第14話 (絵あり)「海王星のダイヤモンド狩り広場」へ、遊びに行こう!

近日ノートに、挿し絵があります。

☆3☆、○8○、☆40☆です。



今日は、勤務3日目。

「オゾンホールが、もう少しで、ふさがりそう」

「本当だね。オゾンの注入は、このままの速度と濃度を維持する方向でよさそうだね」

「うん、いいと思う」

レオとエド、ステファンは、嬉しそうに話を

していた。

今回の勤務の間、3人は、オゾンホールの

写真撮影と観察をしていた。


南極大陸が、すっぽり入るくらいの大きさのオゾンホール ( オゾンの濃度が低い領域 ) があった。

でも、原因を突き止め、それを排除、

改善すること数十年、人類の努力の末、

大きくあいたオゾンホールは、

少し、小さくなった。

このままいけば、

あと数十年でオゾンホールがふさがる、と

期待されていたけど、完全にふさがる前に、

地球上での人類の歴史が一旦、

終わってしまった。


アムズでは、天変地異が落ち着いてきた頃

から、オゾンを発生させられる、ホースが

付いた機器を搭載したAIキュープを南極の

上空に飛ばして、このホースから、直接、

オゾンホールにオゾンを注入して、強制的に

オゾンホールをふさごうとしている。


「今回の調査結果を、ルーカス室長に報告してくるね」

レオが、ネオオを持って、席を立った。

僕とリアムは、地球上に人類が住んでいた

時に、天の川銀河と45億年後に、

衝突する、と言われていた、

アンドロメダ銀河の定期観察をしていた。

「見た目では分からないけど、送られてきた数値を見ると、ほんの少し、近づいているね」

「うん。でも、このペースだと、衝突するのは、当初の予測通り45億年後のままで、いけそうだね」

「衝突したら、どうなるのかな?」

「衝突しても、天体同士の距離が離れているから、大事故! みたいなことは起こらないと、本に書いてあったけど、距離があるとしても、衝突してしまう天体がある気が、僕はする」

