『エクセレントは倒れない!』

「無茶だよエクセレント!!」


 金田少年は、超常戦士エクセレントに縋り付いた。

 エクセレントはこれまで確かに沢山の敵を倒して来た。

 ある時は吸血鬼やフランケンシュタインの怪物と戦い、ある時は妖怪変化や元人間の怪人を薙ぎ倒し、またある時は海底や宇宙からの侵略者を追い返したことだってある。

 金田少年も、悪の組織が動物園にばら撒いた凶薬で暴走したマウンテンゴリラからエクセレントに助けてもらった。


 だけど、今回ばかりは相手が悪い。


 街を覆い尽くす程に大きな怪獣ジュラガカン。そんなものを相手には出来ない。エクセレントには、巨大化の手段も、怪獣を相手にする為の変形ロボットだってありゃしない!


「お前さんが全てを背負う必要なんてないんだ、エクセレント」


 花盛警部も、心配するようにエクセレントに声を掛けた。


みなで力を合わせよう。みなであのデカブツを何とかする為に、他の方法がないかを考えたってバチは当たらない!」


「ありがとう、みんな」


 エクセレントは仲間達の心配の声に深く頷いた。だが、すぐに空を見上げ、決意の言葉を口にする。


「だけど、金田少年のお父君が開発し、花盛警部が活路を見出してくれた。あの超音波爆弾をジュラガカンの口元まで運び込み、飲み込ませるなんてことは私にしか出来ない! いや! 私には出来る! そして今私がやらなければ、奴の犠牲は更に増えるのだ!」

「……どうしてもいくんだね、エクセレント」

「ああ」


 金田少年は涙を拭い、エクセレントがそうしたように、決意の目で空を見上げた。


「だったら行ってエクセレント! でも約束して! エクセレントは、絶対に帰ってくるって!」

「ああ! 約束だ!」


 エクセレントは金田少年の目線に合わせてしゃがむと、左手の小指を出す。

 金田少年もその小指を出し、お互いの指を絡ませあった。


「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!」


 約束の契りを交わし、エクセレントは走り出す。


「頑張れ! エクセレント!」

「行ってらっしゃい! エクセレント!」


 金田少年と花盛警部、そしてエクセレントを見送る為に集まった沢山の人々が、エクセレントに向けて声援を送る。


 エクセレントは決して振り向くことなく、片腕を真っ直ぐに空に掲げて、サムズアップした。


「行ってくる──!!」




(超常戦士エクセレントの放映より)

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