その6 ゲームセンターでアルバイト(3)

 あ、そうそう。バイト店員をしている理由が別にもあって、ゲーム基板等、設置や仕組みを学べるのでは?という目的があった。でもね、「学生バイトは、設置・交換等の担当は任せられない」という会社命令により誰であっても触れせてくれなかった。せいぜい、硬貨投入して認識しない時にcoinボタンではなく、硬貨が通る所にある金属の棒センサー?を触って、硬貨が投入されたと数えさせる。この工程を経てお客さんにゲームを遊べる状態にするのを許可された程度。こういうのも会社方針だね。どのくらい硬貨が入ったかというインカム数というのが、運営上大事なのでcoinボタンでの数より、実際の数が指標となるため。


 バイト以外にも、他地域のゲーセンに対戦格闘ゲームの出稽古には行ってました。バイト仲間に情報共有しつつその頃は「鉄拳2」「デッドオアアライブ」にハマり、他ゲーセンで出稽古。大半の方々は「バーチャファイター2」の対戦で盛り上がり、息抜きで「バーチャロン」をやっておられた。自分は「バーチャファイター2」に出遅れ順番待っても台にすら座れなかったので、別ゲームに進んだのです。

 そういえば、いろいろゲーセン回ってて聞いた話。住んでた地域の某国立大学周辺のゲーセンには、対戦格闘ではなく「ぷよぷよ2」対戦がとても熱く、やはり頭の使い方が違うと噂が飛び交ってた。実際、そのゲーセンに行き、ぷよ2対戦を見た時は、逆転につぐ逆転でお互いの攻撃を相殺しあうハイレベル過ぎて寒気がしました。

見知らぬ観客が「おー!」と声をあげる試合感は、とても良かった。それは、競技。ゲームやらない方々がオタクと片付けてしまうのは、とても悲しいかった。突き詰めると、何でもオタクじゃないのかな。ワタシは、そのレベルまでは達していない。あくまでゲームファンか、マニアな扱い。


 でね、正直、ゲーム筐体を所有しようかバイト中も考えてた。それを踏まえてメンテナンスとか担当してる方に質問してたんだけど、やっぱり筐体の重さ(ブラウン管モニターの重量)やゲーム基板の価格(当時)のことを考えると、家庭用ゲーム機が十分なのではって話になった。それこそ、当時はプレイステーションやセガサターンが発売され、アーケードゲームと呼ばれるゲーセンのゲームが家庭用に移植されるが、遜色ない内容に近づいてて次第にゲーセンに行く理由って何?という声を聞き出したのも実際あった。また、家庭用ゲーム機で練習してからゲーセンで対戦するというパターンもあった。

 やっぱりね、上達するのって対人で、想定外の動きを体験しないと厳しいかなと思った。コンピュータ対戦だと何パターンかの動きが後々分かってくるので、遊ぶことが作業になってくる。それも見つけ出すのは面白いが飽きてきちゃう。刺激が欲しくなる。それには、ゲーセンという環境も相乗効果で対戦発想に閃きが生まれる。

特殊な環境だと思うよ、ゲーセンって。ギャンブルとは違う脳内興奮があったと思うよ。


 この家族経営の会社から、大学3年の終わり頃(当時の就職活動開始時期)に社員登用へのお誘いを受けた。正直迷う所はちょっとだけあった。就職超氷河期と扱われる世代でして、先輩方が非常に就職活動に苦労していた話を聞いていたので、手っ取り早い就職口だし、ゲーム業界の動向に現場で見ることができ、お客さんとそれを共有できることは面白いのではないかと考えたからだ。

 ただし、社員候補として数名いっしょに働いた人たちが、段々元気がなくなる環境って経営陣のせいだよなと理解していたので、丁重にお断りした。結局ね、困る場面が用意されてたんだよ。


 ワタシが大学卒業して、5年も過ぎないうちに駅前商店街が再開発により、バイト先含めたほとんどのゲームセンターは立ち退き対象で、地元のゲーマーたちが楽しむ場所が無くなった。壊滅ですよ。

 もし、社員として働き出していたのなら、このゲーセンの閉店に立ち会って、離れた他店で働くか別事業に移らされていた。また、この家族経営の会社は、先々でゲーセン運営事業も撤退した。時代の流れではあるものの、葛藤しただろうし、やるせない思いを感じたはず。


 今時ってさ、インターネット検索が便利すぎて、現地に行けなくても地図のストリートビューで当時を思い出してみたかったのよ。何年振りか分からないくらいの年数経って、ストリートビューで散策した時の街の変わりように絶句したね。バイト先だったお店の建物自体無いし、競争相手だった他ゲーセンも、もちろん無い。

 それからネット検索で調べて、再開発が行なわれていたことを知り、現地新聞の記事を読んだりして古い街並み、比較的近くの場所で大規模開発が行われていたから、連動した再開発だったのだろうけど、懐古趣味なワタシからすると「もうあの店に二度と行けないんだ」と分かった時の虚しさは計り知れない。

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