやなに‪”‬ 内、《Kawana》のパーティにて。


『へぇ。2人が《すかい》さんを助けて。』


『そうなんだ〜!暑くて動けなくなっちゃって、お姉さんたちが助けてくれたの!』


そう語る《すかい》の声色は、喜と楽に満ちていた。


『偉いじゃん2人とも。』


「偉い、かあ。…当たり前のことじゃないかなあ…」


『…ん。流石に道端で倒れてる人を素通りできるほど、ウチら薄情じゃないし。』


かわなと古音は、昼間の出来事に一切の驕りを見せていない。


『それをできることが偉いんだよ。』


さも当たり前のように、その顛末を語った。


『じゃあじゃあ、早速狩り行こ〜!どの素材が欲しいとかある〜?』


かわなは、キャラクター強化画面を眺め、足りない素材を確かめる。


「あ、わたしこの ‪”‬高級研磨剤‪”‬ 欲しいな!」


『…何に使うん?』


『河童の強化アイテムだよ。』


『…ああ。頭のお皿磨くんね。キャラによって違うんだ。』


「すねこすりの強化アイテムはなんなの?」


『えっと…マタタビ。』


犬なのか猫なのか。そこがハッキリしない ‪”‬すねこすり‪”‬ 問題に、終止符を打ちたいかわな。


「やっぱり猫なんだ?」


猫要素が強くなり、ようやくその終止符を打つことができた、と思ったのも束の間。


『…と、骨。』


犬要素が追加された。


「あれ?分からなくなっちゃった。犬なのか猫なのか…」


妖怪とは、見た人、感じた人によってイメージが左右される。


伝承の多い妖怪ほど、多数の解釈があるものなのだ。


『確か、伝承的には猫の姿なんだけどね。犬の姿のイメージも結構強いから。』


『どっちともとれるように作られてるんだよ〜!どっちも可愛いからんだって!』


少し、《Shizuka》は引っかかる。


『…?捨てきれなかった?』


『あっ…いや!なんでもないよ〜!』


ひとつの疑問が浮かんだが、無粋なことか、と敢えて口を噤むことにした。


「そういえば、《すかい》ちゃんの種族って何なの?」


『ボク?ボクのは ‪”‬天狗‪”‬ だよ〜!空飛べてカッコイイでしょ〜!』


高下駄、団扇に高い鼻。


スタイリッシュにまとまったスタイルは、どこか中二心を擽るものがある。


『うんうん。天狗、カッコイイし強いよね。私も最初コレと迷ったよ。』


『…天狗の強化アイテムはなんなん?』


『えっと‪…しんびやく?』


しんびやく、しんびやく。


3人はそれぞれ漢字を当てはめるが…


「しんびやく???」


『…分かんな。』


『…聞き慣れないね。訓読みできたりする?』


『うん!えっと…‪ ‪”‬のびはなぐすり‪”‬ !』


のび…伸。はな…鼻。ぐすり…薬。


伸鼻薬。


『「伸鼻薬!?」』


『…鼻が伸びるのは強化なん‪…?』




~~~~~~




舞台は海沿いへと移り、水平線に滲む藍色の空際が、4人を妖しく出迎える。


「この辺りに次のボスが出てくるんだよね?」


『そうだよ〜!』


《レイドボス出現まで:あと4:00…》


『…出現までちょっと時間あるね。』


『じゃあここら辺で、各々の種族の役割、ボス討伐の連携のおさらいしとこう。はいみんな、返事は?』


『「はーい!」』


威勢のいい返事がふたつと。


『…はーい。』


控えめな返事がひとつ。


『《Su-Ma》、声小っさいよー。』


『はーい…!…っ恥ず。』


『っふふ。ありがとう、ノってくれて。』


なんだかんだノってあげる自分を優しいと思うのは驕傲だろうか、と古音は少し訝しんだ。


『よし。じゃあまずデバッファー、‪”‬すねこすり‪” 使い、《Su-Ma》。ボスの足元に擦り寄って、デバフ掛けるのと、コンボで転倒を誘ってね。』


『…ん。』


小さな犬(猫)が、クルクルと回りだす。


『で次。《すかい》。‪”‬天狗‪”‬ 使いの《すかい》には、ボスのタゲ取り+翻弄と、ザコ敵の一掃を任せるね。』


『任されたよ〜!』


背の高い天狗が風を起こし、辺りの砂を舞い上げる。


『で、今回のフィールドは水辺だから、メインアタッカーは ‪”‬河童‪”‬ 使いの《Kawana》。水中から、バンバンお皿投げちゃって。』


「おっけー!水鉄砲でも攻撃するよ!」


細身の河童が、(少し気持ちの悪い)ダンスモーションを披露する。


『私の ‪”‬がしゃどくろ‪”‬ は、砂浜からデバフに合わせてデカいの1発叩き込むから、《すかい》には足元に来る敵を海側へ飛ばしてほしい。』


大きな骸が、雄叫びをあげて辺りの木々をざわめかせる。


『分かった!突風だね〜!』


『そうそう。‪”‬がしゃどくろ‪”‬ は攻撃範囲広いから、海側に飛ばしてくれれば、ボスとまとめて蹴散らせるしね。』


『じゃあ《Shizuka》は、《Su-Ma》がデバフ掛けてから60フレーム以降に技を溜め始めてね!今回のレイドボス、デバフ受けたら一瞬無敵になるから〜!』


『了解。…今回のレイド今日の昼からなのに、もうそこまで分かってるんだ。』


『あっ…うん!やり込んでるからねボク!』


『…よし。あと10秒で出てくる。』


「よーし!じゃあえっと………これでいこう! ‪”‬かしすす隊‪”‬ 、抜錨!」


耳慣れない字列を発するかわな。


『かしすす隊?』


『…ウチらの頭文字?』


「そう!今考えた!」


『かしすす隊!ボクもそう呼んでいい!?』


「うん!でもちょっとダサいよね!」


『…発案者がそれ言うん。』


『ダサくないよ〜!カッコイイ!』


「えぇ?そうかなあ〜!」


『あっ《Kawana》《すかい》、前、前!ボスの攻撃来てるよ!』


『「えっ?あ〜!!!!」』


出現したボスの大振りが、波打ち際から螺旋状に広がっていく。


河童と天狗が大きく巻き込まれて、空高くへと飛んでいった。


『あちゃー…』


『…油断大敵やね。』




