第1話 西堂新の独白/すべての始まりの始まり
―4月10日/午前7時00分 東京某所 住宅街―
7:00AMのアラームで目が覚めた。意識は覚醒しても目はまだ開かず、耳と手だけを頼りにアラームを止める。目を開けると19年間慣れ親しんだ自宅の自室が目に入り、そこでようやく自分が起きたことを自覚する。ベットから出て自室のドアを開け、階段を下りてリビングに向かうと、すでに両親が起きて朝食が食卓に並んでいた。
「おはよう!もうご飯できてるから」
「ぁぁ...ぉはょぅ」
まだ喉は覚醒していないようだ。ゆっくりと椅子に座り、スマホをいじりながらなんとなく朝食に手を付け始める。紅茶とブルーライトが脳の覚醒を促し、ようやく真の意味で目が覚めてきた。ササっと朝食を平らげ、私服に着替え、リュックを背負って準備完了。玄関を開けて1日を開始する。車庫にあるバイクに乗って家を出発した。
西堂新は、愛用のバイクに乗り、都内の一般道の風を受けていた。今年から東京都内にあるT大学に通うことになった、ピチピチの大学一年生である。つまり彼もまた受験という荒波を乗り越え、将来への希望を胸にこれからの人生を歩むはずの人間である。
―しかし彼には夢がない。
『趣味』はある。特撮が大好きだ。そこからバイクに乗るのも好きになったし、生涯にわたっての趣味になるであろう。ゲームも、マンガも、好きな作品なんていくらでもある。ただ...それは未来につながる『ナニカ』ではないのだ。ゆえに彼の心はどこか空虚であった。
―4月10日/午前8時32分 東京某所 T大学―
さて、自宅からバイクで約10分、西堂はT大学の駐車場に着いた。バイクを止めて、大学構内へと向かう西堂の背中を何者かが叩く。
「おはよー!!相変わらず、ボサァッとしたツラね。ちゃんと寝てる?」
「いつも通りの真面目な顔だが?そっちが朝っぱらから元気過ぎんじゃねぇの」
彼女の名は『東城遥』、西堂の幼馴染にして同級生、まあよくあるやつだ。なんだかんだ10数年の付き合いになるが、今でも彼の良き友人の一人である。
「...でも大学生活始まって立った数日よ?大体『ウキウキが止まんな~い!』って感じじゃないの?」
「いやまあそりゃ楽しみではあるが...まあ大丈夫だって」
「ん~、そう?じゃいいけどさ。あんた今度の日曜空いてる?」
「あ~...まあ多分大丈夫だけど、なんで?」(荷物持ちだな)
「渋谷行かない?気になるお店あんのよ」
「まあ...大丈夫かな、OK了解」(やっぱりな、めんどくせ)
「じゃあ日曜、正午にハチ公前ね!」
そういって東城は足早に去っていった。東城の遊びに付き合う、というのは結構メジャーなイベントで、面倒くさいがもう慣れっこだ。それに、そんなにどうしてもやりたい事がないのも事実ではあるので、西堂としても嫌というわけではないのだった。
―4月12日/午後1時30分 渋谷 ハチ公前広場―
「...なあ、まだどっか行くのか?もう疲れたんだが」
「ええ?早くない?ちゃんと運動してんの?」
「お前は何も持ってないからな!」
「ははっ!冗談冗談~!怒んなって、それじゃあそこでアイス買いましょ、奢ったがるからさ」
「いや...それより荷物持ってほしいんだが...」
「アイスいらないの?」
「いや食うよ、勿論」
「じゃあ早くいこ!早く!」
「はいはい」
2人がアイスクリーム屋に向かおうとスクランブル交差点に向かった時、二人は奇妙な光景を目にした。横断歩道の最前列、普段は人一人が通る隙間もないような場所に、誰もいない空間ができているのだ。
「どうしたんだろ、だれか倒れてんのかな?」
「ちょっと見てくるわ」
西堂は人の群れをかき分けて空間の内部が見える場所へ。すると中には誰もいないわけではなく、一人の女性がうずくまってしゃがんでいた。東城の予想も当たらずとも遠からず、「調子が悪いんだろう」と思った。ふと周りを見渡すと、この光景を見た人々はみな女性に声話かけようか迷っている様子だった。一人が思いついたように人込みを抜け駅のほうに向かう。
(なるほど、駅の前にある交番に警官を呼びに行ったのか。じゃあ俺は...)
意を決して女性に声をかける。正直言って理由の半分は幼稚な好奇心が半分であった。
だからこそ、俺は今その時の行動を、死ぬほど後悔している。
「あの...大丈夫ですか?具合が悪いんですか?」
「.............ゥ、ア」
「え?すいません聞き取れなくて...」
西堂が女性の言葉を聞きなおそうとしたその時...グルッ!!と女性の首がこちらを向き、その奇怪な風貌が明らかになった。
血走った目...
牙だらけの歯...
そして...
「青い...光⁉」
4月12日/午後1時32分 渋谷 スクランブル交差点にて、未確認のGHOSTが発生。ここまでが俺のここまでの記憶。もしかしたら走馬灯、になるのかもしれない。
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