第10話

「到着しました。話をつけて来ますのでこちらで少々お待ちください」


そんな先触れ的なものが必要な存在じゃないでしょ俺はと思ったけど。


むしろ逆か。思ってたよりデカイ建物だし、ここを利用するには紹介状的なものが必要なのかも。

更に言えば紹介状を持ってたとしても事前に予約をしないと利用出来ないとか。


もしそうだったらめちゃくちゃ俺非常識なやつじゃない?


「おまたせしました。グロル本人が対応するそうです。こちらにどうぞ」


どうやら何とかなったみたい。

騎士について行って建物の中に入る。


「初めまして。私はこの奴隷商を経営させていただいております。グロルと申します」


「丁寧なご挨拶ありがとうございます。シャンと言います。今日は闘気使いと闇属性に適性を持った奴隷を雇えたらなと思って伺わせて頂きました」


いきなり本題に入るのは失礼かなと思ったけど。長話をするのも面倒だったので、いきなり本題に入る。


「成程。それでしたら丁度良い奴隷がおります。ご案内いたしましょう」


そう言ってグロルが案内を始める。


「なんと言うか、奴隷にかなり気をつかっているんですね」


奴隷達には広いとは言えないけど。1人一室与えられていて身だしなみも整っている。


檻にまとめて入れられているとまではいかなくても、複数人が狭い部屋に押し込められてるのかなと思ってた。


「例えですが。シャン様は腐った野菜が置いてあるお店で野菜を買いますか?」


「いや、別のお店で買いますね」


「そうでしょう?そう言うことです。私共もお客様に見捨てられないように商品の品質管理には一番手を入れていますので」


なるほど。グロルが言っていることも分からなくもない。

グロルからしたら奴隷たちは商品なんだからな。


「こちらで少々お待ちください。直ぐに条件に合う奴隷をお連れしますので」


案内された部屋で待っているとグロルが俺より少し年上ぐらいで隻腕の女性獣人と俺より年下であろう男の子の獣人と一緒に戻ってきた。


「こちらは姉弟なのですが、姉は闘気使い。弟は闇属性に適性を持っていまして、買われる時は2人1緒にと言う条件でしたので、シャン様の条件にピッタリと思い紹介させて頂きました」


確かにピッタリだな。ピッタリすぎて何かあるんじゃって勘ぐっちゃうぐらい。


まぁ、そのぐらいピッタリじゃ無ければわざわざ月の女神がここに行けなんて言わないだろうから、今回は驚かないし警戒もしないけど。

次いでに言えばエリクサーをくれたのも姉の腕を治す為だったんだろう。

隻腕でも戦えないことはないと思うけど、両腕あった方が強いのは当然だろうし。


「確かにピッタリですね。それで、幾らになるんですか?」


「即決ですな。2人合わせて金貨70枚です」


「金貨70枚ね〈影収納〉」


金貨70枚を影収納の中から取り出して机の上に10枚づつ重ねておく。


俺の護衛としてついて来てくれている騎士以外は影収納に驚いている。


因みに金貨1枚で日本円換算すると大体1万円ぐらいだ。


「た、確かに丁度頂きました。それではオーナーとして登録しますので、この紙に血を1滴お願いします」


奴隷のオーナーとして登録する為の紙に血を垂らす。


それにしても2人で金貨1000枚の借金か。

借金奴隷だからこの借金を完済すれば、奴隷から開放される事ができるけど。

大変そうだな。俺的には長期間奴隷として働いてくれる方がお得では有るけど。



それと女性の方が17歳でカレア

男の子の方が8歳でクリスって名前みたい。


名前すら聞かないで話を進めちゃったからな。


まぁ、話を聞くのは馬車に戻ってからいいや。


「はい。これでこの2人のオーナーはシャン様になりました。追加の奴隷がご入用の際は是非」


「そうだね。もしその時はここを利用させて貰うよ」


ここは体調管理に気を使っているし、ここなら奴隷を雇った後、まずは体調を回復させるなんて事になる必要ないし。


「それじゃ行こうか」


奴隷2人を連れて馬車に戻った。


騎士によると2人ぐらいだったら俺が使わせて貰っている従者用の部屋に泊まらせるなら問題ないとの事なので、特に交渉せずともかく2人を王城に連れて行ける事になった。


「よし。それじゃ移動中にお互いに自己紹介をしようか。先ずは俺から、シャン15歳。俺が作った魔法が少し評価されて王城で魔法の開発をしてる。まぁ、そろそろ未開拓領域に出発する事になるんだけど」


魔石生成魔法が完成したからな。

スレイさんは最長で1ヶ月待てるって話だったし。

一番重要な未開拓領域の魔力濃度をどうにか出来る方法が完成すれば、直ぐにとは言わずとも2、3日の間には出発する事になるんじゃないかな。


そう考えると護衛が出来る奴隷を雇えたのはタイミングが良かったな。


あとは何となくのりで弟子要員も雇ったけど。


俺が使っている闇属性魔法とは別に広める用の魔法を作ってそれを教えるか。


俺が使っている魔法は貴族の秘匿魔法と同じ扱いにしよう。

弟子にするつもりのクリスに教えるかについては、クリスの性格とか色々確認してからだな。



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読んでいただきありがとうございます。



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