インボイス

糖衣錠は甘くない

「分からない人だな、先生は。

　僕は幻聴なんて聞いていないんです」

「もう一度お話ししてもらっても、

　よろしいですか」

「僕はただ、幻聴が聞こえるっていう

　声が聞こえるだけなんです。

　彼は、自分の悪口が聞こえるせいで、

　気が滅入っているそうなんです。

　先生どうにかしてやってくれませんか？」

「お薬を少し増やしてみましょう。

　これは症状が悪化しているとか、

　そういうことではありませんよ。

　それでは、また一週間後に」

　そんな話を聞いた。