「それが、地球ではないといいのだけれど……」

「そうだね、僕もそう思う。地球いた時に読んだ本に書いてあった通りになるか、確かめてみたい」

「うん! でも、45億年は、果てしない歳月だよね……何回も生まれ変わらないと。 忙しくなるぞ!」

リアムが、額の汗を拭うしぐさをした。

「一緒に目撃しようね」

僕は、ニコッとした。

僕達が今いる、月と火星、地球が所属して

いる天の川銀河とアンドロメダ銀河の間に、

どれくらいの距離があるのか、

天の川銀河とアンドロメダ銀河のお互いに

近い側の最果ての位置に、計測機器が

設置してあるので、ここから送られてきた

数値をネオオに入力しながら、

話をしていた。

「どう? 2人は作業、終わりそう? 」

レオが、声をかけてきた。

「そっちは、どう?」

「こっちは今、ルーカス室長に報告して、『うん、いいよ』って言われたところだよ」

レオが、ルーカス室長の声を真似て言った

ので、僕とリアムは、クスクス笑った。

「僕達も入力が終わったら、報告にいくよ」

「2人も『うん、いいよ』って言われたらいいね」

レオがまた、ルーカス室長の声を真似たので

僕とリアムはまた、クスクス笑った。

レオは、エドとステファンの元へ、

戻って行った。

計測機器から送られてきた数値と観察した

見解などの入力を終えた僕とリアムは、

一緒にルーカス室長の元へ、

ネオオを持って向かった。

「確認、お願いします」

ネオオを、ルーカス室長に渡した。

確認を終えたルーカス室長が、

「うん、いいよ」と言ったので、

僕とリアムは、レオにそっくりだ!と思って

顔を見合せた。

そして、

「よし、終わったぁ!」

僕とリアムが、笑いながら言うと、

そんな僕達を見たルーカス室長が、

「そんなに嬉しいか? そうか、残業なしで、3日間で帰れるからか」

と言った。

「はい!」

僕とリアムは、元気よく返事をした。

「終わったの?」

地球環境モニター室のガラスの扉の前にいた

エドが、声をかけてきた。

「うん!」

リアムが答えると、

「一緒に帰ろう」

レオが言った。

今日は僕、リアム、レオ、エド、ステファンの5人全員、3日間勤務で終了した。

みんなで、地球環境モニター室を出て、

エンヴィルの中へ入って、

体が降下している時、

「まだ、眠たくないし、少し広場に寄って行かない?」

レオが言ったので、

「そうしよう!」

リアムが、元気よく答えた。

僕とエド、ステファンは笑顔でうなずいた。


みんなで、広場へ向かった。

広場には、植木の手入れや3か所ある湖に

いる、地球にいたウーパールーパーや

リュウグウノツカイ、メンダコ、

カイロウドウケツなどに似ているけど、

ちょっと違う姿をしたロボットの世話と、

広場に来た人にゴム跳び用の紐や

バドミントンのラケットなどの貸し出しを

してくれている「ぽぽぽ」がいる。


「ぽぽぽ」は、

変形型浮遊AIロボットで、

普段は、長方形に半円をつけたような形を

していて、頭上には、取り外しができる、

部品が2つ、長いしっぽのつけね付近には、

水色と黄色の環がついていて、

変形する形は、複数ある。


「ぽぽぽは、どこかな?」

みんなで広場を見渡すと、

「あそこにいる」

エドが指をさした。

「行ってくるよ!」

リアムは、少し離れたところにいた、

ぽぽぽを目指して、走り出した。

「ぽぽぽ、バドミントンのラケットを5本とシャトルをひとつ貸して」

フワフワ浮きながら、広場の中を移動して

いたぽぽぽに、ついて歩きながら、

リアムが声をかけた。

「分かった」

ぽぽぽは、移動するのをやめて、

