第8話

 翌日。ツユは部屋に侵入したミーナによって叩き起こされた。

「おっきろ〜!」

「うわぁぁぁ?!?!」

どさり、とベッドから転がり落ちるツユ。

「いよいよ明日、入隊式だからね!今日は新入隊員全員で準備だよ!」

珍しく上機嫌でロリポップキャンディを口に入れ舐めるミーナ。

「へ…?」

「ほらほら早く早く〜!!」

ぐいぐい急かすミーナ。

「ちょ、待って下さいよ…!せめて着替えさせて下さい!」

「なら、これに着替えて!」

じゃじゃーん!とミーナが出したのは…

「軍服?」

「正しくは軍服ロリィタ、だよ?ほら早く着替えて準備して!朝食、食いっぱぐれるよ!」

「わっ、分かりました!」

大急ぎで着替えるツユ。ミーナ?ミーナは…にこにこ顔で出ていかなかった為、ツユはもう諦めた。

「着替えましたよ」

「よし!なら早く大講堂へGo!Go!!」


 「遅いぞ、ミーナ。アキ」

「ご、ごめん…」

「ごっめーん!」

てへぺろ、とミーナは巫山戯た。

「…もう他の新入隊員は揃っている。早く椅子を並べろ」

ちらりとアキが扉を開き、中を見た。

ツユ、ミーナも視線を移す。

「え…」

ツユは人数の多さに驚愕した。

「ザッと…二百人は居るよ?!」

「最初はこんくらいだ」

「え?」

「此処から減るんだよね〜ニシシッ」

悪戯が成功した子供のように笑うミーナ。

「最初は…?減る…??どういう事……?」

(嫌な予感がする…)

「今期の新入隊員はどの位の実力、運があるんだろうな」

アキも笑う。まるで、毎回何人もの新入隊員が居なくなるかのような言い方に、ツユは戸惑いを感じた。

〈終了!各新入隊員、隊員達は持ち場の作業が終わり次第食堂にて食事を摂るように〉

『はい!!』

「今日のご飯は何かな〜?デラックスチョコレートマカロンパフェ食べよ!んふふ、楽しみ〜!」


 「「「いただきます」」」

「ん〜!!やはり今日はデラックスチョコレートマカロンパフェで大成功だったな〜」

ぱくぱくとミーナはパフェを食べ進める。

…ミーナの顔より遥かに大きいパフェを十分足らずで食べたのは余談である。

「お前よく朝からそんなモン食べれるな…」

「すご…」

ミーナにドン引きするアキに軽く尊敬の念を見せるツユ。

アキは秋刀魚の塩焼き定食、ツユは鮭の雑炊である。

「……」

「?新入りちゃん、どうしたの?」

食事の手を止め、暗い顔で俯くツユ。

「…私、百合を傷付けちゃった…」

「取引先のか?」

「はい…」

「ん〜…私は別に気にしなくて良いと思うよ?」

「え?」

ツユは思わぬ返答に顔を上げ、ミーナを見た。

ミーナは、いつ注文したのか豚骨ラーメン大蒜にんにく増々ましまし葱・もやしトッピングを啜りながら言った。

「だって…んぐ、旨!今から知ればイイじゃん?」

「今…から……?」

「そ!だって、今回の事で新入りちゃんは一つ取引先の社長の事がわかった、て考えれるでしょ?」

ずるずるずる、と勢い良く麺を啜るミーナ。

「ご馳走様でした!は〜、満腹満腹」

「…ご馳走様」

「えっ、早くない?!」

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