まだ許せていない

わたしの特別な場所

殺したい人がいた。


かつては優しかった恋人だ。

瞬きする間に人を貶め、蔑む最低な人間になっていた。


ハラスメントの意味もよく知らなかった私は、恋人を殺さねば終わらないと思っていた。


真っ暗な部屋で画面にかじりつく。

何とかしてください。


そうして見つけたのは、自宅から2時間ほどの場所にある小さな神社だった。

どんな後ろめたい願いも聞いてくれる、神様。


道中は、不思議と静かだった。

電車には人のようなものが乗っていた。

どれも私とは別世界の、関係のないところで生きているもののようだった。


しとしと降る雨に、傘をさして歩く。


誰ともすれ違わずにたどり着いた神社は、昼間でも薄暗かった。

最低限のスペースだけ確保されているようで、一人でお参りするのがやっとだ。


境内に足を踏み入れる。

塗れた地面を踏みつける音しか聞こえない。


もう雨に濡れても構わない。

傘を閉じ、絵馬をかける。


「××が凄惨な死を迎えますように。家族もどうか不幸になりますように。」

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