悪夢の新生活

いよいよ新しい高校生活が始まる。


新しい制服に身を包み、胸元のリボンを触った。


新しい友達ができるか少し心配だったけど

今まで通りなら大丈夫でしょって思った。



そして、1年のクラス表に目を通した。


私は、

1年B組のクラスになった。


やはり見渡す限りまったく知らない人ばかり。



ここで吃驚したのが

私の学校からは私1人だけで、

他は

他校のクラスメイト同士仲良くしていてもう友達の関係が出来ていたのだ。


そりゃそうだよね。

中学も同じ人がほとんどだもん。



そんなことがあって、私だけ取り残されたような気がして

無理に笑って近くにいた子に話しかけた。


無理に笑ったから心がキューっと苦しくなった。




こんなはずじゃなかった…



こんなはずじゃなかったんだよ……



本当に………


そんなこんなで

話しかけた子と友達になった。

友達のような感じ…なのかもしれない。


ただ、ひとりで居たくなかったから友達と思いたかったのかも知れない。



でも、その子はそっけない返事しかしなかった。

だんだん辛くなった。

何を話せばいいか分からなった。


たとえばこの間観たDVDの話とか、バラエティーの歌手の誰が好きとか。

こんな写真があったよ。って話とかした気がするけど、


どれも、

そっけない返事しかされなかった。



私は、その子が話したDVDドラマの話には興味がなかった。


そのドラマ自体観ていなかったし、第一出演者が好きではなかったから。

好みが合わないな…って思っていた……。



バラエティーの歌手の話だって、その子に合わせてただけ。

そこまで好きじゃなかったんだ。


本当はアイドルが好きだった。

でも言えなかった。



写真を見せたら、暇だね

だなんて言われたりもした。


笑ってごまかしたけど

本当はすごく苦しかった。


どうしてそんな事言うのって

悲しくなったし、怒りが積み重なった。



今思えば、まだ入学したばかりだったし、

人見知りだったのかも知れない。

会って遊んだこともなかったし。

これからゆっくりその子を

知ったり

徐々に仲良くなればよかったのに。

最初っからスピード上げすぎてたんだよね。

きっと…



もう会うことはないんだけどね…。



そして、だんだん、

人と話すのに自信がなくなっていったんだ。


そして、お昼になった。

教室で皆、机をつけて一緒に食べる者や、窓に腰かける者、

地べたに座る者や違うクラスに行く者各々だ。



私は、その子の机で椅子を持ってきてお弁当を広げた。


相変わらずそっけない返事ばかりだ。


話すこともなくなって無言になった。



味がしない…

この無言の時間なんなんだ…

お弁当を残した。



そんな日々が過ぎていった。

毎日、教室に着いたら

その子におはようって言って

席に着く。


そして、授業が始まり休み時間。

そしてお昼。

毎日同じように、その子の机で椅子を持ってきてお弁当を広げる。

相変わらず何も話さず食べる。

そんなお昼が楽しいワケがない。




そして、決定的だったのが

いつの日かのお昼だった。



教室でまた同じようにお弁当を広げ食べているとき

そんなに話したことのない女子生徒が、私たちのところを通りかかり、

その子のお弁当豪華~っと言ったのだ。


私には嫌味ったらしく聞こえたんだ。

私は少食だから少な目のお弁当をお願いしていたけれど、

その時は、私のお弁当がひどいみたいな感じに聞こえたんだ。

せっかくママが愛情を込めて作ってくれたお弁当をけなされたと思ったから。

すごく苦しかったんだ。



だけど、その子に、私は、笑顔で本当に豪華だね。

って言ったんだ。



本当は、今にも泣きそうな顔で笑顔はきっと引きつってたと思う。



そんな事があってから、食欲が無くなっていった。


そして、ママを傷つけないために、

私は、お弁当ではなく、コンビニのパンを食べるようになった。



それでも、完食することはなく

残ったパンはいつもオヤツとなった。



そしていつも家に着くと、部屋のベッドに入り

ボーッと天井を見た。



どうしてこんなっちゃったんだろう。



体の中にある空気を全部吐き出すように

フーッと息を吐き出した。


そして、学校が始まると

妙に体が硬直するのだった。

なんとも言えない恐怖感でここから抜け出したかった。



本当の私はこんなんじゃない。

本当は、明るくて笑顔が多い奴で、傷ついたり、落ち込んだりなんてしない奴なんだよ。



そう…ずっと思ってた。


でも違った……。



今にでも崩れ落ちそうな

崩れて粉々になって消えてしまいそうな感じで

もう私は

そんなに弱くなってた。



学校にはちゃんと友達って言えるような人も居なかった。




そんなあるとき

あの事が起こったんだ。




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