第17話 天使明日香②


「泰明愛している…う~んっチュ」


明日香は隙さえあれば、肉体関係に持ち込もうとしてくる。


だけど、断ると寂しそうなのでキスだけは許す事にした。


AVを見ておかずにしていた俺が言うな…と言われそうだが、これは違う気がする。


それにまだ、会って直ぐなのにこんなに好かれる理由がわからない。


「俺…人殺しだよ…知っているんだろう? 俺が好かれる理由が解らない」


「別に知らない人が何人死のうが私には関係ないかな…大体人間なんて殆どゴミだから…」


人間がゴミ、その気持ちは俺には痛いほど解る。


俺も明日香ほどじゃないが…虐められた経験がある。


勇気を出して助けた女の子はいじめる側に回った。


多分、俺は彼奴を助けなければ、虐められる側に成らなかった筈だ。


もし、こうなると解っていたら…躊躇なく見捨てた筈だ。


親も教師も皆が俺を見捨てた…同感だ。


だが、それなら…幾ら嫌な奴でも躊躇なく殺した。


俺もゴミだ…


「それを言うなら、俺だってゴミかも知れないよ」


「う~ん…他の人には解らないけど、私にとって泰明はゴミじゃないよ? 誰よりも優しくて、素敵な男の子だもん」


「いや、なぜそうなる?」


幾らなんでも可笑しい。


何かの罠か…それともチョロいのか…


「大体の男は獣だからね『私の事好き』『愛している』そんな事言っても所詮は犯したいだけの奴ばかりだったよ…沢山の男に犯されそうになった私を助けもせず、一緒に犯した奴もいたし…ホストは金金金だし、AVの仕事も我慢していてたのに…さらなる地獄に落とされたのよ…ほうらゴミみたいな奴ばかりでしょう? 泰明は私の清純な感じのAVしか見て無いかも知れないけど、ユアシャークの専属AV嬢になってからは…本当に地獄だったわよ、80人に犯されるAVや、ホームレスを裸で誘惑する企画物に、酷いのになると食糞までさせられたの…うふふっ本物の便器…監禁状態でもう『物』扱い、本当に人じゃないのよ…監禁状態でAV会社の人間なら誰もが抱ける…物としても大切にして貰えない便器…それが私…そこから逃げ出して…これよ…もう人生終わってるわ」


やっぱり聞かない方が良かったな。


「大変だったのは解る…だが、それと俺を好きになるのは別だろう」


「解らないかな~そんなゴミみたいな私を凄く大切にしてくれるじゃない?洋服だって買ってくれて着せてくれたわ」


「パンツを履かせてないけどな」


「それは、別に変な意味じゃないでしょう? そうしないとペットシーツに排泄出来ないからじゃない…それに…そのぺっとシーツにしたおしっこやうんちも嫌な顔しないで片付けてくれるじゃない…普通はできないよ」


「仕方ないだろう…出来ないんだから俺がするしかないじゃないか」


「私の事馬鹿にしているの? 私の髪を綺麗に洗ってくれて梳かしてくれて、カットまでしてくれたし…体も綺麗に洗ってくれて…美味しい料理をわざわざ咀嚼して食べさせてくれる…しかも私が食べ終わってから自分の食事をする…」


「それがどうかしたのか?」


「アンタ馬鹿――っ、それの何処に優しさが無いのかな…それに何時でも抱いて良いっていうのに、色々してあげるって言うのに…そういうのは『好きになってからで良い』なんて…何処に好かれない要素があるのかな?」


「人として当たり前だろう」


「なんで泰明が虐められていたのか解らない…」


「俺も解らない」


「全く…もう…もう良いわ、そうね…献身的に介護してくれたから好きになった…それで納得して…」


「解った…」


「それじゃ、早速エッチしようか? 天使明日香が…してあげる!」


雌猫のポーズっていうんだよな…これ。


「それはまだ良いよ…もっと仲良くなってからで」


「ハァ~本当に泰明は私のファンだったのかな? この悩殺ポーズでなんで食いつかないのよ…自信無くすわよ!」


「なぁ、俺は1人ボッチで明日香も1人ボッチ…時間は沢山あるんだ急ぐ必要はないよ…お互いにな」


「うん、そうだね…解った」


誰かが傍にいる…今の俺にはそれだけで充分だ。


◆◆◆


この部屋に置いてあったスマホがなった。


着信者は『神代』になっている。


無料でこんな良い生活をさせて貰える訳がない。


一体、何をさせられるんだ…きっと碌なもんじゃ無いな。


だが、出ない訳にいかない。


「はい泰明です」


きっとまた地獄が始まる。





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