~~~~~~~~





轟音ともとれる断末魔を叫び、レイドボスは海の底へと沈んでいく。


『いやー…強敵だったね。』


「ね!でもすごい狩りやすかった!」


『…《すかい》のおかげ。ボスの足元から上手い具合にザコ敵弾き飛ばしてくれたから、デバフすごい掛けやすかった。』


『えへへ〜!もっと褒めてくれてもいいよ〜!』


「すごいね《すかい》ちゃん!」


『やるね、《すかい》。』


『えへへへへ〜‪。』


「ボスいなくなったら、海だいぶ静かになっちゃった。」


ボスを取り巻いていたザコ敵たちも姿を消したため、辺りに響くのは波のせせらぎだけ。


静かな海が、そこにはあった。


『さっきまで敵で溢れてたのにね。…って、おお。夜の海、結構いい景色かも。』


『…この世界、朝日が昇らないんだっけ。神様のせいで。』


『そうだよ〜!‪夜にしか生きられない妖怪たちのために、月読命が世界を夜で固定したの!』


『《すかい》、設定のほうも詳しいんだ。相当やり込んでる?』


『定期的なデバッグも任されてるし、総プレイ時間はすっごい時間かも〜!純粋にこのゲームが好きだからプレイしてるのもあるけどね〜!』


『へぇ。デバッグもしてるん。』


『うん!定期的にしとかないと、バグとかがすぐに直せないから!』


「すごい。まるでゲーム作ってる側の人みたいな考え方だね!」


《すかい》が、一瞬言葉を詰まらせる。


『作っ…あっ、うん!そうだね〜!』


『…ね、《すかい》。きみさ、もしかして…このゲームの制作に関わってたりする?』


『えっ─』


『無粋な質問でごめんね。どうにもさっきから、作ってる側のふるまいが垣間見えてさ。』


『………』


『さっきのレイドボスだって、隅々まで熟知してたじゃん。まるで、1から作ったみたいな感じにさ。』


『………そうだよって言ったら、お姉さんたちはどう思う?』


『えっ?すっごい嬉しい。』


『………え?』


『私、このゲームの大ファンだからね。サービス初期からやってる古参ユーザーだよ。』


『…そうなの?』


『だってこのゲーム楽しいし。開発側もこのゲームを愛してるのが伝わってくるし、嫌いになるわけがないね。』


『…そっか。』


『ここまでハマったソシャゲも久しぶりだし、そんなソシャゲの開発側の人と仲良くなれたのは…結構、いや、だいぶ嬉しい。』


「《すかい》ちゃんは、このゲームのどの部分作ったの!?」


『人型キャラのモーション全般だよ。あとパリィと回避のモーション…!』


「回避!回避のモーション作ったのって《すかい》ちゃんなんだ!」


『…うん。』


「すごーい!まだ中学生なのに!」


『中学生なの?』


『うん。あれ?ボクお姉さんたちに言ったっけ?』


「あっいや…なんとなく!なんとなくそのくらいかなーって!」


『…中学生なん。…すごいね。ウチ高校生だけど、ゲームの作り方なんて全然知らんし。』


『私も。大学生なのにさ。』


『えっあ、あの…ボクのこと、恐くない?気味悪くない?』


『『「なんで?」』』


『だって…ボクまだ中学生だよ。ゲームのプログラム書いてる中学生なんて、あんまりいないでしょ。他の子とちょっと違って、気味悪くない?』


先程まで朗らかだった声色は、徐々に暗くなっていく。


『『「………」』』


『お母さんが言うんだ。…日夜パソコンに引っ付いて独りでいるボクを、周りの子と違う。おかしい、気持ち悪い…って。』