リアムと同じ目線になるまで降下した。

ぽぽぽが、長いしっぽの先を、しっぽの

つけね付近にある2つの輪っかの間に入れて

円を作ると、多次元空間が現れた。

その中に、リアムが手を入て、しばらく

その中で、手をゴソゴソと動かしていた。

「あった!」

リアムが、多次元空間から手を出すと、

小さなバドミントンのラケットとシャトルが

にぎられていた。

「ありがとう」

「いいえ」

ぽぽぽは、円にしていたしっぽをほどいて

上昇して、移動していった。


リアムが、僕達のところへ戻って来た。

バドミントンのコートへ移動して、

リアムが小さなラケットを、1本ずつ、

手渡してくれた。

ラケットのはしとはしを持って、

それぞれ、自分の好みの大きさになるまで、

引き伸ばした。

「3対2のチーム戦にする? それとも、個人でトーナメント方式にする?」

エドが言うと、

「チームにしよう」

レオが言った。

「うん、そうしよう」

みんなが賛成した。

広場の地面に、指で、あみだくじを書いて、

チーム分けをすることにした。

最初は、僕とレオ対リアム、エド、

ステファンで、3対2に分かれて、

バドミントンの試合を開始した。

3試合ごとに、あみだくじをして、

チームのメンバーを替えた。


しばらく遊んで、疲れた僕達は、

ひとつのベンチに座った。

楽しく話をしていると、

エドにテレパが入った。

しばらくして、テレパを終えると、

エドは、急に立ち上がって、

「そろそろ……海王星のダイヤモンド狩りの季節ですね」

どこかを見つめながら、鼻をクンクンさせて

匂いを嗅いでいるしぐさした。

「え? 海王星の大根狩り?」

リアムが、何それ? と言った表情をした。

「違うよ、ダ・イ・ヤ・モ・ン・ド」

エドが、ニヤニヤしながら言った。

「ダイヤモンド? それって、地球にあった、キラキラしたあの高級なやつ?」

僕が言うと、

「そう、それそれ」

エドが、うなずいた。

「あのダイヤモンドの季節って、どういうこと?」

「旬があるってことは……それを採掘して、地球へ戻る時までに、大量に集めておけば……」

リアムがニヤリとしながら、レオを見ると、

「それを、地球で、売れば……」

レオがニヤリとした。

そして、リアムとレオは、エドに向かって、

「僕達、大金持ち!? 石油王ならぬ、ダイヤモンド王!?」

瞳をキラキラ輝かせながら、

興奮気味に言った。

エドが、その通り! と言わんばかりの

表情をしたので、

それを見た、ステファンが、

「まさか……本当に、ダイヤモンド王に!?」

唾をごくりと飲み込んだ。

黙ったまま、ニコニコしていたエドは、

僕達の顔を順番に眺めてから、

「ぬか喜びさせて悪いけど……お持ち帰りは、やっていません!」

笑いながら言った。

「なーんだ、期待して損した」

「最初から、言ってよ! 喜んで、損した」

残念そうに、リアムとレオが言った。

「そ、そうだよね」

ステファンは、少しがっかりした様子を

しながらも、納得の表情をした。

「あ! 持ち帰れないということは、もしかして、本物のダイヤモンドではなくて、特殊な映像の技術でできた、偽物とか?」

レオが言うと、

「それは、分からない。エマは、本物とも偽物とも言っていなかったから。でも、ひとつ、確かなことがある」

エドが、ニヤリとした。

「どんなこと?」

リアムとレオが、興味津々な様子で言った。

「お持ち帰りはできないけど、土星のように、海王星にもお土産があって、エマは、ダイヤモンドの下に、海王星があって、その中で、ダイヤモンドの雨が降り注ぐ様子が再現されている、キーホルダーにしたって」

