第23話 混ぜるな危険


「お前、何でこんな所に居るんだポチ…」


「わわぁぁぁぁぁーーー」


怖い、怖い、怖い…


『俺が一声かければ1万のヤンキーが集まるんだぜ』


『無敵…ばかじゃねーの、あんなのワンパンだぜ』


数々の伝説がある。


俺は片端から、火炎瓶を投げていた。


だが、それは全部かわされていて…『火が付かない』


「ポチ…馬鹿じゃねーの、そんな小さな火炎瓶じゃ直撃でもしなければ、火傷もしねーよ! おらよーーっ!」


「ごぼっぶはっうえぇぇぇぇーー」


俺の腹にカイザーナックル入りのパンチがめり込む。


ヤバい…こんなのを喰らったら…此奴に勝てても…俺は死ぬ。


『勝てても?』


何故、そう思う…


聖夜が怖い…その反面…なにかが引っかかる。


俺は再び火炎瓶に火をつけて投げた。


あたった…だが無情にも液体は掛かったが火はつかない。


「あぶねーな…だがよくもやってくれたな」


そう言いながら俺に近づき今度は顔面を殴られた…


だが、何処か気が抜けたパンチだ。


幸いな事にカイザーナックルを嵌めた方では無かった。


「まさに一方的な虐殺…ウサギの牙はやはり野獣には届かなったか…クソガキにすら届かないウサギはこのまま死んでしまうのか…お姉さん的には…此処からの逆転を希望しますが…」


アナウンスを止めた…気が付いたみたいだ。


やはり…カリスマヤンキーなんて言っても只のハッタリだ。


1万のヤンキー?


果たしてこの近隣にそんな数のヤンキーは居ない。


漫画のキャラクター…戦えるわけねーよな。


此奴がSやKより強い訳が無い。


Kなら恐らく今の2回の攻撃で、俺の内臓は飛び出している。


Sみたいに笑いながら死体の女を犯せる位ぶっ飛んでも無い。


『多分此奴はこの会場で一番弱い』


俺は刃渡り5.5cmのナイフを3つリングでつないだ物を指と指の間に刃が出る様に握りしめた。


右、左…簡単に言えば、即席で作った3本の爪みたいな物だ。


そのまま俺は聖夜の所に走り出す。


「刃物迄出しやがって、もう容赦しねーーえっ」


聖夜の足がぐらついた。


俺はそのまま聖夜のお腹を殴った…刺さったのを確認して左右に力一杯揺さぶる。


「グハァ…や、やめろーーーっ痛ぇぇぇぇぇぇーーうわぁぁぁーー」


そりゃ痛いよなリアル切腹だもん…


痛さで此奴のカイザーナックルが手から落ちた。


ラッキー…俺はそれを反対側の手に嵌め…聖夜の顔を殴る…


狙うは鼻…だが暴れているせいで上手くあたらないが…それでも顔面の何処かにあたって…その都度聖夜は悲鳴を上げていた。


「うわぁぁぁぁぁーーやめてくれ…あっ」


悲鳴を上げてもお構いなしに殴っていると…「ごぎっ」と鈍い音がした。


頭が割れてピンクの脳味噌の一部が見えた。


「勝者泰明―――っ後で私のサインつきブロマイドは控室に届けちゃう…お姉さん感動したから握手もつけちゃうよーー」


何とか勝った…


燃える火炎瓶の中に、実は『混ぜると危険』という表記の洗剤2種類を混ぜた瓶を混ぜておいた。


当然、塩素ガスが発生する。


見破られる前に決着がついて良かった。


多分、2回戦目は…流石にこんな簡単には行かないよな。









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