自由の選択肢

僕は3日前に受け取った『13薬』を学習机の引出しに仕舞い登校の準備をする。

一階の居間に降りると両親と今年から社会人の兄が朝食を囲っていた。

「おはよう」

挨拶をするも兄だけが軽く返しただけで両親は無反応だった。

父は新聞を見ながら黙々とトーストを口に運ぶ。

母は食事に手を付けず『13薬』を手に取り眺めている。


僕は食事を摂らずコーヒーだけを胃に流し込んで家を出た。

電車に乗るといつもなら立っているだけでも重労働だが今日は吊革につかまりスマホを触れるくらいには空いていた。

駅に降りるととある宗教団体がチラシを配っていた。

ちらりと見るとやはり『13薬』についてだった。

その日のホームルームでは43人のクラスで3人欠席していた。


今日も僕は『13薬』を引出しに仕舞い登校する。

居間には兄だけがテレビを見ながら朝食を摂っていた。

「おはよう」

返事はなかった。

電車に乗ると平日のラッシュアワーだというのに悠々と椅子に座ることができた。

駅には相変わらず宗教団体が居り、昨日以上に熱心にチラシ配りと演説をしていた。

その日のホームルームでは24人と担当教師が欠席していた。


今日は『13薬』をポケットに入れ登校する。

居間には誰もいなかった。

駅で電車を待つも一向に来る気配がなかった。

仕方なく歩いて学校まで行く。

駅にはいつもの宗教団体はいなかった。

教室に入ると5人の生徒が机で眠っていた。

僕は自席に着きホームルームを待つも誰も来ることはなかった。


普段入れない屋上へ行くとポケットから『13薬』を取り出す。

手に取り眺めると青く半透明なカプセルはひどく美しいものに思えた。

「これも自由」

僕は『13薬』を口に含んだ。

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自由の国 杠明 @akira-yuzuriha

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