少し上擦った声が続き、鼻水をすする音が響く。


「そう…だったんだ。」


『《すかい》。いや、ここは敬称を使おうかな。《すかい》さん。』


小さな咳払いの後、《Shizuka》は語りだす。


『私はね、このゲームが大好きなんだ。』


『…うん。』


『こんなに自由度が高くて、何やっても楽しくて。四六時中遊んでられるようなゲーム、他に出会ったことない。』


『…うん。』


『きみは、私の人生を彩ってくれてるんだよ。…人の人生を鮮やかに彩られる人がおかしい、気持ち悪いだなんて、私は絶対思わない。』


『…怒ってくれてるの?』


『結構怒ってる。まだきみの顔も知らないけどね。』


「…わたしも。」


『…ウチも。』


『………』


『…《すかい》さん。きみの味方はここにいる。きみはここにいてもいい。だから、どうか負けないでほしいんだ。何か嫌なことがあったら、いつでも話聞くからさ。』


『そっか……そっか〜…!』


『ボクたちの作ったゲームで、こんなにも楽しんでくれてる人がいるんだ〜…!嬉しい。嬉しいよ〜…』


上擦った声は、涙声へと変わっていく。


『…うん、ありがとう《Shizuka》。ボク、ここにいてもいいんだ…!おかしくないんだ…!気持ち悪く…ないんだ!』


『うん。当たり前だけど、おかしくもないし気持ち悪くもない。至って普通の良い子だよ、きみは。』


『そっか!…ねえ、ボク、まだここにいてもいい?』


『できればいつまでもいて欲しい。‪”‬あやなに‪”‬ 談義に花を咲かせるために。』


『…ウチら歴浅いもんね。歴深い人がいてた方が話し盛り上がるし。』


「私なんてまだ始めて3日だし…」


『…えっへへ〜…あ、じゃあボク、《Shizuka》にとっておきの教えちゃおっかなあ〜。』


『とっておき!?』


急に上がった声量に、少し音が割れる。


『…すご、めっちゃ食いつくし。姉ポジのクールキャラじゃないんアンタ。』


『このゲームの開発者が同じ通話ルームにいるんだよ。流石の私もテンション上がるよ?』


『…かわな、これどのくらいの高さのテンションなん。』


「んー…買い忘れた先月の月刊誌が、在庫処分で安く売ってた時くらいかな…?」


『…相当高いね。』


「なんで分かるの?」


まさか得られると思っていなかった共感を得たかわなは、少し驚いていた。




~~~~~~




『──は、──なんだよ〜!』


天狗が、大きく風を起こす。


『へぇ…!それ言って大丈夫なやつ?』


それに呼応するように、がしゃどくろがラッシュを叩き込む。


『あ、大丈夫じゃなかったかも〜!』


がしゃどくろが、次の攻撃を溜める。


『OK、忘れるね。』


そのうちに、天狗は中ボスを拘束して─


『ありがと〜!』


一撃必殺。骨のパンチが中ボスの頭蓋を砕いた。


「すごい…雑談しながら中ボス葬ってる…」


『…息ぴったりじゃん。』


『ここ結構景色いいんだけど、ザコ敵が鬱陶しいね。落ち着いて見てられないや。』


ボスの取り巻きが消えて一定時間が経つと、そのエリアに本来いるはずの敵が湧いてくる。


静かだった波打ち際も、ものの5分で修羅と化した。


『あ、ならいい場所あるよ〜!その敵片したら着いてきて〜!おっと危ない!』


河童の頭上に降りかかる火の粉を、舞った風が吹き飛ばす。


「わ!ありがとう《すかい》ちゃん!」


『お易い御用だよ〜!』