「そうなの!? エマが貰った物は、何カラットかな? お土産は、きっとひとつしか貰えないよね……なら、仕方ない。ひとつしかないのなら、家宝にしよう!」

レオが、力強く宣言した。

「それ、いいアイデア! そんじゃそこらの代物ではない、すごく貴重な、海王星産のダイヤモンドだよ。値段はつけられないよね。家宝かぁ……すごいな」

リアムが、嬉しそうに言うと、

「僕も、そうするよ」

エドが、ニコッとした。

僕とステファンは、顔を見合せて、

「単純で、かわいい人達だね」

2人で、笑った。

「では、明日の朝の9時に、月のファイカプで待ち合わせしようか?」

エドが言うと、

「そうしよ……いや、今から行こう! 偽物か本物か、確かめないと、ぐっすり眠れない」

リアムが、真剣な眼差しをしながら言った。

「うん、その通り!」

レオもうなずいた。

「みんながまだ、眠たくないなら……」

僕が、みんなの顔を見ながら言うと、

リアムとレオが、エドとステファンの顔を

見て、

「どう?」

と言った。

エドとステファンは、しばらく考えて、

「行こう!」

エドが言った。

ステファンは、静かにうなずいた。

僕達は、不眠不休で遊ぶことにした。


月にあるファイカプへ行くと、

スクエアがいたので、

「海王星まで、中型のカプカで」

と頼むと、

「また?」

スクエアがなぜか、不機嫌そうに言った。

「またって? 初めて行くよ」

リアムが首をかしげると、

「もう、ずっと、『スクエア、中型のカプカで海王星まで』という言葉しか、聞いていない。同じで、つまらない、聞き飽きた」

と言った。

「そうなの? みんな、偽物か本物か気になっているのかな」

リアムが小さな声で言うと、

「そうみたい」

レオが言ったあと、

「違うと思うけど」

エドが笑った。

悪態をつきながらも、

「どうぞ」

スクエアが、中型のカプカを出現させて

くれた。

僕達は、カプカの側面にあいた出入り口から

順番に乗り込んで、浮いているクッションに

座った。

「出発します」

スクエアの合図で、カプカが動き出した。


海王星にできた、新しいスポット、

「ダイヤモンド狩り広場」への行き方は、

土星同様、カプカに乗って、ファイカプから

中継浮遊コロニー経由で移動する。


出発してから、

数分で、海王星のそばに設置してあった、

「浮遊コロニーNP30」に到着した。


「海王星」は、

メタンというガスの曇に覆われていて、

大気中のメタンが、赤い色を吸収するので、

青く見える惑星。

太陽系の中で、太陽から一番遠い場所にいる

ので、表面の温度は、マイナス220度の

極寒だけど、中心部の温度は、5000度に

もなり、土星のようにはっきりとは見えない

けれど、環が5本ある。

高い気圧と気温により、

メタンからダイヤモンドが作られている。


カプカを降りて、目の前に広がる景色に、

土星を初めて間近で見た時、同様、

言葉を失うほど、僕達は驚いた。

呆然と海王星を眺めていたら、

「今日が初めてですか?」

と声をかけられた。

「はい!」

僕達は、元気よく返事をした。

「ダイヤモンドが採れるって、聞いたのですが……本物ですか? 偽物ですか?」

リアムとレオが、声をかけてきた海王星の

係をしていた、ヒューマンボウルの人に、

さっそく、気になっていたことを聞くと、

「その質問、多いですね。どう思います?」

ニヤリとしながら言った。

「リアムとレオと同じ考えの人、多いのか。この2人しかいないと思っていたのに。逆に質問されているし」

エドが、小さな声で笑った。

「ど、どうって……本物だと、思いたいです」

レオが言うと、

「そうです、本物ですよ」

係のヒューマンボウルの人が、

ニコッとした。

「やったぁ!」

リアムとレオは、陽気に踊って、

喜びを、体全体で表現していた。

「2人は喜んでいるけど、肝心なことを忘れているね、間違いなく」

エドが笑った。

「何?」

僕が聞くと、

「本物だろうと、偽物だろうと、持ち帰ることができないってことだよ」

エドが言うと、

耳に入ったのか、リアムとレオの動きが、

ピタッと止まった。

そして、

がっかりした空気が、2人の周囲に漂って

きた。

「2人は、『本物』と聞いて、ダイヤモンド王になれるって思って喜んでいたのに、お持ち帰りができないなんて……残念だね」

ステファンが、冷静な口調で、

リアムとレオを見ながら言った。

「2人とも、お土産が本物なら、それでいいのでは?」

エドが言うと、

「そ、そうだね! 大切なのは、お土産だった」

リアムとレオの周囲に漂っていた、

がっかりした空気は、一瞬で、

オレンジ色の明るい空気に変わった。

「お、お土産は、どうですか……本物ですか? 偽物ですか?」

リアムとレオが係の人に聞くと、

「どう思います?」

先ほどと同じように、

また、ニヤリとして言った。

「もちろん、本物だと思います!」

リアムとレオが元気よく言うと、

「そうです、本物ですよ」

ニコッとした。

「やったぁ、本物だ!」

リアムとレオは、その場で跳びはねながら、

大喜びしていた。

「本当に、単純でかわいい人達」

僕とエド、ステファンは、リアムとレオを

見ながら、微笑ましい気持ちになった。


「これを、着てください」

係の人が、1着ずつ、僕達に手渡して

くれた。

「これは、何?」

エドが聞くと、

「海王星は気体の惑星なので、気体を捉えることのできる、この『海王星専用のボディスーツ』を着てもらっています。これを着れば、気体の中を地面の上にいるかのように、自由自在に移動ができるし、海王星の中心へ向かって降り注ぐ、固いダイヤモンドが体にあたっても、ケガをしない、丈夫な構造になっています」

係の人が言った。

いつものように、着ていた服の上から着ると

はじめはブカブカだったけど、徐々に、

ちょうどいいサイズに、変化していった。

着替えをする時はいつも、はじめに着ていた服がスルスルと袖口から出てくるのに、

出てこなかった。

「ダイヤモンドが、僕にあたってくるの?」

リアムが不安そうに係の人に聞くと、

「故意にあたってくるのではなくて、本来、海王星で作られているダイヤモンドは、海王星の中心へ向かっていく、落ちていくのですが、一方向だけの動きでは面白くないので、海王星の中心に集まってくるダイヤモンドを、機器を使って、四方八方、色々な方向に飛ばしています。言い換えると、どこから飛んで来るか分からない、と言うことです。どうですか? スリル満点でしょう」

