#13.5 決意の表れ




 あんみつくんはランコと友達になって私も会話出来る様になり一人ぼっちじゃなくなって、私の憧れていた『一人ぼっちでも堂々と胸を張っていたあんみつくん』とは少し違ってたけど、でも、今日のあんみつくんはとても男らしくて、恰好良かった。


 興味や憧れとはまた別の感情が湧いてきた。

 『あんみつくんとずっと一緒に居たい』という感情。

 

 だからなんとか勇気を出して「友達になりたい」と伝えたかった。

 でも、やっぱり自分からは言えなかった。

 どんどん家が近づいて、家の前まで来てから漸く言えたのが「また明日」だけ。


 私としてはこれでも頑張ったよね。

 今日は色々あったし、明日また頑張ればいいよね。

 そう思いながらウチの玄関に向かおうとすると、あんみつくんが私に向かって「ありがとう」と言ってくれた。


 私は何もお礼を言われるようなことはしていない。

 むしろ、お礼を言わないといけないのは私の方だった。


 そして更にあんみつくんは自己紹介を始め、私の名前を訊ねて来た。 


 それで何となくだけど、あんみつくんの気持ちが分かった。

 あんみつくんはずっと一人ぼっちで過ごしてきた。

 私にはランコが居たけど、あんみつくんは本当にずっと一人だった。

 きっと、あんみつくんの言う「ありがとう」は、「そんな自分と一緒に帰ってくれて、ありがとう」と言いたかったんじゃないかと思った。


 そう思うと、あんみつくんはずっと寂しかったんじゃないかと思えた。

 私は自分で周りを拒絶して一人になっていたけど、あんみつくんは周りに拒絶されていたことが、きっと寂しかったんじゃないかと思えた。


 だから、今度は自然と言えた。


「高校でも同じクラスで嬉しい」

「今日から友達でいい」

「ミヤビでいい。さん、いらない」







 あんみつくんと友達になれた運命の日から私は変わった。

 あんみつくんが寂しく無いように、友達の私がずっと傍に居ると決意した。

 朝の登校を一緒に行くと決めて駅で待ち伏せして、学校に着いてからも教室まで一緒に行くためにトイレに寄ったあんみつくんを待ち、教室に入る時も一緒だった。


 だけど、またトラブルが起きた。

 1学期にしつこく言い寄って来た男子が2学期になってもやって来た。

 名前も知らないし不愉快極まりないのでずっと無視してきたけど、1学期の時よりも更に馴れ馴れしさがパワーアップしてて、今朝折角あんみつくんと一緒の登校が出来て気分が良かったのに、台無しにされた。


 沸々と怒りが湧いてきて、教室だけど構わず爆発させて潰してやろうかと思い始めた時に、別の人から声を掛けられた。


 直ぐにあんみつくんの声だと分かり、びっくりして振り向くと、私に向かって文庫本を差し出していた。

 それで「助けに来てくれた」と直ぐに分かった。


 そこからのあんみつくんは、昨日私を庇ってくれた時以上に恰好良かった。

 ずっと一人ぼっちで人付き合いが苦手なあんみつくんが、冷静な態度で相手の男子を追い払ってくれた。だけどかなり無理をしてたんだと思う。緊張していたのか物凄い量の汗をかいていた。


 そこがあんみつくんの恰好良いところだ。

 私の為に、慣れないことでも苦手なことでも、体を張って助けようとしてくれる。

 そんなあんみつくんを見てしまうと、もう嬉しくて仕方なかった。

 あれだけ他人に興味が無く、関わりを持つことを避けて来たのに、あんみつくんに対してはそんな気持ちは全く湧かなくなっていた。むしろ、私もあんみつくんの為に何かしたいと思う程だった。

 



 因みに、あんみつくんは私のタオルがあんみつくんの汗で臭くなることを気にしていたけど、昨日借りたタオルを家に持ち帰って実際に臭いを嗅いでみたら、全然気にならなかった。

 あんみつくんの汗は、あんみつくんが気にするほど臭く無いのは、既に確認済みだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る