~~~~~~




先程の場所から少し離れた、似た景色の場所へと辿り着いた。


水平線を眺めると、あと数分で日が昇りそうな空が目に映る。


『ここだよ〜!』


『「おお〜!!」』


『…綺麗じゃん。』


『なんて言うんだっけ〜!‪”‬皮タレ串‪”‬ …みたいな…時間を表す言葉なんだけど…』


『‪”‬彼は誰時‪”‬ かな。明け方の時間のことだね。』


「お腹空いてきちゃった。」


『それ!完全に日は昇らないけど、こういう感じの空は眺めることができるんだ〜!』


『…夕暮れも見れるん?』


『うん!確かシナリオライターさんが言ってたのは…… ‪”‬タソガレドキ‪”‬ ?からさっきの ‪”‬彼は誰時‪”‬ までの時間を行ったり来たりしてるんだって!』


黄昏時から、彼は誰時までを繰り返す。


夜に生きる、夜にしか生きられない妖怪たちは、この空を見て何を思うのだろうか。


『へぇ…いいね。オシャレ。やっぱり好きだよこのゲーム。』


『えへへ〜。ありがと!シナリオライターさんにも伝えとくよ!』


『貴重な体験すぎる…ありがとうございます…』


「カシちゃんが敬語になっちゃった!」


『…結構限界化しとらん…?』


『サービス当初からやってるんだもん。限界化くらいは許してほしい…』




~~~~~~




聞こえるのは、砂浜に打ちつける波の音だけ。


獣どもの叫喚は、ここには一切届かない。


「う〜ん…いい景色だね…!」


『ね。いつまでも見てられる。』


『…《すかい》、ここの砂浜、敵湧かないん?』


『うん!ここは景色を見てほしいから、敵が湧かないようになってるの!』


『…へぇ。』


『『『「………」』』』


鳥が飛んだ。高く喚声を上げながら、明けない空に向かって強く羽ばたいていく。


「…海行きたい!」


『…どしたん急に。』


「いや、最近全然海行ってないな〜って思ってさ。」


足元までを海に浸からせながら、河童は無邪気な提案をする。


『…近々行く?海。』


すねこすりが、塩水へと足を浸ける。


「うん!行きたい!」


『ボクも行きたい!ねえねえ、一緒に行ってもいい!?』


天狗が飛沫を上げながら、波打ち際を闊歩する。


「もちろん!」


『…じゃあ私は、保護者として着いていこうかな。かわなと《すかい》が心配だし。』


大きな骸が立ち上がり、大きな波を起こして塩水に浸かりこんだ。


「大丈夫だよ!こんなに泳げるし!ほら!」


クロール・背泳ぎ・平泳ぎ。


河童の十八番の水泳は、塩水の中でも映えるものだ。


『河童は泳げるけど、かわなは泳げないでしょ。私も着いていくからね。』


『ボクは泳げないから、浅瀬か砂浜で遊んどくね〜!』


『うん。泳げないならそうして。因みに私も泳げない…というかよく水に流されるから、あんまり深くまではいけないね。』


『流されるの〜?』


『うん。私小さいからね。』


『小さいの?』


『うん。結構。』


『…ウチも泳げない。浮き輪持っていってもいい?』


「わたしも持っていくよ!」


『っふふ。…というか、私ら4人全員泳げないんだね。』


「ね!4人いて4人泳げないのって珍しいよね。」


4人集まれば1人くらいは泳げる人がいるものだが、ここの4人は惜しくもカナヅチ集団。


砂浜遊びが妥当なところ。


『じゃあじゃあ、何して遊ぶ〜?ビーチフラッグ?砂のお城建てる?焼きそば食べる?』


『ビーチバレーとかも良さそうだね。他に何かある人?』


「貝殻集め!」


『採用。』


骨ばった指が鳴る。


『…スイカ割り。』


『採用。』


少し風が起きた。


『クラゲ探し〜!』


『採用。危ないから触るのは木の棒とかを介してね。』


『うん!』


「泳がなくても結構楽しめそうだね!」


『あ、そうだ。海行くっていっても私、《すかい》と古音の住所知らないや。かわなと私は近所だけど…』


『…ウチはかわなの隣の市。3駅ぶんしか離れてないよ。』


