第37話 ヴァルメイロのイベント参加・下

「お待たせしました、幸運にも今日この席に来られた皆さんにご紹介します。闇を裂く四つ星です」


 そういうともう一度歓声が上がった。軽く200人くらいはいるだろう。

 店の天井からは赤地に銀糸で闇を裂く四つ星の紋章が刺繍されたフラッグが何枚も垂れ下がっている


「……なんじゃこりゃ」


 いくらなんでも大げさすぎないか、これは。


「君達はトップアタッカーだよ、当然だろう」

「それに、あなたたちは伝説の系譜を継ぐものだもの」


 カイエンとイシュテルが言ってくれるが。

 

「伝説って?」

「知らなかったのかい?RTAには原型がある。かつてスピードランというスタイルのアタックをするものが居たんだよ。

彼が死んでその系譜は絶えたと思われていたが、ここに伝説の継承者が生き残っていたわけさ」


 カイエンが言うが……そいつはどうやってRTAをやっていたんだろう。

 謎だ。


「来たぞ!」

「ミッドガルド最速パーティ!」

「待ってた!」


「次はアレクサンドラ図書館跡に行ってくれ!頼むぜ!」

「いつも見てるぞ!」

「最高に面白い!今後もいいアタック見せてくれよ!」


 歓声と要望が周りから降り注いできた。

 見ると中には俺たちのコスチュームと同じような赤のロングコート風の服を着ている奴までいる


「あれは?」

「客から要望が多数あってね、我々で作った」


 エドワードがしれっと教えてくれる。レプリカユニフォーム売ってる感じなのか。


「勿論ギルドには手数料を払っているよ。君たちの報酬にも反映されているはずだ」

「なるほど」


 勝手にファングッズ的なものを作ってはいるが、その辺の筋は通しているらしい。

 日本でやったら海賊版スレスレだとは思うが、この辺の権利関係の曖昧さというか適当さが異世界って感じではある。


「アトリ、サインしてくれ!」

「あなたのファンなの!」

「あんたはガンナーの星だよ!」


「アトリはボクの恋人なんだからね」


 殊更にアピールするようにマリーが手を組んでくるが。


「マリーチカちゃん、こっち向いて」

「アストンさん!先頭を走る姿、いつも見てますよ!」

「生オードリー!可愛い!」


「配信より全然いいよな。やっぱ実物だよ」

「来た甲斐あったぜ」


 周りからそれぞれに声援が飛ぶ。広いホールに声と拍手と足踏みの音が木霊のように響いた。

 声に圧倒されるようにアストンたちが固まるが


「皆に応えてあげてくれ。これもヒーローの仕事だぞ」


 カイエンが言う。

 遠慮がちにアストンたちが手を振ると周りから大声援が上がった。


 アルフェリズでもこういうことはあるが桁違いだな。

 アストンたちが歓声の大きさに戸惑ったように周りを見回した。


「一応言っておくが、これでもまだ少ない方だぞ。このパーティの抽選の倍率は20倍近かった」


 エドワードが言ってくれるが、そんなに多いのかよ。


「君たちは一流のアタッカーだからね。貴族の名を知らないやつはいても、トップアタッカーの名を知らないやつはいない」


 カイエン達が言う。

 正直言うともっとこじんまりしたイベントを想像していたんだが、どうやらそう言うレベルではないっぽいな。


 その後は店内で立食パーティになった。

 出てきた料理も何もかもが豪華だったし、周囲から質問攻めにあって4人とも疲れ果てた。


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