と言った。

「確かに……スリル満点だけど……あり過ぎでは、ないですか?」

リアムが言うと、

「安心してください。そのために、このボディスーツがあるのです。ダイヤモンドが大量に、高速であたってきても、体には、なんのダメージもありませんよ」

係の人は、リアムの肩を優しくたたいた。

「そうですか?」

半信半疑な雰囲気のリアムを見て、

エドが係の人に、

「質問いいですか?」

と言った。

「なんですか?」

「ボディスーツが、万が一脱げたら、もしくは脱いだら、どうなりますか?」

エドが聞くと、

「それは、絶対にあってはならないことです! 死にますよ」

係の人が、即答した。

「ですよね、分かってはいましたけど、念のための確認です。以前、土星でやらかした人がいて」

エドが、リアムを見ながら言うと、

「あ、あの時は、ほんの出来心で……ダイヤモンドは、固いよ。自ら脱ぐなんて、そんなバカなこと、するわけないよ」

リアムが、あたふたしながら断言した。

「だったら、いいのだけど」

エドが、冷ややかな目をした。


「絶対に、脱がないでくださいね。では、支給する道具の使い方とルールを説明しますね。これを、どうぞ」

係の人が、地球上にあった虫取りあみの持ち

手が短くなったような感じのあみと、

海王星のような色をした、ゆったりサイズの

腕輪を、手渡してくれた。

あみと腕輪には、編な模様があった。

「これは、何ですか?」

僕が聞くと、

「これは、よく聞かれるのですが、ポプ室長がデザインした、海王星のキャラクター的な存在です」

係の人が、ニコッとした。

「キャラクターですか」

「僕も、気になった。キャラクターだったんだね」

ステファンが言った。

「では、この腕輪を、左右どちらでもいいので、手に通してください。そうすれば、自分の手首にあったサイズに、変化してくれます」

言われた通り、片方の手に腕輪を通すと、

徐々に、僕の手首のサイズに変化して

いった。

「これは、残り時間の表示と自分とチーム全体が保有しているダイヤモンドの数、ダイヤモンドがどこで大量発生しているのかを教えてくれる機器です。少量なら、わりとどこにでもダイヤモンドは飛んでいますが、大量にある場所に行くと、効率よく採れるので、参考にしてみてください」

「すごい! お宝レーダーみたい!」

リアムが言うと、

「お宝レーダー、なんて素敵な響き」

レオの瞳が、ダイヤモンドのように

キラキラ輝いていた。

「次に、このあみですが、これで、飛んでいるダイヤモンドを採って、ボディスーツの側面に付いている袋に入れてください。ダイヤモンドは、複数の色に着色してあります。チームで参加する場合は、2人から5人までになります。どうしますか?」

係の人に聞かれた僕達は、話し合って、

5人、ひとチームで参加することにした。

「5人でチームですね。チーム名は、どうしますか?」

「チーム名がいるのか……どうする?」

「あ、こんなのは、どう?」

レオが言った。

「どんな名前?」

僕が聞くと、

「チーム『リサ』なんてどう?」

レオが言ったので、

僕達は、おもわず、笑ってしまった。

「最高! レオ、ナイスネーミング」

「リサにしよう、リサ」

満場一致で、チーム名が即決した。

「『リサ』で、お願いします!」

エドが言うと、

「分かりました、『リサ』ですね。こちらの画面に、自分の名前と顔を登録してください」

僕達は、係の人のそばに浮いていた、

オクヴィディギーロの前にひとりずつ立って

名前を言って、顔を登録した。

「では、あちらのオクヴィディギーロを見てください」

係の人が指をさした方向を見ると、

宙に浮いた、大きなオクヴィディギーロが

あった。

「ここが、オープンしてから今日までの間の、トップテンの成績とチーム名が表示されています。トップテンに入れば、更新賞が貰えて、さらに1位の記録を塗り替えることができた場合は、トロフィーを贈呈します。制限時間は、6時間です。ダイヤモンドひとつにつき1ポイントではなくて、色によって加算されるポイントは違います。1ポイントから100ポイントまであって、その日によって変わる、高得点の色がひとつだけあります。今日は、何色かというと……」