『《すかい》は?どこ住みなの?』


『えーと…あれ、ボクの住んでる市の名前ってなんだっけ〜。生徒手帳に書いてあったかな?えっと、確かポケットの中に…』


ガサゴソと、ポケットをまさぐる音が聞こえてくる。


「あ、生徒手帳…」


『あれぇ〜?無い!入れといたはずなんだけどな〜…』


『…《すかい》。アンタ今日ソレ、公園に落としていってなかった?』


『え!?ほんと!?全然気づかなかった〜!』


『…ウチが拾ってるから安心しな。』


『あ、じゃあ《Su-Ma》さん!見て大丈夫だから、ボクの住所教えて!』


『ん。─町─番地…あ、ウチの家の近くだ。これ、ウチと同じ中学校の生徒手帳だし。』


『そうなの〜!?』


「そうなんだ!近くで良かったね!」


『よし。これで場所問題は解決だね。うちの市に海浜公園あるから、そこに行こうか。』


『「は〜い!!」』


『…どこ集合にする?』


『ボクその海浜公園?の場所知らないから、《Su-Ma》さんと先に合流したいな〜!』


『ん。いーよ。じゃあウチらはこの中学校集合で。』


「古音ちゃんは海浜公園の場所分かる?」


『分かる。かわなとカシちゃんは?』


『「分かるよ。」』


『…ん。じゃあ2人とは現地集合で。』


『フルネ?カシチャン?』


『ああ。ごめんね《すかい》。これ私たちの本名なの。…いや、‪”‬カシちゃん‪”‬ はあだ名か。』


『…改めて自己紹介しとく?』


「うん!しとこう!」


ん゙ん。と、小さな咳払いが響く。


「まずわたしだね!私の名前はかわな!ユーザーネームの《Kawana》と読み方は一緒だよ!」


河童がダンスモーション(ver.2)をとる。


『…ウチは古音。ユーザーネームは苗字由来だから、名前呼び、古音でいーよ。』


すねこすりが鳴く。


『そうなんだ!ボクはそら!《すかい》でも天でも、どっちで呼んでくれてもいいよ〜!』


天狗が語る。


『じゃあ最後、あだ名とかがややこしい私。カシちゃんって2人には呼ばれてるけど、本名はしずか。かわなと同じで、ユーザーネームと読みは一緒だよ。カシちゃん、玄。どっちで呼んでくれても大丈夫だからね。』


骨が鳴る。


『分かった〜!じゃあ改めてよろしくね!かわねえ、古ねえ、玄ねえ!』


『…ねえ。姉か。』


『リズム良いね。』


「あ、そうだ!結局海行くのいつにする?私はいつでも大丈夫!補習もう終わったし!」


『…ウチも。今日ので補習終わりだし、特に出かける用事もないし。』


『私も大丈夫。天は?』


『全然いつでも大丈夫だよ〜!今週の作業は週の初めに終わらせたから、もうやらなきゃいけないことはないし!』


『偉いね。…よし。じゃあ今週末にしよっか。土曜日のほうが空いてるかな。』


『…今日が水曜日だから…3日後。』


「よーし!じゃあ3日後に向けて、各自体調を調えておくように!」


『は〜い!』『はーい。』『…はーい。』




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狗風いぬかぜ そら

年齢:13歳(中学2年生)

身長:152cm

性別:女

髪色/髪型:空色/雑なピッグテール


[特徴]

・齢13にしてゲーム開発に携わる天才プログラマー。

・母子家庭育ちで、現在はひとり暮らし。

・天才故に母親から疎まれ、孤独感に苛まれる日々を送っていた。

・でももう大丈夫。心を許せる友人ができたので。




【予定帳】


「えへへ〜。3日後かあ。予定帳に書いとこ〜!」


「あ、ペンの色変えなきゃ!友達との予定は青字で書くんだった!」


「…えへへ。」


「…青字で書くの、初めてだ〜。」


「…〜っ!楽しみ〜!」


「あ、買い物メモも作らなきゃ!」


「何がいるだろ。水着でしょ〜?それから浮き輪に─」

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