番外編(SS)

冬の狸はひたすら可愛い(行雲視点)

 季節が夏から秋、秋から冬へと移り変わった今、寒がりの蒼葉は一等可愛いと行雲は思う。


「旦那様〜、寒くて凍ってしまいそうです」


 今日も部屋に来るなり、ストーブではなく行雲の背中にぴとりとくっついてきた。


 どの季節の蒼葉も可愛く捨て難いが、何かにつけてくっついてくる冬の彼女は特別愛らしい。


 変化に失敗しているわけでもないのに、狸の耳と尻尾が見え、行雲は無性に頭を撫でたい衝動に駆られるのだった。


 久しぶりに会った惣田に「頭でも打った?」と引かれるくらいに行雲は蒼葉のことを溺愛している。


 しかし、彼女の前では常に冷静な夫でいたい。

 心と表情を無にしてから言葉を返す。


「もう用事は済んだのか?」

「はい。あとは夏帆さんたちにお願いしてきました」

「なら寝るか」


 行雲は分厚い経営学の本を閉じ、欠伸する彼女の手を引いて寝床まで連れていく。


 彼女は分厚い掛け布団の中に身を滑り込ませると、全く警戒することなく、当然のように行雲にくっついてきた。


「他の男にはこうして近づくなよ」

「ふふ、もふもふの毛を触らせるのはもう旦那様だけですよ」


 恐らく何も分かってない答えが返ってくる。


「旦那様、今日は疲れたので狸姿で寝ても良いですか?」

「ああ」


 ぽんっ、と狸に戻った蒼葉は行雲の上によじ登り、甘えるようにして首元に顔を埋めてくる。


 冬の狸。これがまたふさふさのぽてぽてで愛らしいのだ。


(おやすみなさい、旦那様)

「おやすみ、蒼葉」


 ふわふわの毛を撫で、癒されながら行雲も微睡の中に落ちていく。

 明日の仕事のことを考えると気が重いが、きっとどうにかなるだろう。




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ここまで読んでくださりありがとうございました! 


連載中、今日は読者ゼロでは……と焦ったりもしましたが、皆様の⭐︎やフォロー、応援コメントを励みに書き切ることができました。(目標の⭐︎100達成、嬉しいです!)


カクヨムコン〆ぎりぎりに仕上げたので本文に後書きを入れることができず、この場を借りて改めてお礼申し上げます。


カクヨムコンに参加されていた皆様はお疲れ様でした。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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