係の人が、僕達の顔を見ながら、

言うのをためらうと、

「何色なの? 早く教えてください」

案の定、リアムとレオが、

急かすように言った。

「それは……秘密です」

僕達は、全員、その場でずっこけた。

「教えてくれる雰囲気だったのに、結局、秘密かぁ……」

僕達は、それぞれゆっくりと立ち上がった。

「だって、分かっていたら、その色ばかり探しますよね?」

係の人が言うと、

「そうですね。まさに、そうするつもりでした」

リアムとレオが笑った。


「6時間後に、高得点は何色か発表しますね。この滑り台で、海王星の中へ入るので、1列に並んでください」

僕達は、言われた通り、並んで座った。

滑り台の先は、海王星の中に突っ込んでいたので、どれくらいの長さなのか、

ここからは見えなかった。

「先の見えない、滑り台だね……」

「ちょっと怖いね」

僕達が不安そうにしていると、

係の人が、

「海王星の中に入ったら、すぐにボディスーツが気体を捉えるので、足元が安定します。先はみえませんが、何の心配もいりませんよ」

と言ったあと、

「では、準備はいいですか? よーい、始め!」

係の人の合図で、静止していた僕達の体に

突然、圧力がかかって、

海王星に引き寄せられた。

数メートルある滑り台を降下して行くと、

ポワンッ、

生クリームとかメレンゲのような、

フワッとした物の中に入る感覚がした瞬間、

周りが、キレイな青色の風景だらけに

なっていた。

僕達の体は、地面に立っているというよりは

フワフワして少し不安定な場所に立っている

そう、まるで、エンヴィルの中にいる時に、

似ていた。

「ダイヤモンドは、どこにあるのかな?」

「四方八方に飛んでいる、と言っていたよね?」

「お宝レーダーを、見てみよう」

僕達は、各自、腕輪で、ダイヤモンドが

大量に発生している場所を確認してみる

ことにした。

「1か所ではなくて、何か所もあるね」

「とりあえず、一番近い場所へ行ってみよう」

僕達は、地図に示されている、

自分の進行方向を表している矢印を見ながら

ダイヤモンドが、大量発生していると表示が

出ている場所を目指した。


「そっち、行ったぞ!」

「分かった、任せて」

ダイヤモンドが大量発生している場所に、

近くなってくると同時に、

人の声が聞こえてきた。

「早く行こうよ、全部、採られちゃうよ」

リアムが、僕の腕を引っ張った。

たくさんの人とたくさんのダイヤモンドが

飛び交っていた。

その時、

レオの背中めがけて、ダイヤモンドの塊が、すさまじい勢いで近づいてくるのが見えた。

「危ない!」

声をかけるよりも早く、ダイヤモンドは、

レオの背中にぶつかった……と思ったら、

ダイヤモンドが跳ね返って、

さらに近くにいたステファンの顔面で、

跳ね返って、どこかへ飛んで行った。

「え?」

僕が、唖然としながら、

レオとステファンを交互に見ていたら、

「どうしたの? スカイ」

リアムが、声をかけてきた。

「えっと、今、レオの背中とステファンの顔にダイヤモンドがあたりそうだったのだけど、跳ね返ったみたい。レオ、ステファン、痛みやケガはない?」

僕が聞くと、

「気がついたら、ダイヤモンドが目の前にあったけど、ぶつからずに、飛んで行ったから、僕は大丈夫」

ステファンは、冷静だったけど、

「え!? ダイヤモンドが! でも、何もぶつかった感覚はなかったよ。背中、見て!

スカイ、お願い、確認して !」

レオは、背中を僕に向けて、ひとりで騒いで

いた。

背中を隅々までさわりながら、

ケガをしていないか確認をしてみたけど、

何もなかった。

「どう? ケガ……している?」

不安そうに、レオが言った。

「大丈夫、何もないよ。ごめん、気のせいだったのかも」

僕が、苦笑いをすると、

「見て、気のせいではないよ。ダイヤモンドが、跳ね返っているよ」

ステファンが言った。

高速で飛び交っている、人間の拳ほどの

大きさのダイヤモンドは、

人にあたるというか、あたるギリギリで

一瞬止まって、跳ね返っていた。

「この海王星専用のボディスーツのおかげだね」

レオが言うと、

「そうだね。係の人が即答で、『脱いだら、死にます』と言っていたね。その通りだ」

エドが言った。

「よし! ダイヤモンドがあたって、ケガをすることはないって分かったし、制限時間は、6時間だよ。僕達もあの人達のように、ダイヤモンドを採りまくろう!」

リアムが言った。

「あんなに高速に動くダイヤモンドを、こんな小さな網で採れるのかな? 破れないかな?」

僕が言うと、

「他の人が採れているから、僕達にだってできるよ」

ステファンが、ニコッとした。

「うん」

僕も笑顔で返した。

僕達は、円陣を組んで、

「1位を目指すぞ! ファイト、チーム『リサ』ファイト!」

と叫んで、気合いを入れた。


僕達は、ダイヤモンドが飛び交っている

場所へ、飛び込んだ。

高速でダイヤモンドが、近づいて来た。

と、採れるかな!?

ダイヤモンドは、体にはあたらないと

分かっていても、あたるのではないか!?

という恐怖が、襲ってきた。

駄目だ!

怖い!

僕は目を閉じながら、

あみを適当に振り回した。

すると、

コツン。

あみの先端に、何かがあたった感覚がした。

そうっと目を開けてみると、

あみのフレームに、ダイヤモンドがあたって


いた。

え?

