第23話 称号獲得
7回目の配信はメリッサの地下牢獄。
ゾンビ系のモンスターとパワータイプのモンスターが多いダンジョンだ。
敵が大きくて見栄えがするからバトルを見せるにはいいダンジョンではあるが、内部構造が複雑で最短ルートが長い。
RTAをする分にはルートを覚えるのが面倒ではある。
ただ、敵が大きい分、上手く戦闘を避けて行けばスリリングな展開になって受けがいい。
鉄の檻が並ぶおどろおどろしいステージビジュアルと暗闇と白く差し込む照明の対比が綺麗なこともあって、RTA配信でも人気のステージだ。
記録のレベルも高い。
しかも今回は王都ヴァルメイロの探索者の書庫亭での初配信だ。ミスるわけにはいかない。
ルートを忘れてないか少し不安だったが、特に問題なく10階層25分の目標をクリアできた。
◆
「おめでとうございます。今回も大成功でしたね」
そう言ってギルドの係員が今回の配信報酬の目録を渡してくれた。
今回も800000越えだ。
それに今回から首都ヴァルメイロの探索者の書庫亭の方でも俺達の配信が始まっているらしい。
「これはこの街の分だけです。ヴァルメイロでの配信分は後日ご報告します」
係員の男が言ってくれる。
さすがに王都からの分は清算に時間がかかるらしい。とはいうものの、この街の分が即金で清算されるのも尋常じゃない速さなんだがな。
どういう仕組みになっているんだろうか。
「ところで、アストンさん」
ギルドの係員のうち、制服が豪華な役職付きっぽいやつが勿体ぶって声をかけてきた。
「なんでしょうか?」
「皆さんの躍進を称えてギルドから称号を贈りたいと思います」
「称号ってなんだ?」
「真理に迫る松明とか、そういう……なんていうか凄いパーティにギルドが付けてくれる名前ですよ」
オードリーが答えてくれる。
「へえ、そんなのもあるんだな」
言われてみると、上位のアタッカーのパーティには名前が付いているらしい。
勝手に名乗ってるわけじゃないんだな。
「アニキ……分かってないのか?」
あんまり関心がないのが口調に現れていたらしく、アストンがちょっと咎めるような口調で言った。
「なにが?」
「ギルドから称号がもらえるってマジで名誉なんだぜ。アニキ」
「そうですよ。何十戦もした、余程の実力派でない限りあり得ないです」
アストンとオードリーが力強く言う。
ただ。
「そうなのか……中二病っぽくて俺的には微妙だ」
「チュウニビョウってなんだ?」
「まあ気にするな」
アストンが何を言ってるのか分からないって顔をする。
この世界には中二病というワードは無いらしい。
とはいえミッドガルドのRTAのトップ走者であるAROD13の敵を躱す時の独特の緩急をつけた走りは、13・STEPとか言われてたし……そういうあだ名がつくのは名誉かもな。
ちょっとうらやましいなどと思ったことも無くはない。
「有難く頂きます」
アストンが言うとギルドの係員が書類を広げて机の上に置いた。
「ギルドが皆さんに送る称号は‘‘闇を裂く四つ星‘‘です。紋章はこちらです」
書類には四つの意匠化された流れ星が四角いフレームを斜めに横切っている
「今後は配信の最初にこのエンブレムを映しますので」
「はい、ありがとうございます!」
「このエンブレム、服につけてもいいんですよね?」
「ええ、勿論」
「やった、全員でお揃いにしようね、ね、アトリ」
マリーチカが言う
闇を裂く四つ星……個人的にはやはり中二病っぽくて微妙だが。
ただアストンたちは嬉しそうだからまあいいか。
「ところで、ご希望とあらば配信時間についても優遇しますが」
ギルドの係員が言ってくれる。
まあ確かに良い時間を貰えればもっと稼げるかもしれないが……いい時間帯は他のパーティとも重複するから、手放しに喜べるわけでもない。
それに今の所は、週に一度の昼に配信と言うパターンが認知されている
固定客が付いてくれれば、時間帯が厳しくてもさほど問題はない……というか、固定客のスケジュールを乱して客が離れる可能性もあるしな。
「今のところ必要ない気がするけどな」
「俺もそう思う」
「ではこのままで」
「ご希望がありましたらお申し付けください」
そう言って係官たち恭しく頭を下げて歩き去っていった。
ギルドはこっちの配信の稼ぎから手数料を取っているんだから、稼いでくれるパーティの方を優遇するってことなんだろうな。
しかし随分待遇が変わったもんだ。
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