第6話私鋳銭




検索の間で又も気絶して6時間も経過してた。

注意深く、望んだ積もりだったのに・・・


紙には、織田信長や朝倉義景の検索は、黒く塗り潰されて解読不可と書かれている。

ああ、今考えればもっともなことだ。

次に起きることが分かってしまうと、なにもかもカオスになりかねない。

ああ、やってられない気分だ。


神の御心なのか、悪戯いたずらなのか・・・


どこもかしこもあれはダメ、これはダメって・・・

徳川家康     ダメ

越中一向一揆   ダメ

本願寺の戦国時代はダメダメだ   



紙の末尾に、これがあった。


尾小屋鉱山

石川県小松市尾小屋町

産出物:銅、鉛、亜鉛




中村甚五が、俺が服を着替えているのに話しかけてくるんだよねーー。


「そんなボロ服を着て旅に出られるのですか・・・いつ頃お戻りですか・・・」


ああ、小姑こじゅとかよ。


「そうだな・・・8日かな」


「護衛を付けましょう」


「いやいや、強いの分かってるよね。連れを連れて行くとめちゃくちゃ遅くなるけどいいのかな」


「それはいけません」


荷物や金は、アイテムボックスの中だから気楽なもんだ。

中村甚五の呼び止める声を無視して、三言寺を出た。


おおお、自分自身で走っているのに凄い走りだぞ。

50キロは出てるかも。

険しい山も楽らくに走れるし疲れもないのがいい。


それにしても、この時代の地図って当てにならないよなーー。

小学生が描いた地図と同じレベルだ。



山で玄米のおにぎりを喰ってる最中に、「ウーゥ、ウーゥ」と唸る声がする。

俺はピーンときた。やはり狼だ。

この狼はバカだな~ぁ。俺の強さを分かってない。


あっちこっちから襲ってきた狼を、バッタ、バッタと斬り殺したぜ。

絶滅した日本狼を殺してしまったが、ま~あいいか・・・

ここでは、うじゃうじゃ生きてるから・・・

そして、山で野宿。



2日目の朝、頭がビンビンと冴える。山の神の導きなのか・・・


俺の土地勘があっちだと命令。

はやる気持ちを抑えながら走り続ける。



「あったぞ!!」


めちゃくちゃ土魔法で掘って、錬金術で銅、鉛、亜鉛を取りだす。

ついでに金山で金も取った。

もう笑いが止まらない。


アイテムボックスの底なしにも呆れながら回収。





「ただいまー」


俺は、三言寺に戻って来た。


「中村、この辺の皆を呼び集めろ。遠くの者は呼ばなくていいから。後で手紙でも書いて知らせておいてね」


「ははー」


もう、行ってしまったのか、まだ言うことがあったのに・・・




雪がしんしんと降っているのに、なぜ家族連れで来てるんだよ。

寺は、人で溢れ返っているよ。追い返すにはしのびない。


「よく聞いてくれ。拙僧せっそうは、金山と銅山を発見してきた。金山は、質的に良くないがなんとか金を取りだせるだろう。それよりも銅山は、大いに期待出来る埋蔵量だ。それで皆を呼んだのは、採掘を頼みたい。賃金も払う。一番言いたいのは、安全第一で採掘してほしい」


もう、人の騒ぐ声で煩くてありゃしない。

そんでもって、喜んで採掘することになったよ。


そして、数人を残して帰ってもらった。

残ったのは、中村甚五、田吾作じいさん、服部半蔵、稲葉歳三。


「いいか、銅で銭を作ろうと思う」


「それは、いけない事では・・・足利幕府が黙ってはいないかと・・・」


「半蔵は、伊賀に居ただけに分かっているようだが、まあ見破ることはできまい。そもそも銭の数が少な過ぎるのがダメなんだよ。世に悪銭あくせん贋金にせがねが普通に出回って経済を回してるのが現状であって、これでいいのか・・・幕府も銭がないなら作れって」


田吾作じいさんは、懐の銭袋をだしてジャランとぶちまけた。


「半分は悪銭で、それでも使うしかない。三言さまの言う通りです。ついていきます」


「悪い行いではないと拙僧を信じてやってくれないか・・・それで稲葉を責任者としてやって貰いたい」


「某にですか・・・しかし、製造方法は分かりかねますが」


「それは教えるから大丈夫だ」


「知っているのですか」


「まあ簡単だよ。銭を型に鋳型を造り、どろどろに溶かした銅を流し込んで冷ましたら鋳型から取りだせば出来上がりだね」


「そんなに簡単に出来るのでしょうか」


「鋳型の土が重要なんだよね。固からず柔らかずが基本だから、すでに作っておいたよ」


木箱からじゃじゃやーと寛永通宝が団扇うちわに広がってるのを見せる。

最初に手に取って見ていたのは、中村だ。


「なんと、このような物が中々な物ですな」


「まだまだあるから見て見て」


木箱からじゃんじゃん出して見せる。


「こんな風に出来上がるから、寛永通宝だけを切れば完成だよ。鉄などで作って銅メッキなんかしないから安心してね」


「成る程、恐れ入りました」


「こっちの土も見て」


ズズズーと土が入った木箱を押出す。


「これが鋳型に使うのですか・・・」


まだまだピーンときてない。


「これを見てくれ」


石膏型鋳造せっこうがたちゅぞうで作成した原型を見せる。

これで作った銭は、砂型に比べて表面のざらつきが小さく、型の合わせ目がないから、後処理が簡単になるだよ。


もう石膏型鋳造の方が人気だ。


「これが銭になると思うと感無量じゃな」


中村、そんなに感動したのか、銅の量だけ銭が増えるから仕方ない部分はあるからな。


そんな皆を見ながら、懐からビンを取り出す。

緑青ろくしょうの色が鮮やかでキレイで神秘にあふれている。


銭の代名詞は、銅を酸化させて発生する青さびだ。

それを真似た塗料だが、見破るのも無理だと思う。

これを塗った寛永通宝は完璧すぎる。


あ、ビンが錬金術で作れるなら、ガラス製品も・・・



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