僕は無意識に、

あみをサッと、引っ込めてしまった。

ハッ! として、

あみをダイヤモンドにかぶせた。

「や、やったぁ! 1個、ゲットしたよ!」

嬉しくて、叫ぶと、

「スカイ、記念すべき1号だね。やったぁ!」

近くにいたリアムが、

嬉しそうに言ってくれた。


ダイヤモンドとあみの距離が、

一定の距離近づくと、ダイヤモンドの速度が

極端に遅くなるので、いとも簡単に、あみに

入れることができた。

ダイヤモンド狩りの要領をつかんだ僕達は、

飛んでくるダイヤモンド、

飛んでいるダイヤモンドを追いかけて、

6時間、採りまくった。


ピー、ピー。

「制限時間が来ました」

各自のブレスレットから、

電子音声が流れた瞬間、

僕達の体は、勝手に動き出した。

「あ、ちょっと、待って! あぁ!」

もう少しで網の中に、水色のダイヤモンドが入りそうだったのに、僕の体は、

ダイヤモンドから遠さがってしまった。

ポワンッ。

僕達の体が、海王星の大気から出て、

浮遊コロニーNP30に、着地した。


「お疲れ様でした。どうでしたか? 楽しくダイヤモンド狩りはできましたか?」

係の人に聞かれた僕達は、

「はい!」

元気よく答えた。

「では、さっそく今日の高得点の色を発表します! 今日は……水色です!」

係の人が言うと、

「やったぁ! 水色のダイヤモンド、たくさん採ったよ」

レオが叫んだ。

「水色かぁ……あれが、採れていたらな……」

「水色が、ひとつもない……他の色ならたくさんあるのに」

僕とリアムは、

がっかりした気持ちで、いっぱいだった。

「集計をしていきますね。採ったダイヤモンドを袋ごと、この穴に入れてください。袋は、引っ張るととれます」

係の人が、地面にあいた6角形の穴を

指さした。

僕達は、袋を取って、穴に入れた。

「では、海王星専用のボディスーツのどこかに、『脱衣』という表示があるので、押してください。自動的に消滅します」

各自、海王星専用のボディスーツの

「脱衣」という表示を探して、押した。

一瞬で、

着ていた海王星専用のボディスーツは、

消えてしまった。

「あちらを見てください」

宙に浮いていたオクヴィディギーロを見ると

僕達が採ったダイヤモンドが、色分けされて

それぞれ、いくつあるのか、

数が表示されていた。

「それぞれの色のポイントを、ダイヤモンドの数でかけ算をすると……」

僕達は、画面にくぎづけになった。

「どれくらいのポイントになるかな?」

僕の心臓が、ドキドキしていた。


うっ……。

胸が苦しくなったけど、

幸いすぐに、苦しさは消えた。


「チーム・リサの合計ポイントは、5931! この記録は、なかなかいいのではないでしょうか!? トップテンを見てみましょう」

僕達のポイントを表示していた

オクヴィディギーロの横に、別の場所で

浮いていた、トップテンを表示していた

オクヴィディギーロが、移動して来た。

「なんと、8位です! おめでとうございます! トップテン入り、していますよ」

係の人が拍手をしながら言うと、

僕達の頭上から、特殊な映像でできた

紙吹雪が落ちてきた。

「1位までは、ほど遠かったね……」

ステファンが、画面を見ながら、静かに

つぶやいた。

「やった!」

「入賞だぁ! 更新賞だ!」

リアムとレオは、飛び跳ねて喜んでいた。

「こちらが、更新賞です。どうぞ」

係の人が、手のひらサイズの、キラキラした

薄い多角形のものをくれた。

「これ、何ですか?」

僕が聞くと、

「これは、ダイヤモンドをアムズの特殊な技術で、薄くのばして作った、コースターです」

係の人が言った。

「コースター!?」

「あの固いダイヤモンドをのばした!?」

「これを、コップの下に敷けと!? まさか、そんなことできないよ」

「遠慮なく、敷いてください。地球では、ダイヤモンドは貴重で高価なものでしたが、実感しましたよね? ここには、腐るほどありますから」

係の人が、笑いながら言った。

「あ、なるほど……確かに、僕達も6000個近く採ったね」

「他の人もたくさん採っていたし、確かに、腐るほどあるね」

「では、心置きなく、コップと言わず、色々なものの下に、ガンガン、敷いちゃおうか」

エドが言うと、

みんなが大きく、うなずいた。

「あ、お土産!」

リアムが叫んだ。

それを聞いた係の人が、

「お土産ですね。ファイカプの近くに浮いている立方体の機器があるので、ここで貰えます。いくつか浮いてますが、内容は同じです」

と言った。


僕達は、係の人に挨拶をして、

ファイカプに向かった。

「ここには、どんなお土産があるのかな?」

ファイカプの近くに行くと、

立方体の機器が、6つ、浮いていた。

一番手前にあった、機器の前に行くと、

「どれにしますか?」

電子音声が流れ、画面には、お土産の写真と

名前が表示されていた。


エマが貰っていた、海王星とダイヤモンドの

キーホルダーと、

海王星とダイヤモンドのピアス、

使い心地に疑問を抱く、

小さなダイヤモンドがたくさん入った、

海王星の形をしたクッション、

海王星の形をした、宙に浮いているフタつきの小物入れ、

お腹と背中に海王星の模様、耳には、

海王星がついたリボンをしている、

海王星仕様のリサのぬいぐるみがあった。


「定番なのかな? おなじみのリサだ、また」

エドが笑うと、

「あぁ……リサがいる、でも、ダイヤモンド……家宝が欲しい」

リアムとレオは、葛藤していた。

「更新賞を、家宝にしたら?」

ステファンが、ボソッと言った。

それを聞いたリアムとレオは、

「ステファン、さすがだね! 賢すぎる」

ステファンに抱きついた。

「分かったから、放して」

ステファンは、冷静に対応していた。

その様子を見ていた僕とエドは、

顔を見合わせて、クスッと笑った。

僕達は、ダイヤモンドはついていなかった

けど、リサのぬいぐるみを貰った。


カプカに乗り込んでいた時、

リアムにテレパが入った。

僕達が、浮いているクッションに座ると、

カプカの出入り口がふさがって、

「出発します」

スクエアが言った。

窓に映しだされている、宇宙空間をのんびりと進んでいる風の景色を見ながら、

「楽しかったね」とか、

「水色をもっと採れば、よかったね」

と話をしていると、リアムの頭上に出現して

いた、テレパのマークが、消えた。

「みんな、お腹は空いている?」

リアムが言った。

「そうだね……少し空いているかな」

「うん、僕も」

「母さんからテレパだったのだけど、何か、試食して欲しいって」

リアムが言った。

「試食? 何の?」

僕が聞くと、

「タコの足が、どうのこうのって言っていたから、タコを使った料理かな?」

リアムが言った。

「タコ!?」

僕達は、驚いて、おもわず叫んでしまった。

なぜなら、今まで、ここ、アムズで手に入る

魚介類に、「タコ」がなかったからだ。

「タコも培養していたの? でも、なぜ今頃になって?」

「あ、タコの培養には、すごく時間がかかるから、やっとできたとか?」

エドと僕が聞くと、

「僕には、分からないよー。あとで、母さんに聞いてみて」

リアムが、ウィンクをした。

「月に到着」

スクエアが言った。

カプカの側面に、出入り口があいたので、

僕達は、順番に降りた。

リアムの家がある、浮遊コロニーM02と、

チューブでつながっている、

三日月ベンチへオーヴウォークで向かった。


リアムの家に着くと、

「お帰り!」

リリアさんが、出迎えてくれた。

「お邪魔します」

「リビングのソファーに座って」

リリアさんが、手招きをした。

リビングのソファーの前にある机の上には、

すでに料理が用意されていて、

「これは、試作品よ。食べて、感想を聞かせて」

リリアさんが、言った。

「あの、質問いいですか?」

僕が言うと、

「何?」

リリアさんが、僕を見た。

「アムズへ来て、1万年はたつけど、どうして今頃、タコなの? 培養に時間がかかったの?」

僕が聞くと、

「えっと、今頃と言うか、火星にある培養施設では、培養できる魚介類の数が決まっていて、1万年は、区切りかな? と思って、培養する魚介類の種類を少し変えてみようってなったの。それで、手始めに、イカの代わりにタコにしてみたのよ」

リリアさんが言った。

「なるほど、そういうことですか。ということは、もうイカは、食べられないの?」

僕が言うと、

「しばらくは、問題なく食べられる。在庫をたくさん確保しているから。それに、タコの培養をしばらくしたら、またイカの培養をして、という感じに、短いサイクルで色々と培養しようかなって思っているの」

リリアさんが言った。

「これからは、色々な魚介類を食べることができそうですね」

「イカもタコも好きだから、両方食べられるのは、嬉しいな」

ステファンが、遠慮がちに言った。

「そうなの? 両方好きなのね、それはよかったわ。おばさん、張り切って培養、頑張っちゃう!」

リリアさんが、腕まくりをした。

試作品のタコの料理は、

タコのカルパッチョと、シンプルにお刺身

だった。

どちらも、とてもおいしかった。

リリアさんは、僕達の感想を聞きながら、

ネオオに入力をしていた。

食べ終わったあと、

リアムの部屋に移動して、

トランプで遊んで、疲れてきた僕達は、

そのままリアムの部屋で、眠ってしまった。


○次回の予告○

第14話

伝言































































































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